19 俺を信じて
「ごめん……怖かったよな」
コートニーはベッドで仰向けになっていたメイシャルを起こして抱きしめた。
「大丈夫、純潔を奪ったりなんてしない」
「えっ……」
媚薬の効果を解消するには男の精を注がれなければならないのに。
「どうやって……」
「純潔を奪わなくても、俺なら治してあげられる。俺を信じて……」
メイシャルを見つめるコートニーの綺麗な瞳はとても優しい琥珀色に見えて、メイシャルはコクリと頷いて、コートニーを信じることにした。
「媚薬は経口摂取だったのか?」
「そう……ジュースに混ぜられてて……」
「わかった。口、押さえるぞ」
「んぐっ」
コートニーがメイシャルの口を手で塞いだ。
少し待つが身体の疼きは治らない。
メイシャルが顔を赤く染め、瞳も潤ませ、身体をもじもじさせながら、訴えるようにコートニーを見つめる。
コートニーが手を離す。
「シャル……、これじゃ時間がかかりすぎるか……。まだ引いてないんだよな」
「うん……熱い。あっ、やだ……私……はしたないっ」
身体をくねらせていることに気が付き恥ずかしくなる。
「気にしなくて良い。薬のせいでこうなっているだけ。シャルがはしたないわけじゃない。君は淫らなんかじゃない。全部薬のせいだ」
気にしていたことを否定してくれた。薬のせいだと言ってくれた。穏やかなコートニーの声に安心する。
トロンと蕩けたような目でコートニーの声を聞く。
「くそっ、そんな顔されると俺の方が理性吹っ飛びそうだ」
「熱い……熱いよぉ、コート」
「少し水を飲め」
横たわっていた身体をコートニーが起こして背中を支えながら、コップを口に当てて傾けてくれた。
んくんくと喉を鳴らして水を飲み干すが、それでも熱は引いてくれない。
目の前の優しい男に身体を差し出せば楽にしてくれる。そんな感情に支配され始める。
メイシャルはハァハァと熱い息を吐きながら我慢できずに口にする。
「熱いっ、コート……もう無理……。コートの……欲しいよぉ」
コートニーがピシリと固まる。
これは媚薬の熱に浮かされて言っているだけだ。そう思っても、メイシャルの甘い誘惑に揺らぎそうになる。
「おねがい……」
潤んだ瞳で見つめられ、コートニーはゴクリと唾を飲み込んだ。
だが、先ほどメイシャルには「俺を信じて」と言ったばかりだ。理性を総動員し、頭を振って我慢我慢と自分に言い聞かせる。
「シャル、それは出来ない。君の婚約者はギルベルトだ。媚薬に浮かされてそう思ってしまっただけで、きっと本心ではない」
――私の婚約者はギル……
その台詞でメイシャルは現実に引き戻された。
なんてことをコートニーにお願いしてしまったんだろうか。
ここまで誠実に対応してくれたコートニーが一線を越えることなどあり得ないのに。
「ご、めんな…さい……、私……はしたないことを……」
「はしたなくなんてない。媚薬のせいだ。シャルはいつだって綺麗だよ」
コートニーはメイシャルを優しく宥めた。
「それに俺の愛は重いんだ。最後までしたら、きっと俺はシャルのこと離せなくなる。ギルベルトには渡してあげられなくなる」
綺麗な顔を歪めて、悩ましげな表情でそんなことを言われて、媚薬の効果とは関係なしにメイシャルの鼓動は早くなる。
「シャル、口開けて……」
「くち……?」
「ああ、ちょっと乱暴な方法だけど、こっちの方が確実だ」
メイシャルが口を開けると、コンラートはメイシャルの口の中に指を突っ込んだ。
「んっ」
しかも一本ではなく三本も。
「苦しいかもしれないが、少しの間我慢してくれ」
「んぐっ……」
三本とも喉に付きそうなくらい奥まで突っ込まれてすごく苦しい。
涙目になりながらコンラートを見る。
「んぅぅっ……」
「ごめん。辛いよな……頑張ってくれ……」
どれくらいそうしていただろうか……
コートニーの言うように、少しずつだが身体の熱も疼きも引いてきている。
「良かった。媚薬の熱が引いてきているようだな」
口の中に指を突っ込まれたままだが、メイシャルは軽く頷いた。
コートニーは一体何をしたんだろうか。熱かった身体が楽になってきて眠気に襲われる。
「メイシャル……疲れただろ? 決して酷いことはしないから眠れそうなら寝ていいよ」
「うん……」
メイシャルはゆっくりと目を閉じてそのまま眠りについた。
メイシャルは顔の火照りは少し引いたが、目元は涙で濡れて、唇も赤く濡れ、すうすうと寝息を立てて眠っていた。
コートニーは眠るメイシャルを見つめてそっと近づく。
「……これだけ我慢したんだ。少しぐらいご褒美くれよ」
コートニーはメイシャルの頬に軽くチュッと口づけた。
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