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消えたプリン事件

作者: ニィギンヤ
掲載日:2026/04/08

「……ない」


 冷蔵庫を開けたまま、俺は固まった。


「どうしたの?」


 後ろから妹が顔を出す。


「プリンがない」


「は?」


 今朝、確かにあった。

楽しみにしていたやつだ。


 ちゃんと覚えてる。

名前も書いた。


「『たべるな』って」


「それフラグじゃん」


「違う」


 違わない気もするけど、とにかく違う。


⸻


「犯人はこの家にいる」


 俺は腕を組んだ。


「いや当たり前でしょ」

「外部犯の可能性もある」

「ない」


 妹が即否定する。


⸻


「まず状況整理だ」


 指を一本立てる。


「今朝、プリンは存在した」


「うん」


「昼、俺は外出」


「うん」


「その間に消えた」


「うん」


「つまり犯人は——」


「私か母かあんた」


「そうなるな」


「いや最初からそう言ってる」


⸻


「母さんは?」

「買い物行ってる」


「アリバイは?」

「知らない」


「怪しいな……」


「いや一番怪しいのお前だから」


⸻


「俺は食べてない」

「証拠は?」


「食べた記憶がない」


「弱い」


⸻


 妹が冷蔵庫を覗く。


「そもそもさ」

「なんだ」


「本当にあった?」


「あるわ」


「昨日の夢とかじゃなくて?」


「現実だ」


⸻


「じゃあ容器は?」

「……え?」


「プリンの容器」


「……」


 言われて、固まる。


⸻


「ゴミ箱見た?」


 妹が指さす。


⸻


 嫌な予感がする。


⸻


 ゆっくり、ゴミ箱を覗く。


⸻


 あった。


⸻


 見覚えのある容器。


⸻


 スプーンも入ってる。


⸻


「……」


「……」


⸻


「……俺だな」


⸻


「完全にね」


⸻


 妹がため息をつく。


⸻


「名前まで書いてたのに」


「食べた本人が忘れてるとかある?」


「あるんだなこれが」


⸻


 冷蔵庫を閉める。


⸻


「で、もう一個あるよ」


「え?」


⸻


 妹が奥からプリンを取り出す。


⸻


「なんで」

「私の」


⸻


「……」


⸻


「食べるなって書く?」


⸻


「やめとく」


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