第一話
俺は、落ちているのか。
この状況――全くの異質である、この空間。
例えようならば、宇宙――つまり、あの一つの世界から全ての光を集約させたような。
文字なんかでは表現しきれないかもしれないが、クリスタルクリアーなんて言葉がそれに近いかもしれない。
全く、この状況を理解するのにどの位の時間がかかるのだろう。
いや、まさか、これを理解できる者なんている筈がない。
これは、夢なのだろうか。
落下してゆく身体は、自身の存在以外、空気さえも知覚できない。
無。
芽生えたある種の恐怖は、自我を持つものならば何者でも抱く感情、「死」に対する恐怖にも似ていた。
まだ薄暗いが、ほのかに明るい。どうやら朝になったようだ。
カーテンの隙間から陽光が差し込んで、寝ている顔に直撃。じわじわと顔が熱くなり脳が急激に活性化しする。次の瞬間には、枕から頭が切り離された。
「ぬぅ……。」
目をこする。痒いな。
結局、かなり速めのストロークで……右目に関してはやりすぎたと思う。
そして、目を開ければ、いつも通りの増えすぎてしまった雑誌の大きな山が見えた。
長期休業を目前にしてこの様。よくもまあここまで溜まったものだ。これは生活を見直す必要がありそうだな。あ、それができないからこうなってしまったのか。
数秒、沈黙しながら辺りを見回す。
すると突然、
「やばい! 今日も学校あるんだった!」
どうやら、今日を土曜日だと思い込んでいたようだ。
学校があるとはいっても、明日からの年度末休業―春休みに際しての諸注意や、今までの経験上、長くなると予想される、「校長先生のお話」を聴いているだけでいい。
時間にゆとりがないのにも関わらず、それを感じさせない丁寧な動きで準備を済ませる。ドアを開けようとしたがノブが見つからない。
「襖か……」
階段を降りる途中、つまづいてしまったが、なかなか順調? に家を出ることができた。
「今日は朝食なしでいいか。あ、いまさら遅いか」
つぶやいていると、そこへ、
「広瀬君おはよう!」
広瀬は俺のことだ。
「ああ、おはよう」
とりあえず、同じ高校一年の、親友である三浦夕太にあいさつを返す。
あまり気はすすまないが学校へは走って向かえば、どうにか遅刻はせずに済みそうだ。
細かい設定は次話で書くと思います。
※08 9/3 若干量加筆、修正しました。