彼のアルバイト先に行ってみる
「こんにちは、いらっしゃ…」
彼の声が止まったのは、私がコンビニに来たからだった。
「お前、また来てくれたのか?」
「うん。喉が乾いて、お腹も空いたしね」
「そうか。俺のオススメは」
何だろうと期待していると、入口が鳴った。
誰だろうと振り向くと、青いコンテナを押してくる人で、歳は20代だろうか。
怒らせたら怖そうな、そんな感じの人だった。
「お疲れ様です」
何故か彼は嬉しそうで、少し嫉妬する。
私が来た時よりも表情が緩んでいるので、背中を叩いてみるが、逆にここにいろと指示される。
しょうがないので、彼の指示通りにすると、彼はコンテナの中を確認する。
パンやスイーツが入っており、お昼に向けて売り出すつもりなのだろうと推測する。
「おう。相変わらずだな」
彼は男性に小突かれ、嬉しそうにする。
例えるなら兄に甘える弟みたいな感じといえばいいか。
男性は昭和の香りがするような、真っ直ぐな性格らしく、彼が気に入りそうなタイプだった。
「この間、身長を計ったら、また伸びていました」
「そうか。若いうちはいっぱい食べて、いっぱい動け。いいな?」
「分かりました」
彼が答えた後、急に男性が私を見てくる。
その視線は鋭く、心の中を見透かされるようだった。
「お前の彼女か?」
「そうです」
軽く三つ編みして、ふわりとしたワンピース姿。
私はどう見られているんだろうと、興味がわくが、彼に身体でガードされ、驚く。
男性に対しての行動に、男性は苦笑し、言ってくる。
「取らないよ。俺、奥さんと子どもいるし」
「そうですか」
「お前、まだ若いな。彼女を助けようとするのはいいけど、ほどほどにな」
そう言うと、男性は彼を小突き、外を指さす。
「まだあるんだ。よろしく頼む」
「はい!!」
兄貴分に尊敬する仲間のように、彼は私を置いて出て行ってしまう。
忙しいのかと残念がるが、男性が羨ましかった。
いいな、嬉しそうな後ろ姿。
私といても楽しそうなのだが、男性同士だと、更に違うらしい。
私は待ってもしょうがないので、カゴを持ち、店内を巡る。
まずはジュース売り場に行き、サイダーのしゅわっとしたものを選ぶ。
コンビニの中は涼しいが、外に出た途端、暑くなるから、サイダーの弾けた感じが欲しかった。
あとは人気のミルクティーをカゴに入れ、食べ物をどうしようか悩む。
夏なので、太らないものがいいなと、サラダスパゲッティを手に取り、最後はスイーツに行く。
私はチーズ系が好きなので、チーズケーキを選ぶと、彼が店内に入って来た。
「何、買うんだ?」
「あのね、サラダスパゲッティと、サイダーとミルクティーと、ベイクドチーズケーキかな」
「そうか。もう会計は済ませたのか?」
「まだあなたにやってもらうと思って」
私は照れたように笑うと、男性が言ってくる。
「若いな。俺もそんな時期があったっけ」
「何を言っているんですか。まだ若いじゃないですか」
「それはそうだ。負ける気はしないな」
ははと上機嫌に笑うと、私と彼を見て1000円、渡してくる。
「それで何か買え。成長期なんだから、遠慮するな」
「でも…」
「いいから。…あ、新しくお客さんが来たぞ。早く商品を並べろ」
そう言うと、振り返り、行こうとする。
「もう行くんですか?」
「ああ、トラック運転手は時間厳守だからな」
「厳しいんですね」
「まあな。俺はいいから、彼女と一緒に何か買え」
そう言うと、男性は手を上げ、行ってしまう。
その姿は男らしく、彼が憧れるのがよく分かる。
「目つきの鋭い人だったね。うちのライオンさんに負けていないや」
「そうか? それなら嬉しい。俺の憧れの人だから」
彼が駐車場を見たので、私も同じ方向を見ると、トラックがバックして出るところだった。
彼が軽く手を振ると、私に1000円札を見せてくる。
「どうする? 何か買う?」
「うーん、どうしよう」
「アイスでも買おうか」
「おう」
そう言うと、彼は私にアイスを選ばせる。
「俺、仕事するからゆっくり選べ」
彼は仕事に戻り、忙しそうに動き回る。
私はどれにしようか迷った挙句、一口大のアイスを選ぶ。
「お会計、お願いします」
店内にすっと響くような、私の声。、すぐさま彼が来てくれ、商品のバーコードをスキャンしていく。
私はICカードで支払うと、
「ありがとうございました」
と彼が丁寧に頭を下げた。それから私に聞いてくる。
「トラック運転手、かっこよかっただろう?」
「うん。何でもこなしそうな、賢そうな人だったね」
2人でふふと笑うと、彼は私に言う。
「気をつけて帰れよ。分かったか?」
「うん、ありがとうね」
バイバイと手を振ると、彼が心配そうな表情をしたが、大丈夫と胸を叩くと、店を後にしたのだった。




