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第2話~回帰~

ご興味を持っていただきありがとうございます。

この話も楽しんでいただけたら幸いです。

よろしくお願いいたします。

 なんで母さんがここに……


 俺は母に向かって手を伸ばした。


 なんでこんなに小さいんだ!?


「あらあら、どうしたの?」


 母は俺の身体を抱き上げた。

 記憶の中にしかなかった母が優しく俺を見つめている。


「あぅあ~」


 かあさんと呼ぼうとしたが、きちんと発音できない。

 もがくように手を動かしていると、俺の身体を優しく包み込んでくれる。


「ふふっ、お腹が空いたのね? 今ミルクをあげますからね」


 母は嬉しそうに微笑みながら俺の顔を撫でた。

 俺をベビーベッドに寝かせてから、母は茶色の髪を翻す。


「あう~あ~」

「すぐに戻ってくるから待っていてね」


 母は笑顔でそう告げると部屋から出ていった。

 俺は母がいなくなったことを確認してから、改めて自分の手を見た。


「あぅ……」


 そこにあったのは見慣れた手ではなく、小さくぷにぷにとした赤子の手だった。


 赤ちゃんに……戻ったのか?


 力が入らず、うまく身体を動かせない。

 しかし、不思議と頭の中だけは冷静だった。


 神龍に願ったことが叶ったのか……


 最初は夢だと思ったが、あまりにもリアルすぎる。

 夢なら鮮明すぎるからな

 俺は本当に赤ちゃんになってしまったようだ。


「あう~」


 人生をやり直したいと願ったものの赤ちゃんに戻るなんて思わなかった。

 ただ、この二度目の人生は俺が望んだもの。

 もう実の妹に殺されることになるような未来にしたくない。


 そのために、俺は力を隠す!!


「お待たせ~」


 母が笑顔で俺の前に戻ってきた。

 手には哺乳瓶を持っている。


「ほら、ミルクですよ」


 母は優しく笑いながら俺に哺乳瓶を近づけてくる。

 俺は素直にそれを咥えた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 それから2年が過ぎた。

 3歳になった俺はベビーベッドに横たわる赤ちゃんを眺める。


「きゃっきゃっ」


 天使のような笑顔で鈴の音のような声を鳴らす赤ちゃん。

 先日生まれたばかりの俺の妹だ。

 金色の髪に黒い瞳。


 キャロル……


 前世で俺はキャロルを溺愛し、甘やかし、願いことを断らなかった。

 それは俺だけではない。

 両親も俺を可愛がってくれたが、それ以上にキャロルを溺愛していた。


「キャロちゃ~ん」


 父がデレデレした表情で赤ちゃんの頬を指でつつく。

 そんな父の指を小さな手で握り返すキャロル。


 特に父はキャロルに甘い。


 キャロルと同じ金色の髪をしているからだろう。

 キャロルが泣けば仕事を放り出して駆けつけるほどだ。


「あなた、キャロが可愛いのはわかりますけど、お仕事に遅れますよ?」


 母はキャロルを優しく撫でながら父に注意する。


「すまない……だが……」


 父は名残惜しそうにキャロルを見つめる。

 そんな父の姿を見て母がため息を吐いた。


「もう少しだけですからね」


 母の言葉に父は嬉しそうに微笑むのだった。

 父はキャロルを抱き上げると高い高いをする。


「きゃっきゃ」


 キャロルは嬉しそうに笑っていた。


 歴史は変わらない……キャロルが生まれた……


 嬉しそうな3人を眺めながら、俺はそう考えた。

 キャロルの笑顔を見て父も母も目尻を下げていた。

 2人の愛情がキャロルに注がれていくのがわかる。

 そんな姿を見て俺は複雑な気持ちになった。


 もう……あんな未来にはしたくない。俺はこいつと関わらないようにする。


 キャロルの相手をしている2人を背に、俺はベビーベッドから離れた。


「始めるか」


 俺は自分の部屋の床に座り、目を閉じる。


「まずは……魔力制御だな」


 自分の中に存在する魔力で魔法の核となる【魔核】を生成する。

 魔核は心臓の真上……そこにある魔核へ魔力を注ぐ

 俺は深呼吸をして、体にある魔力を感じ取る。


 急ぐな……ゆっくり……


 すると、身体の中に小さな熱を感じた。

 その熱を魔核に集中させるようにイメージをする。


「よし、ようやく一段階目終了だ」


 魔核の製錬を終え、俺は目を開いた。

 体が動けるようになってから始めてようやく形になった。

 公開するつもりはないが、俺が史上最年少で魔核を保有した人間だろう。

 魔核は7段階あり、段階ごとに発動可能な魔法が増える。

 今の俺は一番下の【紫色】だ。

 一番上が赤で、その次が橙、黄、緑、青、藍、紫の順になっている。

 紫色でも非凡な魔力操作技術がなければ作成できない。

 魔導士としての才能があっても、誰かに師事してもらわなければ完成しないものだ。


「さて、続きを……」


 俺が次の段階に進もうとした時、ベビーベッドの方から泣き声が聞こえてきた。

 どうやらキャロルが泣き出したようだ。

 扉をそっと開けて覗き込む。

 父は慌ててベビーベッドに駆け寄るとキャロルを抱き上げた。

 そんな父を母は笑顔で見つめている。

 2人の愛情を一身に受けながら、キャロルは嬉しそうに笑っていたのだった。


 俺はお前を許さない。


 心の中でキャロルにそう告げるのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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