第3話~妹~
ご興味を持っていただきありがとうございます。
この話も楽しんでいただけたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
キャロルが生まれてから2年が経ち、俺は5歳になった。
ある程度自由に動けるようになったので、家の庭で剣の練習をしている。
「ふっ、はっ」
俺は木剣で素振りをしていた。
前世でも魔法と剣を併用した。
魔法だけではなく、小さい時から剣に慣れておくのは必要なことだ。
まあ、日中は剣が主になっちゃっているけど……
家のある方を見ないようにしながら剣を振る。
「にーにー! にーにー!」
「キャロルちゃん、危ないからお兄ちゃんに近付いてはダメよ」
キャロルが庭で飛び跳ねながら俺を呼ぶ。
母がキャロルを抱き抱えて注意していた。
「にーにー!」
キャロルは俺を呼びながら、また飛び跳ねる。
「危ないからキャロルちゃんはママと一緒にいなさい」
「きゃっきゃっ!」
キャロルは母に抱き抱えられて楽しそうに笑っていた。
俺はそんな2人を見ないようにしながら剣を振るい続ける。
すると──
「かえったぞー」
父の声が聞こえてきた。
どうやら仕事から帰ってきたようだ。
まだ夜になっていないのに早いな。
「パパー!!」
キャロルが母から離れ、金色の髪を靡かせて走る。
そして、父に勢いよく飛びついた。
「おっと、ただいまキャロル」
父は嬉しそうにキャロルの頭を撫でた。
そんな2人を見て母が微笑んだ。
「あなた、おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
父はキャロルを抱き抱えたまま視線を下に移す。
目が合い、俺は軽く頭を下げた。
「おかえり、父さん」
「おお、ロジャー、今日も訓練していたのか」
父はキャロルを抱き抱えたまま俺の方に歩いてくる。
「ロジャー、今日はお前にお客さんだ」
「僕に……ですか?」
「そうだ。だから、今日は訓練はここまでにしなさい」
俺は父の言葉に素直に頷いた。
「わかりました」
「キャロル、パパはロジャーと大切な話があるからママと一緒にいなさい」
父がキャロルを降ろし、母の元へ連れていく。
「やー! パパといる!!」
キャロルが父の足にしがみつき、金色の髪をぶんぶんと横に振った。
「すまないな、キャロル」
父は申し訳なさそうにキャロルの頭を撫でた。
しかし、キャロルは父の足から離れない。
「やー! パーパーと一緒!」
「困ったな……」
父は困ったように母に視線を向けた。
そんな父の後ろから誰かが近付いてくる。
「デイヴィス男爵、すぐに済むので大丈夫ですよ」
「すいません、ビーズリーさん」
その人物を見た瞬間、俺の心臓がドクンと跳ねる。
父の後ろから現れたのは灰髪の女性だった。
黒いローブに身を包み、父よりもだいぶ少し年下だ。
印象的な黒縁メガネが彼女の理知的な印象を強くしている。
師匠……
俺は思わずそう呼びそうになった。
彼女はシャーロット・ビーズリー。
俺の師匠の1人で、王宮魔法団に所属している魔導士だ。
「はじめまして、ロジャーくん。私は魔導士のシャーロット・ビーズリーです」
シャーロットさんが俺に向かって手を差し出してきた。
俺はその手を見てからシャーロットの顔を見る。
「初めまして、ロジャー・デイヴィスです」
手を握り返す前に、俺は魔核を中心に巡る魔力をガチガチに固めた。
さらに魔力を遮断して、魔力を感知されないようにする。
「うそ……これは……」
俺と握手を交わしたシャーロットさんは目を見開く。
俺の魔力が循環していないこと感じ取ったのだろう。
「あの、どうかしましたか?」
俺が首を傾げるとシャーロットさんはさらに強く手を握ってくる。
「ロジャーくん、痛くしてしまうかもしれないけれど、我慢してくれる?」
「はい。わかりました」
頷いたと同時に、シャーロットさんが俺の身体に大量の魔力を流してきた。
「うぐっ……」
身体中に痛みが走る。
俺は思わず声を漏らしてしまった。
シャーロットさんは俺の体にある魔力を強制的に循環させようとしている。
絶対に負けない! 俺が【無能】であることを証明するんだ!
少しでも魔力があることがわかれば、前回と同じことになってしまう。
俺の魔力は普通の人の数十倍ある……相手が師匠でも押しのけてやる!!
手から流される魔力に必死に抵抗する。
絶対にシャーロットさんの魔力を循環させない。
「うぐぅ……あぅ……」
俺は歯を食いしばり、痛みを我慢する。
「あぅ……ぐぅ……」
もうダメだと思った時、急に痛みがなくなった。
目を開けて前を見るとシャーロットさんが深刻そうな顔で俺を覗き込んでいた。
ご覧いただきありがとうございました。
もしよければ、感想、ブクマ、評価、待ってますので、よろしくお願いいたします。
特に広告の下にある評価ボタン・いいねボタンを押していただけると、大変励みになります。
これからもよろしくお願いします。
次回は明日公開します。