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第4話~魔力判定~

ご興味を持っていただきありがとうございます。

この話も楽しんでいただけたら幸いです。

よろしくお願いいたします。

「ロジャーくん、君は……本当に……魔力が……」


 シャーロットさんが悲哀に満ちた顔で呟く。

 俺たちの様子を見ていた父が不安げに口を開く。


「シャーロットさん、ロジャーは…………」

「男爵様……それが……」


 シャーロットさんは言い淀み、父から顔をそらす。


「魔力が……感じられないのです」

「な、なんだと!? 魔力がない!?」


 父の驚いた声が庭に響き渡る。


「男爵様、お静かに。みなさまが驚かれてしまいます」

「す、すまない……」


 父は申し訳なさそうに声を潜める。

 しかし、父の声を聞いた母も心配そうに俺を見つめてきた。

 その声はキャロルにも聞こえてしまったようだ。


「マーマ? どーちたの?」


 キャロルが母に向かって手を差し出す。

 母はキャロルを抱き上げると、優しく抱きしめた。


「なんでもないわ。ちょっとパパの声が大きくてびっくりしちゃったの」

「パパの声おっきいね!」


 キャロルは無邪気に笑っている。


「キャロルちゃん、ママと一緒にお部屋に行きましょうね」


 母はキャロルを抱っこしたまま家の中に入っていった。

 そんな2人を父は悲しげな顔で見送る。

 シャーロットさんは俺から離れると父に向かって口を開く。


「ロジャーくんからは魔力の循環を感知できませんでした」

「それは魔力がまったくないということですか?」

「生物は少なからず魔力を有しています。その魔力がまったく循環していないということは……」


 シャーロットさんは悲しげな表情で俺を見る。

 父は拳を強く握りしめて、怒りを堪えていた。


「もう一度!! もう一度確認してみてください!!」

「男爵様、落ち着いてください」


 興奮する父を落ち着かせるように、シャーロットさんが声の大きさを抑えるよう促す。

 目を合わせた2人が俺の方に視線を向けてくる。

 2人の目には、魔力がまったくない俺に対する哀れみの色が浮かんでいた。

 2人は俺から距離を取りながら見つめてくる。


 よし。これで当主候補として育てられることはなくなるな。


 そんな2人を見て俺は思わず笑いそうになってしまった。

 魔力が循環できない子供に魔導士としての教育を施すことはない。

 歴史を変えられる確信を得て、頬が緩みそうになる。


 2人の目には俺がどう映っているのだろうか?


 無能の烙印を押されたことを印象付けるために一芝居打つ。

 俺は父に向かって頭を下げた。


「父さん、魔力が循環してなくて、ごめんなさい」

「ロジャー……お前は……」


 父は悔しそうに顔を歪めている。

 そんな父を見て、シャーロットさんが口を開いた。


「男爵様、ロジャーくんはまだ5歳ですので、そう悲観的になることはありません」

「だが、今の段階で魔力がまったく循環していないなど……そんな……」


 父は何か言いたげに俺を見る。

 しかし、言葉が見つからないようだった。

 そんな父の代わりにシャーロットさんが口を開く。


「魔力がまったく循環していないのは異常ですが、まだ5歳ですのでこれから魔力が増えていく可能性もあります」

「……そうですね。ロジャー、魔力がなくてもお前は私の大切な息子だ。一緒に頑張っていこうな」


 父は優しく俺を撫でてくれた。


「はい、父さん」


 俺は父に笑顔を向ける。

 そんな俺たちをシャーロットさんは不思議そうに見つめていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 無能認定を受けた日の夜。

 俺はいつものように部屋を抜け出して近くの森に向かう。

 男爵といえども貴族の家なので数人の護衛が家の周りを守っている。


 気配察知……大丈夫だな。


 魔核へ魔力を流して魔法を発動させた。

 家の周りにいる護衛の人数と位置を把握し、俺は廊下を進む。


「ロジャーに魔力が無いだなんて……どうすればいいの……」

「サラ、大丈夫だ。シャーロットさんも言っていたが、今は循環していないだけかもしれない」

「でも……」

「可能性は0じゃない。あの子はまだ5歳だ」

「そうだけど……もし本当に魔力がなかったら……」


 両親の声がリビングから聞こえてきた。

 どうやら俺の話をしているようだ。

 そんな2人の会話を聞いて俺はやりすぎてしまったと反省する。


 普通の人くらいに循環させておけばよかったか?


 全く魔力が無いとなるとこんな風に両親に心配されてしまう。

 多少なりとも魔法が使えないと生活そのものに困るからだ。

 コンロに火を付けたり、部屋の灯りをつける時に魔力を使う。

 魔力が全くない人間は生活するのも一苦労だ。


 次の判定の時はちょっと流そう。ちょっとね。


 俺の魔力保有量は常人の数十倍だ。

 それが仇になって、キャロルに利用された。


 だが、両親に心配をかけないように次は少しだけ流しておくべきだな。


 俺はそんなことを考えながら家を抜け出して森へ入った。

 この森は夜になると月の光も届かずに真っ暗になる。


「よし」


 俺はそう呟いてから身体強化の魔法を発動させた。

 5歳児とは思えない速度で森の中を駆けていく。

 1時間ほど走ったところで目的の場所に到着した。

 そこは木々が生い茂る中にぽっかりと空いた空間だ。

 俺は右手を前に突き出す。


「【闇よ、我が手に集いて敵を貫け】」


 俺の手から闇の魔力が溢れ出す。

 魔力は黒い靄となり、徐々に形を変えて矢の形になる。

 その数50本。


「行け」


 俺が手を振り下ろすと闇の矢が前方に向かって放たれた。

 木々の間をすり抜けながら次々と矢が飛んでいく。


「さて、これはどういうことでしょうか」


 誰もいないはずの背後から声が聞こえてきた。

 俺は慌てて振り返る。


「誰だ!?」


 そこには特徴的な黒縁メガネをかけたシャーロットさんが立っていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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