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献身☆幼女マルゴレッタちゃん奮闘す!!  作者: おにぎり(株)
三章
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おいでませ!アルディオスの森へ!!マルゴレッタちゃんとルカちゃん編2

「……ルカちゃんにとって、その人は、とても大切な人だったんでちね。ルカちゃんの痛みが凄く伝わってくるでちよ……」


 強烈な一発を顔面に喰らったマルゴレッタ。

 ルカによって殴られた事で、形のいい鼻が、痛々しく歪み、鼻腔から止めどなく血が流れている。

 痛みで蹲る事もなければ、悲鳴や泣き言すらも言わない。

 憎悪や恨みといった感情すらも感じさせない。

 ただ、純粋で真っ直ぐに自身を見つめる幼女の姿に、キキは後退り喉を鳴らした。


「ルカちゃんの大切な人は、わたちが絶対、救ってみせるでち。だから、そんな辛そうな顔をしちゃダメなんでちよ〜」


 鼻血を垂らしながら、ニカっと微笑む幼女に、ルカは瞳を丸くした。

 あの女(人形狂い)を見た瞬間、底知れない悪意と恐怖しか感じられなかった筈なのに、何故か真逆の印象を目の前の幼女から感じてしまっている。


「君は……誰だだだぁあああ!? 折れる! 腕が折れちゃうよ!?」

「や、やかましい! お前は、なんちゅう事をしでかすんじゃ!? この馬鹿者がぁ!!」

「相手は神の御子様なんっすよ!? その玉体に傷を付けるなんて、正気の沙汰じゃないっす!」


 青ざめたラムザとキキに、すかさず両腕を絞り上げられ、ルカの関節からギシギシと音が鳴る。


「あばばっ!? そんなにルカちゃんの腕を曲げたら、折れちゃうでち!」


 そう言うと、幼女は自身の鼻に手を触れた。

 小さな虹色の光が僅かに明滅すると、まるで、手品のように折れ曲がった鼻が元へと戻る。


「ほ〜らでち。わたちの力があれば、こんなのへっちゃらなんでちよ? だから、ルカちゃんを放して上げて欲しいんでち〜」

「ダメっす! この狂犬を野放しにしたら、またマルゴレッタちゃんに襲いかかるっすよ!」

「う〜〜。わたちなら大丈夫なんでちっ!」


 マルゴレッタは、抑え付けられているルカにガバッと抱きついた。


「わたち達は、最悪な出会い方をしたかもしれないでち。でも、ルカちゃんを一目見てビビっときたでちよ! きっと、わたち達は、素敵なお友達になれる予感がするんでち」


 突然の抱擁と無垢な笑顔でルカの事を見上げる幼女。ふわりと漂う日向のような匂いと生きた温もりは、既に少女の乱れた感情を解きほぐすには十分なものだった。

 心地よいとさえ思えるマルゴレッタの雰囲気に、ルカは表情を緩ませる。


「素敵なお友達……。君は……不思議な女の子だね」

「えへへっ。良く言われるんでち」


 頭が冷えたルカは、改めてマルゴレッタの顔を見つめ直した。

 思い違いとはいえ、こんな可憐な幼い子を殴ってしまったのだ。

 自分がとんでもない暴挙を起こした事実と、仲間達の差し込むような視線に目を泳がせ、嫌な汗が止めどなく滲みだす。

 

 居た堪れなくなったルカは、見惚れるような姿勢のジャンピング土下座を敢行した。


 「ほんっとうに、殴ったりしてごめんなさいっっ!!」


 土下座するルカの前に、鬼の形相をしたキキとラムザが、拳を振り上げた。

 洞窟内に、痛々しい二つの拳骨の音が響き渡った。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「彼方此方と随分散らかしたもんだにゃ〜ペロリア。久しぶりの団体さんだからって、はっちゃけ過ぎにゃろ?」


 無数に散らばる人の亡骸と歪な人形。

 そんな有様を事もなげに見渡しながら、猫耳、猫尻尾メイドのシロネが佇んでいた。

 彼女の足元には、ペロリアが封じられた黒玉が震えいる。


「おまけに、拘束魔法で捕らわれてるなんてにゃ〜」


 シロネの漏れ出る凶悪な魔力によって、空気が淀み、周りが蜃気楼の如く霞だした。

 人格が入れ替わったかのように、彼女の表情と口調が一変する。


「無様だ。オリヴィエ様に仕える同士として見るに耐えない光景だよ……。とっとと出て来い。貴様の薄気味悪い顔をズタズタにしてから殺してやる」


 シロネの言葉に共鳴するかのように、黒玉は一気に肥大化すると、小気味の良い音と共に破裂した。

 そこには、幽鬼のように、ふらふらと体を揺り動かしながら、彼女を怨めしそうに睨め付けるペロリアがいた。


「私の愛らしいお嬢様のお顔をズタズタにする? ……笑えない冗談ねシロネ」

「ふっ、冗談に聞こえたのか?  前から、お嬢様とは似ても似つかない偽物を貼り付けて、悦に浸る真性の変態を誅してやろうと思っていた」

「…………殺すぞ」

「雑魚相手に、足元を掬われるような者が、私を殺せる訳無いだろ」


 ペロリア、シロネ、睨み合う二人の漏れ出す魔力が反発しあい、周りの景色が震えだした。

 まるで、限界まで積み上げられた積み木が、崩れさる事を待ち望むかのように、互いの殺意が重なっていく。


 だが、積み木は崩れる事なく、直前で均衡を保つ事になる。


「にゃふふふふ。良い殺意のノリにゃ。現役を退いてから鈍ったんじゃないかと心配したにゃろ?」

「……ふん。相手をした奴等の中に、手練れがいたのよ。少し愉しみ過ぎて、油断したわ」


 強張った表情を綻ばせ、昂る殺意を霧散させる二人。

 彼女等にとって、今さっきまで起こったいざこざなど、ただの挨拶、じゃれ合いでしかなかった。


「ふ〜〜ん。手練れにゃぁ〜。まぁ、取り敢えず摘み食いは終わりにするにゃぞ。アイカが待ちくたびれてるからにゃ」

「ねぇ、ここにある死体を素材にしたいんだけど?」

「馬鹿言うにゃ! 宴はもう始まるにゃ! ビッグウェーブは、すぐそこまで来てるにゃよ!!」


 シロネは、目を爛々と輝かせ、辛抱堪らないといった感じでペロリアの腕を掴んだ。

 犬歯を剥き出しにし、残虐な性を臆面もなく晒す。


「もう、我慢出来そうにないんだよ……。私も早く殺しを愉しみたいんだ」

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