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「お父さんの幼馴染の繁ちゃんの息子が、4月からN工に入学するから、出来たら下宿させてほしいと連絡がきたんだ。ちょうど拓海も東京へ行ったし、部屋が空いたからOK出そうかと思うんだが、どうだ?」
夕食時に、父親からの提案。
N工とは、N工業高校の略名だ。
ウチから自転車で20分というところだろうか。
あの学校は田舎中の田舎に建っている為、交通手段はバスか自転車。
最寄駅から歩こうとすると、それこそ30分以上かかる、辺鄙な場所なのだ。
まぁ、その学校まで自転車20分の場所にある我が家も、自動的に田舎って事なんだけど…。
でもでも、ウチは市街地寄りだし!
最近は田畑が無くなってマンションや新築建ち始めたし!
「別にどっちでもいいけど…。お母さんと朱莉は?」
我関せずみたいなスタンスで、お母さん達がいいなら私は別にいいけどね、みたいな感じで話してみる。
でも内心、ちょっと興奮ぎみなのは内緒。
「繁ちゃんって確か引っ越しして隣の県に行ったんじゃなかったかしら?それなのにわざわざN工?」
「あぁ、どうやらサッカー目的らしいよ。」
「そうなのね。N工強いものね。」
N工サッカー部、キター!
Nサッカー部は、全国高校サッカー選手権大会出場常連。
4年前には優勝したし。
かっこいい人だったらどうしよう。
恋愛に発展したらどうしよう。
ウチでエッチな事になったらどうしよう。
妄想が止まらない。
「朱莉は楽しみ〜!一緒にゲームしてくれるといいなぁ。」
小学3年生の朱莉は、遊んでくれるかどうかが重要のようだ。
お兄ちゃんの延長で考えているみたい。
「じゃあ、OKって返事するけどいいな?」
お父さんからの再確認に、全員で頷く。
というわけで、ウチに下宿人が来る事が決定しました。