DREAM! 第5幕(マラソン勝負編 最終章)
(あらすじ)
とうとう始まったマラソン真剣勝負!
どちらに軍配が上がるのか!?
川の周辺は、丘状になっていて
その丘の上からスタートをする10キロマラソン。
(朝起きたときは、ポカポカしてたのに緊張して肌寒いな・・・。)
スタートの線に並びながらつぶやいた。
もう、いつでも「よーいスタート」と言っても
いい状態になってより緊張が増してくる。
ココまでになったら早くスタートをしたいと思うようにも
なってくる。
見学席には、一美の姿が見当たらない。
(トイレにでも行ったかな?)
そこまで気にしてはいなかった。
まさか、こんな契約が交わされていたなんて
想像も付かなかった。
それについては後に話す事になる。
さて、話をレースに戻そう。
2人並んでいる横で笛を持った人が立っている。
笛は、体育の先生が持つような白い笛だ。
笛を持った人は、口に笛を含んで
「よーい・・・・」
ピー
耳が痛くなるような大きな音で
スタートの合図を鳴らして2人は、ゆっくりと
走り出す。
僕も亮太も最初から本気では
体力が、もたない事ぐらいは想像は付いている。
見学席からは、応援の声も聞こえるが
ほとんどが拓哉に対する侮辱の言葉だった。
「拓哉~立派に負けろよ~」
「拓哉が負ける試合なんて見る必要ねーよ!」
と、こんな感じの声が多く聞こえた。
恥ずかしくなって
まさしく穴にも入りたい気分になった。
それでも少しづつペースも上げていった。
一美との特訓の成果もあって
自分でも体力は上がったなと思うようになっていた。
前半では、接戦になった。
追い抜き追い越し
そのたびにおもしろ半分で付いてきている
見学者の応援の声が大きくなる。
だが、すぐに予想済みのことが起きた。
1週間訓練したからと言って相手が悪すぎた。
すぐに体力に差が出てきて息切れも出てきた。
だが亮太は、スタートのときと同じで安定した走りを
見せていた。
差が開く一方で、つまんなくなったのか
付いてきた見学者の数も減ってきている
ことに気がついた。
(まだあきらめないぞ~)
心の中で叫んだ所で体力にも影響は出ない。
それどころか確実に体が悲鳴を上げ始めていた。
それでも折り返し地点を過ぎて残り2~3キロ
と言った所だろう。
訓練のおかげでなんとなく亮太の影が見えるぐらいの
差ですんでいた。
(訓練がなかったら俺は、もっと後ろを走って
いたんだな・・・)
一美の存在がなかったら
訓練は続けられなかっただろう。
一美にも感謝しながら足を進める。
さすがの亮太も疲れがたまってきたのか
ペースが落ちてきた。
まぁ僕も人の事は、言えないのだが。
残り1キロぐらいだろう
ココぐらいになると最後の力を振り絞って
走る距離である。
だが、さっきまで見えていた亮太の姿が見当たらない。
さっきまで見えていたのでおかしいなと思いながら走っていた。
もうほんの何百メートルでゴールと言う
ところで、あることに気がついた。
「地面に何かいる・・・?」
近づいてみると、
「!?」
僕は、目を疑った。
足をパンパンに腫れさせた亮太が、地面に
倒れていた。
「おい!大丈夫か!」
と叫ぶと亮太から回答が来た。
「俺は・・・まけたくね~よ・・・俺は・・・
まけたくね~よ」
泣きながら返答してきた。
痛さより、今走れないと言うことに泣いていたのだろう。
クールな亮太にもこんな一面があるなんて。
僕は、思った。
本当は、亮太って悪いやつじゃないかもしれない。
他部を侮辱するのもそれだけ自分の部活
を愛している印。
ただ、他の人よりコミュニケーションが苦手なだけで
殴ったり、侮辱と言う方法しかとらないだけであって
本当は、泣きたい時だってある
「ただの人だったんだな。」
最後に心に思った言葉がつい口に出てしまった。
そして、僕は肩を貸した。
亮太を背負ってゴールへ向かう。
「ありがとう。そして・・・・ごめんな。」
それを最後にゴールまで亮太は、何も言わなかった。
ゴールでは、2人のゴールに涙を流していた人もいた。
これが、亮太と仲良くなったときであった。
つづく