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4-2

私はとても字が下手だった。ただでさえ下手くそな字だというのに、空白を惜しむようにそれをぎちぎちに詰めて書くものだから、余計に判読出来るようなものではなかった。それ以前にノートを見返す事などなかったのではあるが。第一、面倒くさくて。

そして其れ以上に矢張り、板書をしたり、教師の言葉を書きとったり等というのも、単純に面倒くさかった。それが何故高校入学を期にノートをとることにしたかというと、授業中にちっともノートには何も書こうとしない私というものが、傍から見れば、「気持ち悪い」「不気味だ」とはいかない迄も、「ちょっと不気味」「変」とは思われていたらしい。実際、ぼっちを脱しだした頃にそう言われた。だから、「変や奴」に思われない様、「普通」にノートを取ろうと思ったのだった。高校入学以降は卒業する迄ちゃんとノートはとった。書き込んだというのが正確なところで、後で見返すことなど、矢張り皆無だったのであるが。それが何故、最早クラスで孤立し、見ず知らずの人間と友達付き合いなど用が無い――普通に見られる必要が無いのにノートに書くことは止めなかったのかというと……。

 もう一つはちゃんと勉強をしようと思ったことである。確かに学校ではずっと勉強は出来る部類――教科による得手不得手の差は大きかったが、基本テストで点数は取れた――だったし、進学した先の高校でも上位クラスと謂えただろうが、其れはせいぜい田舎もいいところの片田舎でのことであり、「全国レベルでどうか?」と謂われれば、それは絶対有り得ない。最初は予習復習というのをやってみようとしたのだが、考えてみたらそんなことはやったことが無く――家での事なので教室に於ける授業の板書とは違って周りの見えるところに真似する対象が無い――何をどうやっていいのかわからず、それこそ最初の最初に実行に移そうとした直後に頓挫した。あっという間に諦めた。ただ英語だけはした。事前に英文を「ちゃんと訳してこい」と謂われ、「成る程、確かに事前に訳してないと答えられない」と気付いたのである。元々、私は英語が不得意でアドリブで答える等と芸当が出来る訳がなかったのである。英語は「もう少しましにしないとどうにもならない」とは考えていたし、「成る程、事前に家でみんな和訳をしてきているから、あんな風に答えられるのか。初めて見る単語の意味が分かるのか」と合点がいった。…はっきり言って馬鹿である。入学して最初の学科試験を前にテスト勉強というものもやってみようと思った。これもどうしていいのかわからなかったが、取り敢えずマンガやアニメではドラマでは机に向かってノートと教科書だか参考書だかを開いて何かを書いているシーンをやってみようとした。参考書など無い――当然というのか何というのか、それ迄の“実績”からして、そんな“無駄な物”を買おうとは夢にも思わなかった――から教科書と白紙のノートと対面してみた。先ずは「ノートに教科書の内容を書き写して憶える」というのを思い付いたのだが、此れはどう考えても非効率にしか思えなかったし、第一面倒くさいだけなので即座に却下した。次いで、「教科書の問題を解いてみよう」と思ったのだが、此れも直後に、「どうして答えをノートに書かなければならないのか?」と感じた。数学や理科の計算をするのに書くのはまだ分かるのが、どうして頭の中で思い付いたものを、「何故わざわざ文字に起こして書かなければならないのか?」「書いて確認しなければならないものだろうか?」としか感じられなかった。そう考えると、「ノートに書くものなどはなんにもない。なんにもならない」という結論にしか至らなかった。「計算だって桁数が多いとか特に複雑というのでなければ別に頭の中でやればいいのではないのか?」とも。「手間だし、時間ががかるし、非効率――第一、面倒くさい」「黙読して考えるだけの方が遥かに速い」と感じたし。そうなると、「机に向かう」という事自体必要が無い。だったら、「寝っ転がっていた方が楽」いう事にしかならない。以降、此れが私の勉強のスタイルとなった。「楽な姿勢で教科書を黙読。問題は頭の中でだけ考える。書くのは無駄だからしない」――というものになった。その方が面倒くさくないし、手も汚れないし。集中力はなかったから、「テレビを観ながら、ラジオは流しっぱなし」、「憶えたことは忘れないうちにテストで出力したいから、基本一夜漬け」という感じで落ち着いた。それで効果的に勉強が出来たのかとかというと、仕方の問題では無く別の要因で――。


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