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第3話:終わりを希望する少年

「僕はもう人間じゃない。ただの人形なんだよ。」

タカヒコは藤本に言った。タカヒコがタンポポに来て2ヶ月経った日、タカヒコは手にカッターナイフを握り締め、藤本に言った。藤本はこの奇妙な光景にただ恐怖というものしか想像出来なかった。藤本はゆっくりとタカヒコに伝わりやすく、一回呼吸を整え言った。

「タカヒコ君、なんか怖い夢でも見たん?先生何にも怒ったりなんかせえへんからゆうてみ。どうしたん?」

タカヒコは涎を垂らしながら呟いた。

「世界が…世界が僕の心臓を締めつけるんだ。」

藤本は聞き取れずにもう一度言うようにタカヒコに言った。するとタカヒコは笑いながら言った。

「先生。僕はきっと殺されるんだよ。アイツらに手足バラバラにされて、誰か分からないくらいにグチャグチャにされて殺されるんだ。だから僕はアイツらを殺すんだ。だってそうでしょ?アイツらは僕の父さんも母さんも殺して、僕だけ殺さないのはオカシイよ。いつか僕も殺される。だから…だから…僕がアイツらをブッ殺して、この日本も世界もブッ壊してやるんだ!!」

タカヒコは汗を大量に掻きながら叫んだ。その声で子供達も教員達も目を覚まし、藤本とタカヒコの部屋へ集まってきた。教員達はタカヒコがカッターナイフを持っていると分かると電話に駆け寄り、警察へ通報しようとした。すると藤本は叫んだ。

「やめてください!大丈夫です。私は大丈夫ですから、タカヒコ君と二人だけにしてもらえませんか?」

警察へ通報しようとした教員の武山が藤本に言った。

「藤本先生!タカヒコはナイフを持ってるんですよ?大丈夫って何が大丈夫なんですか!?」

藤本は武山に鋭い目をして言った。

「子供がやってる事にわざわざなんで警察かが必要なんですか?もしタカヒコ君が怪しい行動を見せたら警察にすぐ連絡しますので二人だけにしてもらえませんか?」

武山は一分ほど考え、藤本に言った。

「もし何かあれば藤本先生に全責任があると警察の方に報告しますからね。」

そういうと武山は子供達と一緒に奥の部屋へ入っていた。


藤本はタカヒコに優しく話かけた。

「一体どうしたの?何の為にカッターを持ってんの?タカヒコ君のご両親を殺したい人達をやっつける為かな?」

タカヒコはその場にしゃがみこみ、静かに藤本に話始めた。

「僕の父さんはお薬を売ってる仕事をしてたんだ。色んな薬を売ってたんだよ。死なない薬、空を飛べる薬、ヒーローに変身する薬、いっぱい薬を売ってたんだ。でも父さんはその薬を自分で使っちゃいけないんだ。父さんは薬を売ってる人だからその薬を買うことはダメなんだ。でも父さんは使ってた。母さんも一緒にね。それである時、藤本清太郎っていうお客さんがその事を知っちゃったんだ。藤本って人は父さん、母さんを棒でいっぱい叩いてた。悪い事なのにいっぱい笑いながら叩いてた。それからテレビで見るピストルを使って、父さんと母さんを殺したいんだ。そして、僕に近づいて藤本ってお客さんが殺したいなら殺しに来い、待ってるって言ったんだ。それからすぐに出て行ったんだよ。」

藤本は溢れ出そうな涙を堪えて、タカヒコに震えた声で言った。

「タカヒコ君…辛い思いしてたんだね。でもね、その人を殺しちゃダメよ。絶対にダメ。もし殺したらタカヒコ君もそんな人の仲間になっちゃうんだから。だから、我慢して。先生と一緒に頑張って行こうよ。」

タカヒコは小声で笑った。藤本はタカヒコが気でも狂ったのかと思い、怖くなった。その時、タカヒコは言った。

「僕は殺すんだ。僕は大人にも負けない、アイツにも負けない力をいっぱい持って殺しに行くんだ。殺すんだよ。」

するとタカヒコはその場から立ち、カッターナイフを落として奥の部屋へ戻っていた。

藤本は恐怖で固まった。あの幼い子供の強烈な殺意をハッキリと感じた。藤本はカッターナイフを拾おうと床を見た瞬間、ある紙切れを見つけた。藤本はその紙切れを開けて読んだ。そして、読み終えた藤本は思った。この子の心に住む悪魔と殺意が大きな力になる前になんとかしなくてはと。

「いつか殺す。そして、世界の終わりを目にする。僕が一番望む未来。僕が一番この世界で欲しい物、それは全てが終わったという物。」

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