第1話~オープニング~
新連載を始めました。
書き上げ次第更新するので、末永くよろしくお願いします。
「お兄様! 私のために潔く死んでくださいまし!!」
実の妹であるキャロルが背後から俺の胸に剣を突き刺してきた。
俺と同じ漆黒にも似た瞳が真正面から見据えてくる。
こんなところにいるはずのないキャロルがどうして……。
「キャロル……お前……なんでここに……」
王名で神龍を討伐した直後、ここにはいないはずのキャロルに襲われた。
キャロルは俺の胸をえぐるように何度も剣を押し込んでくる。
「お兄様、さっさと死んで【魔核】を差し出してください」
「そのためだけに……俺を?」
「そうです。それが手っ取り早く強くなる方法でしょう?」
笑顔で即答するキャロルを見て背筋が凍り付いた。
「ここまですればお兄様でも死んでくれますよね」
キャロルが剣を引き抜くと血が噴き出る。
傷は深く、このままでは失血死してしまう。
回復魔法を……
俺は回復魔法を発動させようとした。
しかし、神龍との戦いで体力と魔力を使い切ってしまった。
魔法が発動しない俺を見て、キャロルが口を開く。
「あら、まだ動けるんですか?」
キャロルは満面の笑みを浮かべて俺を見下す。
「苦しまずに殺してあげますね」
そう言いながら、キャロルは右手を俺に向けてくる。
「【闇よ、我が手に集いて全てを貫け】」
キャロルの右手から闇の魔力が溢れ出す。
その闇は俺の視界を覆い尽くし、俺に襲い掛かろうとしていた。
「くっ……障壁よ……」
俺は最後の力を振り絞って防御魔法を発動させようとする。
だが、キャロルの魔法は俺の防御魔法をいとも簡単に打ち破ってしまった。
「がっ!?」
闇の魔力が俺の身体を何度も貫く。
「ふふっ、これでお兄様の力は私の物ね」
キャロルは嬉しそうに笑う。
そんなキャロルを見て俺は……
「どう……して……」
「あら、まだ喋れるのですね」
なんとか口を動かして声を出した。
キャロルは俺の前にしゃがみ込むと俺の顔を覗き込むように見てくる。
「私は世界一の魔導士になりたいんです。早くお兄様の魔核をくださいな」
「そのために……実の兄を?」
「もちろんです。私のためなら死んでください」
キャロルは笑顔のまま表情を崩さず、もう一度右手から魔法を放ってきた。
俺はその魔法に抵抗することもできず吹き飛ばされた。
もう痛みすら感じなくなっていた。
いや、それどころか意識も朦朧として今にも気を失いそうだ。
「……キャ……ロル……」
キャロルは俺を慕ってくれていた。
だが、それは俺の力を利用するためだったらしい。
思い返せば妹は俺を都合の良い道具としか見ていなかったようだ。
もう……いい……けど……
俺はここで死ぬんだと悟った。
悔しさで涙が頬を流れる。
神龍との戦いで魔力も体力もほとんど残っていない。
キャロルに利用されて死ぬのはごめんだ!!
そう思った瞬間、俺の背後から光が溢れ出してきた。
その光はキャロルの魔法をかき消し、俺の身体を優しく包み込んでくれる。
「な、何!?」
キャロルは驚いた表情を浮かべている。
俺もこの光に心当たりがない。
『我を倒した強き者よ、汝の願いを叶えよう』
頭の中に誰かの声が聞こえてきた。
この光は……まさか神龍なのか?
『我が力を使うがいい。お主は何を望む?』
「俺の望み……」
「お兄様!? なにをしているの!!??」
キャロルが笑顔を崩し、俺へ迫ってくる。
しかし、光に遮られてキャロルは俺に近づけない。
「俺は……」
神龍の力が身体の中に入ってくるのがわかる。
それと同時に俺の身体が光に包まれていく。
「ダメ!! 言わないで!! それも私が使うんだから!!」
キャロルが顔を歪ませて必死に叫ぶ。
「俺は……人生をやり直したい!!」
『汝の願い聞き届けた』
神龍の声が響く。
それと同時に俺を包む光がさらに大きくなっていった。
「その力は私の物よ!? やめて!!!!」
そんなキャロルの悲痛な声を聞きながら、俺は意識を手放した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ここは……
目を覚ますと知らない天井が見えた。
俺はベッドで横になっているようだ。
身体を起こそうとするが自由に体が動かせない。
「あら、目が覚めた?」
ふと、そんな俺の視界にありえない人物が映り込んできた。
「ふふっ、お腹が空いたのかしら?」
俺の目の前には死んだはずの母がいた。
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