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1 王女の愛はすでに重め

いきなり不快な展開注意です!

また、お話の中盤で突然の流血・残酷描写が入ります。

なんの前触れもなく入りますので、苦手な方はブラバをお願いします。

(ネタバレになるのでこの先注意書きはありません)

 隣り合う二つの国、アマリア王国、ファルダス王国はもともと一つの王国であった。しかし百年ほど前に継承権争いで国が分裂した。

 かつての王族は()()()()という異能を持ち、その力を残すため血族での婚姻を繰り返してきた。

 それは国が二つに分裂してからでも変わらなかった。

 だが、それでもどこかから力を持たない血が混じり、力を持つ血は薄まり、中には王家の力を持たない王族も生まれるようになった。


 国が分裂してから百年が経ち継承権争いをしていた時代の遺恨は無くなったものの、二国間では王家の力を巡って水面下で腹の探り合いは続いていた。


 現在のファルダス国王は記憶操作の王家の力を持っており、近年ファルダスは国力を上げている。

 またアマリアでも相手を死に追いやるほどの王家の力を持つ者がいるとか。


 両国はお互いを警戒し、同盟を結ぶことにした。


 同盟の条件はファルダスの王太子ギルベルトとアマリアの第三王女メイシャルとの婚姻だった。



     ◇◇◇



「メイシャルはまだぽーっとしてるの?」

「シャルル……だって在校生代表の祝辞で見たギルベルト様、絵姿通りでとっても素敵だったのよ。あんな素敵な方が私の婚約者だなんて」



 今日はファルダス王国にある名門校グリーンフォード学園の入学式だった。

 メイシャルは今日、双子の兄で、アマリアの第二王子のシャルルと一緒にこの学園に入学した。


 アマリア王国の第三王女、メイシャル・リンツ・アマリアとファルダスの王太子、ギルベルト・ローパー・ファルダスとの婚約が決まったのは今から二年前、メイシャルが十三歳、一歳年上のギルベルトは当時十四歳だった。

 見せられたギルベルトの絵姿は華やかで大変見目がよく端正な顔立ちをしており、メイシャルはギルベルトに会えることを楽しみに、婚約が決まったその日から、懸命に王太子妃教育を受けた。



「色んな女子に目配せして、チャラそうな王子だったじゃん」

「失礼なこと言わないで! ギルベルト様も王族なんだから、私たちと同じでひたむきな愛を育んでくれるはずよ!」


 アマリアでは王家の力を持つ王族は、王家の力の強さに比例して愛が重いと有名だ。

 例に漏れず、メイシャルは今日初めて見た婚約者のギルベルトに重めの愛を注いでいた。


「へぇ、じゃあメイシャルとは別の女とひたむきな愛を育ててんのかな?」


 そんなこと許せるはずがない。他の女性と会話をすることすらやめてほしいくらいだ。


「もう! ルル! そういうこと言わないで! ギルベルト様は私への手紙に熱心に愛を綴ってくれていたのよ。それにこの制服だって、ギルベルト様が贈ってくれて、手紙には愛を込めてって書かれていたわ」


 婚約が決まってから、今日までメイシャルがギルベルトと会う機会はなかったが、月に一回程度のペースで手紙のやりとりはしていた。

 ギルベルトはいつも丁寧な字で、最近の出来事や学んだこと、好きなものについてなど、ありきたりな内容であったが、最後には「早くメイシャルに会いたい、愛を込めて」と締めくくる手紙を送ってくれていた。


 半年前、父王であるアマリア国王よりギルベルトの通うグリーンフォード学園への入学が決まったと聞いて、メイシャルはギルベルトに会えることを楽しみにしていた。


 グリーンフォード学園は十五歳から十八歳までの子女が通う三国一の名門校で、ギルベルトは一年前からグリーンフォード学園に通っていた。

 入学にはグリーンフォード卒の家庭教師もしくは他学園中等部からの推薦状が必要となる。平民でも通うことは可能だが、入学できるほどの学力を身につけるにはそれなりの財力が必要となるため、学園内は貴族の子女が多くなる。名門校のため、ファルダス王国以外の国からもメイシャルやシャルルのように、多くの王侯貴族の子女が留学している。

 


 メイシャルは入学が決まってすぐにギルベルトから学園の制服をプレゼントされた。同封の手紙には学園生活のアドバイスが書いてあり、メイシャルはギルベルトの心遣いに胸を打たれた。


 次第にメイシャルは会ったこともないギルベルトへ惹かれていき、優しく見目麗しい素敵な王子様と恋がしたいと期待に胸を躍らせた。



「メイシャル王女殿下ですよね」


 廊下の隅に立っていた男子生徒に声をかけられた。


「どなたでしょうか? ここでは身分は関係ないので、王女殿下という敬称はなしでお願いします」


 声をかけてきた男子生徒はハッとするような美少年だったが、それより王女殿下と呼ばれたことが気になった。

 学園内は身分に関係なくみな平等とされている。


「メイシャルさん。メイシャルさんはギルベルト王子と婚約されているんですよね?」


 彼は呼び名を変えて尋ねてきた。


「ええ、そうですけど」

「それなら、ギルベルト王子に早くご挨拶に行かれた方が良いですよ。彼は学園で男女ともに慕われていて大変人気な方ですから、早く行かないと囲まれてしまってご挨拶どころではなくなってしまいます」

「そうですね! わざわざお声がけいただきありがとうございます。早速行ってまいります。シャルル、私行ってくる!」

「あー、はいはい。行ってこい」


 シャルルはメイシャルのギルベルトに対する熱に若干呆れながら軽く手を振った。


 メイシャルは早く挨拶をしなければと二年生のフロアでギルベルトを探した。



「すみません、ギルベルト様はどちらかご存知ですか?」


 メイシャルは通りすがりの男子学生に声をかけた。


「ああ、ギルベルト様ならいつもの教科資料室じゃないかな」

「教科資料室ですね。わかりました、行ってみます」

「えっ、あ、取り込み中だろうから行かな──」


 まだ男子学生は話し中だったが、早くギルベルトに会いたくて気が急いていたメイシャルはすぐに教科資料室へ向かった。



 コンコンコンとノックをしてから教科資料室の扉を開けた。

 何やら話し声が聞こえるから、どうしようかと思いつつも様子を窺うように声をかけてみた。



「失礼しますー。ギルベルト様、いらっしゃいますかー?」



 大きすぎない声で中にいる人へ声をかけてみたが返事がない。

 メイシャルがゆっくりと中へ入ってみると何やら話し声が聞こえる。


 いや、違う。話し声というよりも喘ぎ声と言った方が正しい。

 静かな部屋に響く声。そして聞いたこともないような卑猥な音が聞こえてくる。


 背中から嫌な汗が流れる。見てはいけない、奥へ進んではいけないと分かっていたのに、確認しなければという思いで足を進めてしまった。


「ギルベルトさまぁ……」


 嬌声を上げながら見知らぬ女が彼の名前を呼ぶ。


 奥には想像した銀灰色の髪の人物が、制服のシャツをはだけ、ズボンは前だけ寛げていた。相手の女子生徒も制服のブラウスをはだけてスカートは穿いたままで、二人は一つの椅子に座り抱き合っていた。


 何をしていたかなんて一目瞭然だった。

お読みいただき、ありがとうございました。

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