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プロローグ
「海歌ちゃんって、自分が皆を怖がらせてるの、わかんないの?」
遠い遠い記憶。耳の奥にこびりついた声。それはいつまで経っても私の中からいなくなることはなかった。
「は? そっちが真面目にやらないのが悪いんでしょ」
「だから、そういうとこなんだって」
「私はただ、いい演奏がしたいだけ」
声の主は深々とため息を吐く。その後ろでは誰かが泣いていて、誰かがその肩を抱いていた。
「天才ピアニスト様は偉そうで嫌になっちゃう」
「……何、その言い方。馬鹿にしてるの?」
「別に? ……天才ピアニスト様は私たちみたいな凡人とはやっていけないでしょ。ごめんなさい~」
「……そうね。あんたたちみたいな半端な気持ちでやってる人とは、やっていけない」
その日以降、私は彼女たちと過ごすことはなかった。
そして私は、誰とも音楽をすることはなかった。




