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3-6


こいつには――Kにとっては、取るに足らないささやかなことであっても、私にとっては、到底そんなことである訳が無い。やる側にとっては軽い軽いこと――言ったそばから忘れ、蹴ったそばからすっきりして終わり――なのかもしれないが、蹴られた側の内では何度でもリピートされる。その度に自殺を考えないではいられない精神状態の人間のことなど解りはしまい。わかっていなくても、わかっていたとしても、やられた側にとっては変わりなどしないのだから。加害者はさっさと忘れても、被害者はいつまでも克明に憶えているものだ。

それが絶えず、すぐさま自死に直結しそうな精神状態にあった者に忘却など有り得ると思っているのか!

たった五人の状況でさえこうなのだから、クラス全員がいる状態――を想像することは更に容易であろう。……そういう風にしかなりはしない。Kが率先して私を無視し孤立させれば他の者も――少なくとも男子は所属が最大派閥でない人間も「右に倣え」である。そして、「数は力」と謂わんばかりに嫌な事、自分達がやりたくないことは、無言の圧力で当然の様に悉く私に押し付ける――“贄”が一人でよければ猶更である――というのが、私の日常、私の高校生活であった。特別進学科と進学科で多少の入れ替えはあるが、逆に謂えば、三年間ほぼずっと同じ面子であるということである。

……生き地獄であった。

 「たったそれだけ」と謂う者もあろう。

確かにその通りである。

暴力はほぼ振るわれてはいない。明らかに本気でなく叩いたり蹴られたりというのを除けば。親しい間柄なら其れは「じゃれている」「ふざけ合っている」でいいのかもしれないが、だが、私の側からすれば、「お前らと私が親しい訳がないだろ!」である。若しかしたら、連中は「暴力を振るっていないのだから、いじめた覚えはない」というのかもしれないが。御立派な教職者の家系、教育熱心なことに複数の学校を運営する一族の御曹司までいらっしゃるというのに、どういう教育が施されたら、斯様な発想に至るのか?

若しかしたら、K達にはいじめた等という憶えはない、認識すらないのかもしれないが。

 いや、恐らくない。

ありはしまい。

 「した側は憶えていないが、された側は忘れない」。

「した側はすぐに忘れるが、された側は何時迄も頭から離れない」。

――そういう事である。

自殺を考える――それどころか、絶えず自死することを考えないではいられない状態に追い込んでおいても、である。私が敏感過ぎたということもあるだろうが、当時の私はいつも憤っていたし、自殺を考えていた。心の中では絶叫していた。

「何で俺がこんな目に遭わなければならない!」

 自殺したく堪らなくなった。

 死にたくて死にたくて堪らなかった。



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