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第三十一話 再会の熱

セレスティアラを見つけ出し、王宮へと連れ帰ったオーシャノスは、彼女をそっと自身の寝室にある真珠のベッドへと寝かせた。彼女の唇から漏れる微かな吐息だけが、崩れかけていたオーシャノスの心を繋ぎ止めていた。

オーシャノスの背中からは、無理をして泳いだせいで再び血が滲み、包帯を赤く染めている。しかし、彼は自分の痛みなど微塵も気にする様子はなく、ただひたすらにセレスティアラの冷えた手を握り続けていた。

「殿下、セレスティアラ様は私たちが責任を持って看病いたします。ですから、どうか殿下もお休みになられてください!」

カスピアンの悲痛な訴えも、今の彼には届かない。オーシャノスは、ひとときも彼女と離れたくないのだ。結局、彼は引き剥がそうとする侍従たちを黙らせ、抱きしめるようにしてセレスティアラの隣に横たわった。

翌日になっても、セレスティアラはなかなか目を覚まさなかった。焦燥に駆られたオーシャノスは、傷ついた体で無理をして彼女に水を飲ませようとしたり、体を拭こうとしたりして、ついにカスピアンの雷を落とされることになった。

「殿下! 流石にお休みくださいませ!! 今日は全力で殿下を止めさせていただきますぞ!」

だが、セレスティアラが心配すぎて、オーシャノスはまぶたを閉じることさえできない。見かねたカスピアンは、大きなため息をつくと、セレスティアラをオーシャノスの広い寝台へと移した。

「……これなら、殿下も安心でしょう。無理ばかりして倒れでもしたら、セレスティアラ様が目を覚ました時に、殿下がこっぴどく怒られますよ?」

「……そうだな。君の体温を感じていられるなら、僕はどこでも寝られる」

ようやくオーシャノスは、彼女の手を握り、愛おしそうにその体を抱き寄せた。彼女の匂いと心音に包まれ、王太子は数日ぶりに深い眠りへと落ちていった。

***

セレスティアラが意識を取り戻したのは、それから数時間後のことだった。

重い目を開けると、視界いっぱいに広がるのは、見慣れない天井と――目の前の、逞しく鍛え上げられた胸筋だった。

(……これ、夢じゃないですわよね……?)

恐る恐る、自分の頬を「むにっ」と摘んでみる。……痛い。夢ではない。

そっと顔を上げると、そこには自分が何よりも会いたくて、恋い焦がれたオーシャノスが、穏やかな寝息を立てて眠っていた。

彼女は震える手で、彼の胸に耳を当てた。トクン、トクンと刻まれる力強い鼓動。

「良かった……。本当に……ご無事で……っ」

セレスティアラのアメジストの瞳から、大粒の涙が溢れ出した。ポロポロと枕を濡らすその涙を、不意に温かい指先がそっと拭った。

「……泣かないで、ティア」

オーシャノスの琥珀色の瞳が、ゆっくりと開く。二人は、離れていた絶望の日々を埋め合わせるように、どちらからともなく強く抱きしめ合った。

「シャノ様……会いたかった……! あの時、もう二度と貴方に会えないかもしれないと、本当に、絶望したのですわ……」

「僕は、君が戻ってこないことに狂いそうになったよ。僕だけを逃がして囮になるなんて、無謀にも程がある。……本気で怒っているんだよ?」

少しだけ声を低くして言うオーシャノスに、セレスティアラは彼の胸に顔を埋めて謝った。

「ごめんなさい……。でも、あの時はシャノ様を助けることしか頭になくて……」

「……自分を大切にしない悪い婚約者には、お仕置きをしないとだね?」

「お仕置き……ですか?」

セレスティアラが不安げに彼を見つめると、オーシャノスは「うん」と頷き、逃がさないように彼女の腰を引き寄せた。

降ってきたのは、お仕置きというにはあまりにも甘く、深い、独占欲に満ちた口づけだった。

「……これが僕のお仕置きだ。君の体中に、僕の印を刻みつけて、二度と無茶ができないようにしてあげる」

熱っぽい眼差しで見つめ合い、二人は再び寄り添うように抱き合う。

扉の外で、心配して様子を見にきたカスピアンが、仲睦まじい二人の様子を見て「やれやれ」と微笑みながら立ち去ったのは、言うまでもなかった。

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