貴女(あなた)の前での眼鏡姿(めがねすがた)
私は目が悪くて、常に眼鏡が欠かせない。そして彼女は、そんな私のことが大好きだそうだ。
「眼鏡を掛けてる私が好きなの? それとも眼鏡が好きなの?」
「貴女が好きなのよ。むしろ眼鏡を外してる貴女の方が魅力的かもしれないわ」
本当かなぁ、と私は実感が沸かない。私は眼鏡が無いと何も見えないので、眼鏡を外した自分の顔を見たことがないのだ。コンタクトレンズは使うのが怖い。きっと私は生涯、眼鏡だ。
「私の顔、眼鏡を外したら、どうなってるの? 目が数字の3みたいになってない?」
マンガで良くある描写で、ああいう変な顔を彼女に見られてるのではないかと気になった。恋人である彼女には幻滅されたくないので。
「逆よ、逆。マンガで言えば、眼鏡を外した瞬間、背景に綺麗な花が咲いて美少女キャラに変貌するシーンね。誰もが放っておかない美しさだから安心して」
「本当に? ……じゃあ私、コンタクトレンズにした方がいい?」
そんなに褒められると、ちょっと嬉しい。だから提案してみたのだけど、それは嫌がられた。
「駄目よぉ。貴女の美しさがバレちゃったら、ライバルが増えちゃうじゃない。眼鏡を外した顔は、私以外に見せないで」
私が眼鏡を外すのは、言われた通り、彼女の前だけだ。眼鏡を外した私は、とっても無力で、そして彼女いわく美少女キャラであるらしかった。
「背徳感が凄いわ。そうよ、その顔よ。絶対、他の人には見せないんだから」
私は彼女から悪戯される。彼女は私の家庭教師だ。私の両親が家に居なくて、二人きりになれる時間帯というのは多いのだった。最初に誘ったのは私の方だから問題ない、ない。
彼女の行為が一段落して、やっと眼鏡を掛けさせてもらった。私より成熟した身体が見えて、次は彼女が悪戯される番だ。正直、ずっと私は悪戯されっぱなしでもいいんだけど。
「眼鏡だけを身に着けた美少女……素敵……」
うっとりと彼女が言う。眼鏡があっても無くても私は愛されるようだった。