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第九話 貢ぎ物は深海の財宝? 部屋が宝物庫(物理)になりました!

セレスティアラが、マリナマス王国のゲストルームという名の「豪華な水陸両用ロイヤルスイート」に案内されてから数日が経った。

朝、目が覚めると同時に聞こえてくるのは、心地よい「ピチャピチャ」という軽快な水音だ。

「……また、何か持ってきましたわね……」

カーテンを開けると、そこには案の定、人魚姿のオーシャノスがいた。

彼の尾鰭は今、見たこともないようなプラチナムな輝きを放ち、大型犬の尻尾のようにリズミカルに水面を叩いている。

「おはよう、セレスティアラ! 君が起きてくれるのを待っていたんだ。見て、今日の収穫だよ!」

プールのような巨大バスタブの縁には、陸なら一国が買えるレベルの「伝説の巨鳥の卵ほどある真珠」や、「沈没船から引き揚げた彫刻入りの王冠」、さらには「魔法で七色に輝く極彩色のサンゴ」が山積みにされていた。

「これ、全部君にあげる。君の瞳に似た最高級のアメジストも、深い海の底で見つけてきたんだ」

昨晩の記憶が蘇る。

「君に喜んでほしくて」と大量の金銀財宝を運び込んできた彼を、私は少しだけ叱ってしまったのだ。

『いいですか、オーシャノス殿下! サンゴも真珠も、自然が育んだ宝です。これらは国民全員で分かち合うべき富。気持ちは嬉しいですが、貢ぎ物も加減を考えてくださいまし!』

あの時、「……君は、僕を嫌いになった……?」としゅんとしていた時は、あんなにカサカサで色褪せていた尾鰭が、今はテッカテカのツヤッツヤなのだ。

(何この分かりやすすぎる生き物……! 嬉しいとあんなに艶が出るものですの!? 脂の乗り切った最高級の魚以上の輝きですわ!)

「殿下、そんなにたくさん頂いても使い道がありませんわ。それより、そんなに激しく尾鰭を跳ねさせたら、お顔に水がかかりますわよ?」

苦笑したセレスティアラが、水に濡れた彼の前髪をそっとかき上げると――。

バッシャーーーーン!!

「ひゃっ!?」

「あ、ごめん……! 君に触れられて、あまりに嬉しくて……制御が……っ!」

オーシャノスの尾鰭が、喜びのあまり狂喜乱舞した。

おかげでセレスティアラは朝から頭から水をかぶる羽目になったが、当のオーシャノスは顔を真っ赤にして、尾鰭をさらに発光(※魔力MAXの状態)させている。

「……ふふっ、水を被ってしまいましたわね。ですが殿下、尾鰭が眩しすぎて目が開けられませんわ……!」

そう言って笑うセレスティアラがあまりに可愛すぎて、オーシャノスの尾鰭の乱舞はさらに加速する。もはや部屋中が水浸しだが、本人たちはそれどころではない。

そこへ、背後から「やれやれ」という顔のカスピアンが登場した。

「おやおや、殿下。今日も鱗が月光のように美しく照り輝いておりますよ。セレスティアラ様への愛が、もはや視覚的な暴力となって溢れておりますな♪」

「ねぇカスピアン、セレスティアラが可愛すぎて食べちゃいたいんだ。どうしたらいいかな?」

「まあ、海では『捕食』も愛情表現の一つと言えなくもないですからねぇ」

カスピアンがメガネをクイッと押し上げながら、とんでもないことを吹き込む。

「オーシャノス殿下、流石に私を食べないでくださいまし! 美味しくありませんわよ!」

セレスティアラの絶叫が響く中、オーシャノスは幸せそうに、しなやかな尾鰭をセレスティアラの足首に「ピタッ」と絡めてきた。

(……あああ、もう! だけど、これが殿下なりの不器用な愛情表現なんですのね。……そう考えると、なんだか愛らしいですわ)

無意識に、またオーシャノスの頭を「よしよし」と撫でてしまうセレスティアラ。

最初は「悲しい最期を阻止するための恩返し」だと思っていたはずだった。

けれど、キラキラと輝く尾鰭と、自分だけを真っ直ぐに見つめる琥珀色の瞳。

その熱い視線に射抜かれるたび、セレスティアラの心は、一歩ずつ、確実に深海へと引きずり込まれていくのであった。

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