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ひと月後――。
暗い路地の真ん中で、三人の男達が背を預け合って狼狽えている。日焼けして浅黒い肌にドレッドヘアの男達。彼らはハイチ系マフィアの流れを組む麻薬の密売人だ。その中でも、金持ちやギャングのみならず、一般人や何も知らない子供達にまで流通させる事で儲けを得ている、言わば最低の悪人どもだ。数時間前までは稼いだ金で娼婦を買いに繰り出そうと談笑していた。だが、その悪行を許さない者がいたのだろう。始末屋『達』が、彼らのアジトである雑居ビルの一室を強襲した。
十人以上も居た仲間達が、今やたったのこれだけだ。これ以上殺られれば、次は自分の番になるのは間違いない。彼らは妙な団結心で辺りを警戒した。
彼らの遥かな頭上、ビルの谷間を、黒い影が二つ飛び越えた。風にはためく音で、彼らはその存在に気が付いた。振り仰いで見やる。長身痩躯の男の影と、小柄で華奢な少女の影が、まるで地獄の底を見下ろすかのように立っている。彼らはすぐに理解した。始末屋達が追って来たのだ。
スモークグレネードが投げ込まれ、辺りが濃い煙に包まれた。パニックになり、男達は狙いも定めず拳銃を頭上にもたげて発砲する。だが壁を削る音はすれど、人に当たったような気配は無い。やがて抑えられた銃声がして、男達は手足や胴を撃ち抜かれて、痛みに呻きながら地に転がった。
煙の帳の向こうに、二人分の人影が並んで降り立つ。男達はその影を睨むように見た。人影は煙の中から悠然と歩み出て、その姿を晒す。
「死神……ペイルライダー……!」男達の内の誰かが言った。その通りに、片方は髑髏の覆面をした始末屋だった。
「あぁいや、俺だけじゃあないぞ? 実はサイドキックも居るんだよ。まぁ、相棒って言うより弟子だけど……」ペイルライダーは皮肉げに笑って、左手で傍らを示した。彼の少し後ろに、寄り添うように立つ少女の姿があった。一つに結んだ長い髪が、まるで猫の尻尾のように揺れている。「ご紹介しよう、彼女の名は……キティだ」
「どうも、クズども。覚えてからあの世に行きなさい」
二人はそれぞれの銃をもたげると、息の合った射撃で次々トドメを刺していった。




