消えたプリン事件
「……ない」
冷蔵庫を開けたまま、俺は固まった。
「どうしたの?」
後ろから妹が顔を出す。
「プリンがない」
「は?」
今朝、確かにあった。
楽しみにしていたやつだ。
ちゃんと覚えてる。
名前も書いた。
「『たべるな』って」
「それフラグじゃん」
「違う」
違わない気もするけど、とにかく違う。
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「犯人はこの家にいる」
俺は腕を組んだ。
「いや当たり前でしょ」
「外部犯の可能性もある」
「ない」
妹が即否定する。
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「まず状況整理だ」
指を一本立てる。
「今朝、プリンは存在した」
「うん」
「昼、俺は外出」
「うん」
「その間に消えた」
「うん」
「つまり犯人は——」
「私か母かあんた」
「そうなるな」
「いや最初からそう言ってる」
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「母さんは?」
「買い物行ってる」
「アリバイは?」
「知らない」
「怪しいな……」
「いや一番怪しいのお前だから」
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「俺は食べてない」
「証拠は?」
「食べた記憶がない」
「弱い」
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妹が冷蔵庫を覗く。
「そもそもさ」
「なんだ」
「本当にあった?」
「あるわ」
「昨日の夢とかじゃなくて?」
「現実だ」
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「じゃあ容器は?」
「……え?」
「プリンの容器」
「……」
言われて、固まる。
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「ゴミ箱見た?」
妹が指さす。
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嫌な予感がする。
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ゆっくり、ゴミ箱を覗く。
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あった。
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見覚えのある容器。
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スプーンも入ってる。
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「……」
「……」
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「……俺だな」
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「完全にね」
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妹がため息をつく。
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「名前まで書いてたのに」
「食べた本人が忘れてるとかある?」
「あるんだなこれが」
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冷蔵庫を閉める。
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「で、もう一個あるよ」
「え?」
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妹が奥からプリンを取り出す。
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「なんで」
「私の」
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「……」
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「食べるなって書く?」
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「やめとく」




