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EGOシリーズ

EGO国物語~約束と今~

作者: ハテナ・ディン

役目。それはこの世に存在する誰しもが持っている目に見えないもの。そしてその役目は時代が変わる事に他に受け継がれ、そして受け継いだ者はまた時代が変わると他の者に受け継がせ、消える。それは自然の…時の摂理。ここ、EGO国にもそれを感じる男女がいた。


「今日は良い天気だな。」


温かい日差しが照る中、EGOの隊長、ハテナ・ディンはそう口から零した。それを聞いて近くにいたディンの妻、チェリー・レディスが苦笑する。


「もう、旦那様ったらそんな年寄りくさい事を…」

「オレも結構な年だぞ。さて…ちょっと散歩にでも行ってくるかな。」

「夕飯には戻ってきてくださいね?もしまた消えたりしたら…今度はお仕置き所じゃあすみませんから。」

「き、肝に命じておきます・・・」


ディンは背中から大量の汗を流しながら外へと出ていく。チェリーはある戦争を境に自分に対する扱いが厳しくなったのだ。特に一人で外に出ていく時には・・・


[まぁオレが悪いといったら悪いんだがなぁ・・・]


ため息を吐きながら市場へと繰り出すディン。そこで何やら忙しそうに走り回る忍び服の男の姿があった。


「よぉペケサ、久しぶりだな。」

「ディンさん、お久しぶりです。」


ペケサと呼ばれた男は大量の書類を持ちながらディンの方へと歩いてきた。その歩き方はピッシリとしていて国にふさわしい隊長になっていた。


「入国書類か?お前も入国審査官に就任してから大変だな。」

「自分で志願した事ですから…これくらい屁でもありませんよ。」

「頭、それにペケサさんも…お久しぶりです。」


ディンとペケサが話していると後ろから鎧姿の美青年が現れた。


「セシルか。久しぶりだな。」

「セッシーも久しぶり!!」


セシル・キャンベル。世界に名高いセシル傭兵団の団長であり、今はEGO国の傘下で雇われている実力者だ。戦いの時には鷹の如く一撃で獲物を狩る事と防衛戦に定評がある事からホーク・守護者ガードナーという異名も持っている。


「頭は何してるんですか?」

「何、ちょっと散歩をな。お前らは?」

「オレは次に入ってくる入国者の面接の担当になったんでその下調べです。」

「自分は国境防衛戦に穴があったのでそれを直すよう指示を出しに行く所です。」


ディンはそれを聞いてまた頭の中に思い浮かべる。そしてその言葉を口に出した。


「オレももう用無しかな・・・」

「えっ?何て言ったんですか?」


どうやらセシルとペケサには聞こえてないようだった。それにディンはホッとする。


「いやなんでもない。」

「?」

「でわ私はこれで。」

「じゃあオレも行きます。」

「あぁ、またな。」


そうして二人は歩いていく。残されたディンはまた一人寂しく歩いていくのだった。


-----------------------------------------------------------------------


「私ももう王を引退するべきかなぁ・・・?」

「はっ?」


シルバがボソッと呟いたその一言に隣で一緒に仕事をしていたEGO国の大臣であるジョンが目を丸くさせる。


「こ、国王様!?突然何を言い出すのですか!?」

「いや~国内はもう整ってきたし、防備も完璧だし、もう私のする事は無いかなぁ・・・って。」

「いけません!国王様にはまだするべき事が残っています!!」

「例えば何?」

「それは・・・えっと・・・わ、私とお酒を飲むとか!!」

「ジョンは酒乱だから嫌。」


シルバのその一言でジョンは膝から崩れ落ちるがその言葉を言った当の本人であるシルバは別の事を考えていた。


私はこの国に必要なんだろうか?


今や国はかなり大きくなった。ソウル帝國と真っ正面からぶつかっても負けない軍事力も持っているし国内の経済も潤っている。もう私がしてあげれる事はないのではないだろうか?


「そ、そもそも子供がいない国王が誰に王位継承をするというのですか?」


やっと立ち直ったらしいジョンがそう口にする。そうなのだ。実はシルバには子供がいない。その状態で王位継承をするには誰か王になれる素質を持った幹部を選ぶしかない。その人物は・・・


「・・・レィかミーかなぁ?」


シルバは自分に最も身近で有能な人物の名前を上げる。それを聞いたジョンの顔が真っ青になった。国王は本気だ・・・それから数日後、国王が引退するという噂が国中に広まった。


「どういう事ですか!?説明してください!」


青い髪の女性の格好をした男性、レィがシルバに詰め寄る。それをシルバめんどくさそうな顔をしながらあしらうように言葉を返した。


「どうって…言葉のままよ。」

「いきなりすぎるよぅ。それに国王様は子供いないし誰に王位継承させるつもりだったの?」

「アナタ達二人のどちらかにさせるつもりよ。」


シルバは即座に応える。それが癇に障ったらしくレィはさらに声を張り上げた。部屋には噂の真実を確かめに来たミー将軍もいた。


「あなたは国王なんですよ!?もう少し自覚を持って「私の時代はもう終わったわ。」っ!?」


シルバは諭すような・・・そして少し悲しそうな顔でそう言った。


「今度は若い人達がこの国を引っ張る番よ。。」

「・・・・勝手にして下さい。」


レィは何かを堪えるような口調でそういうと早足に部屋を出て行った。そしてレィが出て行った後にミーも立つ。


「私もレィちゃんと同じ気持ちかな。こんなの国王様らしくないよ…」


そしてミーも静かに部屋を出て行った。シルバは疲れたとばかりにグッタリと椅子に座りこむ。


「らしくない…か。時が経ったら変わるものよ。」

「それが言い訳?」


突然聞こえてきた声に驚いたシルバが後ろを振り向くと、赤いローブを着た女性がいた。シルバその姿を確認すると安堵する。そこにはEGO国衛生部隊将軍、アヤ・ティーチがいた。


「アヤ、気配消して部屋に入らないでよ。」

「それより王を引退するって話、あれマジなの?」

「別に決定してるわけじゃないんだけどね。そろそろ私も潮時かな~なんて。」

「…ふざけないでよ。」


シルバがそうやって笑うとアヤが拳を振るわせる。


「言っとくけどあなたが国王を引退した瞬間私はこの国を出るから。」

「なっ!?」


アヤの言葉にシルバは思わず椅子から立ち上がった。彼女は国内の中で一番国の為に行動してきた人間だ。それが私が引退するだけでどうしてそこまでにことがいたる。


「どうしてそうなるの!?」

「あなたがそんな自分勝手な事をするなら…私も勝手にさせてもらうわ。」

「ちょっと待って!アヤ!?」


アヤはシルバの制止も聞かず、部屋を出ていく。そして扉の横にはディンが壁にもたれて立っていた。そんなディンにアヤは一通の手紙を見せる。それは聖ブルーローズ神国からの手紙だった。


「相変わらず思いきった事するな。」

「ディン、ついてきてくれる?」

「オレは妻も子供もいるんだがなぁ…まぁオレもこれをEGO国の最後の仕事にするかな。」

「ありがとう。」


そして笑って歩いていくアヤの後ろをディンはついていった。一方、アヤの言葉に衝撃を受けたシルバはしばらくそこから動けなかった。なぜこんな事になったのだろう?シルバは昔を思い出す。そこには幼い三人の少女が森の木に座っていた。


「突然ですが…二人の夢って何ですか?」


猫耳が生えた幼い獣人、センリが隣に座っている二人に聞く。真っ先に答えたのは小さい頃のシルバ、つまり自分だった。


「私はお嫁さん~!」

「私は…騎士さん。」

「騎士ってアヤには無理だよ~」

「絶対なるの!」


控えめながらもシルバの後に赤いローブを被ったアヤが答える。しかし女性ながら騎士とは…しかもまだ幼かった頃なのによく言ったものだ。今の自分と同じく昔の自分もそうアヤに言った。

アヤは信じられないかもしれないが当時は控えめで弱弱しかった。だがこの時だけは珍しく力強く宣言した。


「ふ~ん…それよりセンリの夢は何なのよ。まさか言いだしっぺで言わない何てことは無いでしょうね。」

「私は国を作って王様になりたいんですよ。」

「また大きな夢だね~それで、どんな国を作りたいの?」

「・・・・・・・自由な…国」


センリは少し黙った後小さな声でそう言った。


「何て言ったの?声が小さすぎて聞こえないわよ。」

「私は…自由な国が作りたいんです!!」


キィンッと耳鳴りがしそうな大きな声でセンリは叫ぶ。その声の大きさにシルバだけでなくアヤまでも耳を塞いでいた。


「自由な国?」

「はい。種族関係無くみんなが楽しく住める国。それが私の目指す国です。」

「あぁ…」


今はそうでもないが昔は獣人は差別の対象として人間から嫌われていた。センリも獣人の子供としてあらぬ疑いやヒドイ事を言われた事、された事が何度もあった。


「じゃあ私はセンリの国を騎士として守ります。」

「仕方ないから私も行くわ。」

「・・・ありがとう。でわ約束しませんか?」

「約束?」


小さくほほ笑んだセンリが突然そんな事を言った。アヤとシルバは意味が分からず首を傾げる。


「えぇ約束です。アヤは騎士に、シルバはお嫁さんに、そして私は国王になれたらもう一度同じ場所で会いましょう。」

「それいいわね!」

「私も…賛成です。」

「でわ決定ですね。いつか同じ場所で…」


やわらかな風が吹く。そういえばあの場所は風の精霊の加護がある場所で有名な所だった。そして三人は声を揃えて言ったんだっけな。


「「「会いましょう!!」」」


そっか、私がこの国を作った意味は・・・


------------------------------------------------------------------------


「…様・・・王様・・・・国王様!!」

「はいっ!?」

「やっと目を覚ましましたか。」


目を覚ますと目の前にはレィがいた。レィは心配そうな顔でシルバの顔をのぞいていた。


「大丈夫ですか?うなされていたんで心配しましたよ。」

「あなた…部屋を出て行ったんじゃあ?」

「ただこっちに仕事を置き忘れたので取りにきただけです。」

「国王様の事が心配になって見に来ただなんて言えないもんねぇ~」

「なっ!?ミー貴様・・・」

「レィ…」


レィは顔を赤くさせてシルバから目をそらす。シルバもそんなレィの姿を見て思わず微笑んだ。


「そ、それより王位継承の事ですが「取り消しです。」・・・えっ?」


レィが目をパチクリさせる。普段冷静な彼のこんな様子は中々見られないだろう。


「ですから中止です。大体私はまだ現役ですよ?引退なんてするわけないじゃないですか。」

「国王・・・」

「国王様・・・」


そうだ。私にはまだやるべき事が残ってる。約束もまだ果たしてないしこの国もまだ発展途上だ。まだまだ自分抜きでは成り立たない。


「明日から忙しくなりますよ?」

「了解です。国王様」

「でもレィの赤くなった顔はレアだね~・・・写真とるからもう一度お願いできない?」

「しません!!」


部屋の中が騒がしくなる中、部屋の外ではアヤとディンが話しあっていた。


「これで問題は解決ですね。それよりどうする?その手紙。」

「もういらないでしょ。元々EGOを裏切る気なんてなかったし。」

「どうだろうな?案外本気だっただろ。」


ディンは苦笑する。アヤはいつものように小さく笑うと、手元にある手紙をゴミ箱に捨てた。その内容は・・・


アヤ・ティーチ様、貴公の能力はEGO国何かではもったいない。聖ブルーローズ国に来ませんか?もし来て頂ければ聖騎士の称号を貴公に授けます。  

手紙の最後には聖ブルーローズ国剣聖、ピー・ザ・ナッツと書かれていた。


「本当に良かったのか?騎士になりたかったんだろ?」

「私はもう騎士になってますよ。」

「はぁっ?」


ディンがワケが分からないといったような顔をするがアヤは上機嫌で鼻歌を歌いながら先に行ってしまった。後日、シルバは国内で大きな改革をし、その改革のおかげでEGOはさらなる力を得る事になるのは先の話・・・願わくば三人の約束が果たされん事を願わんばかりである。

さて今回のテーマは分かりやすく「約束」でございます。今と昔は変わっても約束は変わりませんよね。

今の生活でも昔の想いや夢を思い出してみてはいかがでしょうか?

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