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第二十話 海国の休日。甘すぎる恋人と、真珠の婚約指輪

波乱を乗り越えた二人は、今日も「安定」のバスタブの中にいた。

「……この格好は、流石に恥ずかしいですわ」

オーシャノスの特注だという「海水着(セパレートタイプの水着)」を身に纏ったセレスティアラは、顔を真っ赤にして身を縮めた。彼の好みが凝縮されたその水着は、とにかく露出が多く、セレスティアラに言わせれば「ネグリジェの方がまだ面積がありますわ!」という代物だった。

そんな彼女を、オーシャノスはとろけるような笑顔で見つめている。

「どうして? こんなに可愛いのに。……はぁ、ダメだ、可愛すぎて一生離したくない」

ぎゅっと抱きしめられ、逃げ場を失ったセレスティアラは、仕方なく彼の頭を「よしよし」と撫でる。バスタブの中で王太子に抱かれながら頭を撫でるという謎の構図も、今や二人の日常となっていた。

「もっと、もっと撫でて。……それから、君からキスもしてほしいな」

うるうるとした瞳で見つめられ、セレスティアラは(この方は甘え方が上手すぎますわ……!)と心の中で叫びながら、チュッと短い唇を寄せた。

すぐに離れようとしたが、オーシャノスの腕がそれを許さない。

「……足りないよ、ティア。もっと……」

深い、深い、溶けるような熱を注ぎ込まれる。セレスティアラは彼の胸をポカポカと叩き、ようやく制止した。

「今日は……街に出るのではなかったのですか?」

「夕方にならないと、マリナマスの街は開かないんだ。日中は日差しが強すぎるからね。……だからそれまでは、君とこうして触れ合っていたい」

止まらない愛の囁き。思いが通じ合ってからというもの、オーシャノスの愛は留まることを知らず加速し続けていた。

***

夕暮れ時。

海をイメージした海色のワンピースに、貝殻の髪飾りで群青の髪をまとめたセレスティアラ。その隣には、シンプルな白いシャツを着こなした「人間姿」のオーシャノス。

「今日の君は可愛すぎるから、変な虫が寄りつかないようにしないとね。……まずは、手を繋ごう」

差し出された手に触れると、いつの間にか指が絡まり、恋人繋ぎになる。

二人は夕日に照らされた街「マリチュア」を歩き始めた。

マリチュアは、海でも陸でも生きられる半魚人たちの活気溢れる街だ。

「わぁ! シャノ様、この二枚貝、大きいですわ! すごい! あ、あの珊瑚のアクセサリーも素敵!」

爛々と瞳を輝かせるセレスティアラを、オーシャノスは愛おしげに見守っていた。

ふと、彼が一軒の雑貨屋へ入る。そこは、宝石細工の名店だった。

「約束のものは、あるかな?」

店主が差し出したのは、二つの指輪。

そこには、珍しい「紫色」と「黄色」の真珠が、寄り添うように並んでいた。

「シャノ殿下から直々に注文が来るとは驚いたよ。……お熱いねぇ、お嬢さん、幸せにおなりよ!」

「ありがとうございます……っ」

店を出た二人は、海が一望できる白い塔の頂上へ登った。

黄金色に煌めく海を見渡し、セレスティアラが歓声を上げる。その背後で、オーシャノスが静かに膝をついた。

「シャノ様……?」

「ティア。僕と婚約してほしい。君をどうしようもなく愛しているんだ。君だけは、誰にも渡したくない。僕だけのものにしたいんだ」

セレスティアラの瞳から、ボロボロと涙が溢れ出した。けれどその表情は、今世で一番の満開の笑顔だった。

「はい! 喜んで……!」

潮風の中で交わされる、誓いの口づけ。

唇が離れた後、オーシャノスがふと悪戯っぽく微笑んだ。

「君と僕の本当の出会い、どこか覚えてる?」

「えっと、フロレスタの王城……ですよね?」

「違うよ。あの日、海岸で僕を助けてくれただろう?」

(海岸、助けた……。……!!)

セレスティアラの脳裏に、あの日打ち上げられていた「美しすぎる干物」の記憶が蘇る。

「すみません、あの時はシャノ様だと気づかず……人工呼吸のつもりで、キスしてしまいましたわ……!」

「ううん、あのキスで確信したんだ。君こそが運命の人だって。僕のファーストキスを、運命の人に捧げられて良かったよ」

「……実は、私も。あの時が、ファーストキスでしたの」

「本当? じゃあ、僕たちお揃いだね。君の初めてが僕で良かった。他の男だったら、僕は全力で嫉妬して、その男を海の底へ沈めていたところだよ」

笑いながらも、その瞳の奥には本気を感じさせる独占欲。

二人は誓いの真珠を指に輝かせ、いつまでも重なる影を見つめていた。

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