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第7話~2人目の妹~

ご興味を持っていただきありがとうございます。

この話も楽しんでいただけたら幸いです。

よろしくお願いいたします。

 シャーロットさんの弟子になってから数日後。

 俺はいつも通り朝の支度をしていた。


「ロジャー、おはよう」

「父さん、おはようございます」


 リビングで本を読んでいた父が俺に声をかけてくる。

 俺は父の向かいの席に座って朝食を待つ。


「ロジャーに大切な話がある」


 父が持っていた本を閉じ、俺を見つめてきた。


「大切な話?」


 俺は父の言葉に首を傾げた。

 そんな俺を見て父は優しく微笑む。


「ああ、そうだ」


 父はそう言ってから真剣な表情になった。


「ロジャー、お前に新しい妹ができる」

「…………え?」


 俺は父の言葉に耳を疑った。

 そんな俺に向かって父は話を続ける。


「名前はマリーというそうだ。家に来たら仲良くしてやってくれ」

「は、はい」


 俺は呆然としながら頷いた。

 そんな俺を見て父は嬉しそうに笑う。


「キャロルも邪見に扱うんじゃないぞ? お前は2人のお兄ちゃんになるんだ」

「……努力します」


 俺はそう答えるので精一杯だった。

 新しい妹のことを聞かされてから俺は何をするのにも上の空だ。

 朝食を食べたはずなのに何を出されたのかさえ思い出せない。

 剣を振る気力もなく、部屋で【マリー】という妹について考えていた。


 マリー……マリー……マリー……?

 俺に2人目の妹なんていたのか?


 前世では魔力判定をした当日にシャーロットさんと一緒に家を出た。

 魔導士育成学校で生活をしていた俺の元に家族の情報はほとんど入ってこなかった。

 そのため、こんなことが行っていることなんて全く知らない。

 いくら悩んでも答えはわからないままだ。

 足が自然と自室に向かう。


 本当に前回の人生でもあったのか!?

 俺が無能のフリをしているからこうなったのか!?

 なんにもわからない!


 テーブルに伏せて頭を抱える。

 俺が唸りながら悩んでいると、部屋のドアがノックされた。


「ロジャー、入るわよ?」


 母の声が部屋の外から聞こえてくる。

 俺は慌てて体を起こし、手を伸ばして適当に本を掴んだ。


「勉強中だったのね、ごめんなさい。ちょっといいかしら?」


 母はそう言って部屋に入ってくる。

 俺は持っていた本をテーブルの上に置く。


「うん、大丈夫」


 俺の言葉を聞いた母は安心したように微笑むと口を開く。


「ロジャーに新しい妹ができるの。お父さんから聞いた?」

「うん……聞いたよ」


 俺は母の言葉にため息を吐きながら答えた。

 そんな俺を見て母は悲しそうに目を伏せる。


「……嫌なの?」

「嫌っていうか……実感がないというか……」


 俺はそう言いながら母から目をそらす。

 自分のいない間に家に妹が来ていた。

 その事実が受け入れられないだけだ。

 俺は本の表紙を見つめながら呟くように言う。


「母さん、どんな子が僕の妹になるの?」

「名前はマリーちゃん……ご両親が亡くなられたのよ」

「…………え?」


 母の言葉に俺は耳を疑った。

 両親が亡くなられた? つまり、マリーは孤児ということだ。


「だから、ロジャーにもマリーを守ってほしいの」


 母はそう言って俺の頭を撫でる。

 俺は母にされるがままだ。


「ロジャーがキャロルのことを避けているのはわかっているわ」


 母の言葉に俺は何も言えなくなる。

 キャロルには近づきたくもない。

 理由については前世のことは言えないので、誰にも喋っていなかった。


 確実に妄想とか虚言癖だと思われるからな。


「仲良くしてとは言わないわ。せめて……邪見にするのはやめてあげて」


 母の言葉に俺はうつむく。

 自分の欲望のために俺を殺したキャロルを許す気にはなれない。


「ロジャー、少しづつでいいからキャロルやマリーと仲良くしてほしいの」

「……考えておくよ」

「頼むわね」


 母はそれだけ言うと部屋を出て行った。

 俺は母に撫でられた頭に手を置き、ベッドに倒れ込む。


「キャロルと仲良く……か……無理だな」


 俺は心の声をポツリと呟いた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 俺が新しい妹の存在を知ってから数日が経った。

 今日はその妹が家にやってくる日らしい。


「馬車が見えたようだ。出迎えるぞ」


 父が落ち着かない俺に向かってそう言った。

 俺は父と一緒に家の外に出る。

 家の前ではすでに母がキャロルと一緒に待っていた。


「ロジャー、あれがマリーの乗っている馬車だ」


 俺は父の指さす方向を見る。

 1台の馬車がこちらへ向かってきていた。

 馬車が俺たちの目の前で止まり、ドアがゆっくりと開く。

 中年男性が小さな少女を抱きかかえながら馬車から降りてきた。


「ロジャー、あの子がお前の妹になるマリーだ」


 父が俺の肩に手を置いてそう言った。

 そんな父の言葉に俺は黙って頷く。

 マリーは綺麗な銀色の髪をしており、とても可愛らしい顔立ちだ。

 不安そうにこちらを見る瞳は宝石のように蒼く輝いていた。


 こんな子が家に来ていたのか……でもどこかで……。


 俺はマリーを見つめながら記憶を探る。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!


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