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なるほど雪中土下座

 新千歳駅も、やはり深い雪の中だった。

 いや、人が少なく日も暮れてきた分、ますます雪は深くなっていた。


 新千歳駅の券売機は少々複雑で、しかも台数が少ないため、長蛇の列ができた。


 娘が切符を買っている間に駅舎の外に出てみると、ふんわりと綺麗に積もった雪に膝をついて土下座写真を撮っている若者たちがいた。

 謝罪のメールにでも添えるのだろうか、なるほど最強の遅延証明。


 この時点では、私はあまり事態を深刻だとは思っていなかった。

 乗ろうとしているのは特急北斗号、乗れば函館まで一直線である。


 様子がおかしいぞ、と思ったのは、千歳空港からの後続列車が続々と到着した時。

 電車からは次々と人が吐き出され、券売機の前の行列はますます長くなる。


 そう、函館空港からの便に振り替えようというのは、誰でもが思いつく手であり、翌日の早い便が取れた人たちがみんな函館に向かおうと、この駅に押しかけてきたのである。


 さらに不幸なことに函館まで向かう特急は私たちが乗ろうとしている一本きり。

 ざっと見ただけで乗車率100%超えの大混雑っぷりだ。


 北斗号は特急に多くあるクロスシート式の電車だが、私たちが買うより先に指定席券は売り切れて、自由席での乗車となった。

 つまり立ち乗りである。


 乗客は「いや、待って、本当にこれ全員乗れるの?」というくらいぎゅうぎゅうに詰め込まれ、通路を通るにも押し合いへし合い、デッキにまで人が詰め込まれている状態である。


 しかも北斗、天候が良い状態でも函館まで3時間以上かかる超長距離特急である。

 さらにこの日は雪で徐行運転しているため4時間近く、鮨詰め状態の電車の中で立ちっぱなしという苦行。


 しかもここで、更なるトラブルがアザトーを襲う!


「えっ、予約取れてませんってメールが来たんだけど!」


 なんと、函館からの便に振り替えた人が多すぎたため、飛行機の予約に失敗してしまったのだ。


「ええ、どうしよう、遅刻するけど昼頃には出社できますって言っちゃったのに」


 責任感の強い娘は半泣きだ。

 慌てて新幹線の予約状況を調べるが、誰も皆思うことは同じ、すでに満席である。


 千歳空港まで戻ってキャンセル待ちに賭ける手もあるけれど、確実じゃない。

 そもそも乗っている北斗は本日の最終便、明日の始発で3時間かけて千歳に向かうのは、それだけでもタイムロス。

 函館から電車で脱出しようにも新幹線が埋まっていてはお手上げ状態。


 我々は津軽海峡越しに青森が見えるところまで来て、ここで完全に手詰まりに陥ってしまったのである。


 さあ、どうする?


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