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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

赤い女

作者: n


 これは、私がシングルマザーになった話。


 私は妊娠中とても不思議なことが起きた。

当時、妊娠した私は私の家族と彼が揉めていて結婚を許してもらえなかった。

理由は経済的な面とか、彼の素行の悪さだった。


 私は彼と最初は結婚したいと思っていたが、親に諭され子供を産むにあたり彼と本当に結婚するか悩んでいた。

彼は私と結婚するつもりで、彼の祖母に私を紹介したりしていた。

彼の両親は交通事故で亡くなり家族は祖母だけだった。とても彼に甘い祖母で、彼の我儘を許しているような人だった。


私はよく彼の家に遊びに行っていて、いつも泊まるようにその祖母に言われていた事もあり妊娠してからも泊まることが度々あった。

けど、本当は泊まりたくなかった。


何せ古い家だからネズミがいたり隙間風が入ってくるし、一番嫌だったのは夢見の悪さだ。

必ず赤い女が夢に出てくる、そしてその女が私を殺そうとするのだ。

女は髪の毛は長くてボサボサで顔が見えない。

真っ赤なボロボロのくるぶし近くまであるワンピースを着ている。


夢の中で私が実家の玄関を開けたら女が立っていて包丁で実家の中を追いかけ回されたり、道を歩いていると背後から追いかけられて殺されそうになったり、曲がり角を曲がった瞬間に現れてお腹を蹴られそうになったり、一番怖かったのは私の親しい友人の姿だったのに私が近づくと何故か友人は消えてその女が現れて殺される寸前で目が覚めたりと…本当に散々な夢を見ていた。

夢見が悪い中、夜中に何度か目が覚めるのだがその度に彼の部屋の扉の向こうから声がするのだ。

「………で、……にして、……の…」

というような、微かにぶつぶつと呟く声が聞こえる。

それは彼の祖母なのだ。夜中に目が覚めると、何故か彼の祖母が彼の部屋の前でぶつぶつと何かを言っている。

夜中にそういう事が何度もあって、私は彼の家が苦手だった。

だから、彼の家から実家に帰るとホッとして一気に疲れてしまっていたし、居心地が悪くて早く来るたびに早く帰りたいと思っていた。


しばらくすると段々お腹も大きくなり彼の家に泊まるのが本当に負担だったので私はほとんどを実家で過ごすようになった。

彼の家に行かなくて良くなったのでホッとしていた。


何度か彼に親を説得できなくても籍を入れようとか、必ず一緒に住めるようにするから心配するなと言われていた。

私は、彼の実家に住むのは本当に嫌だったから一緒に住むならどこかに部屋を借りて、親を安心させてからでないと籍は入れられないと断っていた。


ある日、断り続ける私にとうとう彼は痺れを切らし、私の両親に怒鳴り込んできた事がある。

私は彼を必死に止めた、彼は私の静止も聞かず怒りに任せて私を突き飛ばした。

それを見た両親が怒り心頭になり、彼を締め出し金輪際敷居をまたぐなと大喧嘩になり私は彼とは会うことはなくなった。


私も突き飛ばされた瞬間、一気に冷めた。

何だ、コイツ自分のことばっかで最低なやつじゃんと一気に心が離れた。


それから臨月になり、幸い赤ちゃんもお腹の中で順調だった。

「ふぅ、重たい…」

お腹が重たくてしんどい…妊婦は大変だ。

あともう少しで予定日…。


急に物凄い眠気に襲われて、私は目を閉じた。

すぐに寝てしまったと思う。

夢を見た…。


私は実家で、父にベビーベッドを作ってもらっていた。赤ちゃんのための新しいベッドに敷布団とカバー、小さな可愛い枕。

私の好きなキャラクターの掛け布団…。

私の手には可愛い赤ちゃん、なんて可愛い。

赤ちゃんにベッドの寝心地を確認させたくてそっとベッドに下ろした。

赤ちゃんはとても気持ちよさそうに寝ている。

少し離れて私も休もうと、ベッドから離れて横になる。


カタン…。ベビーベッドの方から音がしたので見てみると、赤い女が赤ちゃんを抱っこしている。

私は一気に血の気が引いた…殺される。

私の赤ちゃんが殺されちゃう、触らないで!触らないで!

「近づかないで!!離れて!!」

私は赤い女に近寄って赤ちゃんを奪い返した瞬間に目覚めた。


「っはぁ!はぁ…」

あまりの恐ろしさに私は目が覚めても鳥肌が止まらなかった。

その瞬間…

「あっ!いっ、いたぃ…っっ!」

私の股から大量の赤い血が流れた…。

目を疑う量だ、私は声にならない声を上げた。

両親が幸いにも異変に気づいて救急車を呼んでくれた。赤いランプとサイレンが聞こえる。


私はそれから緊急手術で無事に赤ちゃんを取り出した。赤ちゃんは無事だったが、あと少し遅ければ取り返しの付かない障害や死を迎えていたかもしれないと言われた。

更に、私は大量出血をしていたので輸血が間に合わなければ死んでいたそうだ。

本当に何もなく無事で良かったと病院のベッドで心底思った。


 それから、しばらくは実家の助けを借りて子供を育て何とか自立することができた。

あの日依頼、あの女の夢は見ない。


あれが何だったのか目的が何なのかよく分からないが、私は逃げ切ることができたんだろうな。

もし、彼とあのままいたら私はどうなっていたのだろうか…。

もしかしたら赤い女は彼に関係あるのかも知れないが今となっては分からない話だ。


 「おかあさーん!早く!」

私の息子は今年で10歳になる。私は縁あって素敵な人と結婚することになった。

今日は私と夫と息子、そして身内だけの小さな結婚式をする。

 これから、私も息子も幸せな家庭を築けるよう精一杯頑張ろう。


とても天気の良い日だ…、集合写真を花畑をバックにして撮影した。


後日…仕事の帰り道、たくさん撮った写真を友人のカメラマンから受け取り帰りながら我慢できずに取り出して眺めていた。

ある一枚の写真を見て私は血の気が引く…。

遠くの花畑に…赤い何かがこちらを見て立っていた。



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