雪がやまない……だと?
二日目、目覚めるとまだ雪が降り続いていた。
ただしこの雪、予報では昼頃に止むはずであった。
楽天的な俺と娘は吹雪に吹かれながら街中を歩き回り、地元のスーパーをのぞいたりと、雪国の生活を散々に満喫した。
さて昼頃になって、なかなか勢いの衰えない雪に、さすがの私たちも不安になった。
「もうそろそろやむはずなんだけど」
いっとき太陽がさしたものの、分厚い雲にすぐ飲み込まれてしまう。
娘は翌日仕事であり、何としても今日の便で帰りたい。
そこで私たちは状況を確かめるべく、とりあえず空港に行ってみることにした。
ここで新千歳空港について少し解説を。
新千歳空港は少しアクセスが悪く、雪で電車が止まると簡単に陸の孤島化することで有名だ。
雪が多く遅延も多いためだろうか、空港内の設備は充実しており、映画館やかなり大きな温浴施設まである。
つまり空港まで行って飛行機が飛ばないなら今のうちに他の手を考える、飛行機が飛ぶなら風呂で暖まりながら待てばいいんじゃないかと、そう考えたのだ。
空港に着くと、すでに欠航便が多く出ていた。
各航空会社の窓口には払い戻しを求める人で長蛇の列ができていた。
ただ、その多くは機体の準備ができない――飛行機が飛んで来ないから戻る機体がないという理由であったようだ。
結構は多いが空港自体が完全に止まっているわけではない。
現に朝の便は無事出発したし、予想ではここから晴れるのだし。
私たちが乗るつもりの便はこの時点では“定刻通り”の表示が出ていた。
フライトは19時10分予定、空港入りしたのは15時ごろだから、まだ早すぎる。
そこで私たちは“空の湯”を楽しむことにした。
なにしろ前日の宿にシャワーしかついてなかった上に、氷点下の街を散々歩き回ったのだから、風呂に飢えていたのである。
風呂は普通のスーパー銭湯と遜色ない規模で、サウナも熱め、おまけに外湯に入れば雪見ぶろが楽しめるという贅沢なものだった。
だが露天の隅に積もった雪の上にさらに降り積もる雪の勢いが衰えないことだけが気がかりであった。
風呂を上がると、スマホを見た娘が叫んだ。
「えっ、私たちが乗る便、欠航に変わってる!」
それは突然の出来事だった。
「ちょ、ちょっと、とりあえずカウンターに行ってみよう!」
私たちは慌てて風呂を飛び出し、某LCCの窓口へと向かった。




