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献身☆幼女マルゴレッタちゃん奮闘す!!  作者: おにぎり(株)
一章
1/31

マルゴレッタちゃんと人間ロウソク

 "アルディオスの森"

 広大で豊かな自然が溢れる何の変哲も無いこの森には、世界中の国々に一方的に発せられたある掟があった。


『どの様な国家、勢力であってもアルディオスの地に、決っして足を踏み入れてはならない。禁、破る者があるならば、死神達が凄惨な死をもたらすだろう』と


 だが、その掟が守られた事は無かった。

 其れは、国家の秩序、種族の思惑、人としての純粋な欲望が絡み合った故の事情があったからだ。


 アルディオスの森が騒めく。

 此度も招かざる侵入者達に警鐘を知らせるかの様に――






「は、早くこの森から出るんでち! でないと、おぢさん達に大変な事が起こるんでち!!」


 可愛らしいフリルの付いた質の良いドレスを着た金髪の幼女が、少し舌足らずな言葉で装備の整った五十人程の屈強な男達に警告を促した。


「な、なんだぁ? このお嬢ちゃんは」


「この森に迷い込んだ貴族の娘……って、あり得ないよな?」


「無い……」


「か、可愛い……」


 薮の中から突如、男達の前に現れた幼女に男達は困惑し、彼女の次の言葉に一気に警戒を強めた。


「おぢさん達は、わたちの家族に掛かった懸賞金が目当てのハンターさんでちよね? おぢさん達の実力じゃ、絶対屋敷まで到達出来ないでち……」


「こ、この餓鬼、アルディオスに名を連ねる者か!!?」


 一斉に各々の獲物を持ち、幼女に襲い掛かろうとした男達の耳にバキバキと破壊音が鳴り響く。


「あばばばばばばっ。気付かれたでちよ! 不味いでち! おぢさん達、早く逃げるんでちーー!!」


 あたふたと動き回る幼女。

 男達は段々と近づく異様な破壊音に、喉を鳴らした。


「お嬢様あああああああああああああああああぁぁっ!!!」


 そんな叫びと共に木々を薙ぎ倒し、幼女目掛けて一直線に爆走するメイドが現れる。



「よりにもよって、アイカちゃんが現れたでち……。お終いだぁ……でち」


 頭を抱える幼女を尻目に、真っ赤な髪を纏め、メイド服の上からでも判るごっくんボディの女が幼女に抱き付いた。


「ぐべっ!? く、ぐるじぃ……。熱ッ!! や、止めるでち!!」


 幼女は抵抗の声をあげた。

 赤髪の女に力一杯の抱擁と、煙が出るのではないかと思われる程に頰と頰を高速で擦り合わされたからだ。


「お嬢様!! お屋敷から外出する時は、必ずこのアイカにお声をお掛けくださいと申した筈です! 急に居なくなって、屋敷中のみんなが心配したんですからね!」


「ごめんなさいでち……。わたち、このおぢさん達を助けたくて……」


 しょげる幼女に、アイカは男達を一瞥すると小さく舌打ちをした。


「チッ……。また、懸賞金き目当ての侵入者ですか。懲りもせずに次から次へと……」


「ア、アイカちゃん、お願いでち!この人達を見逃してあげて欲しいでち!!」


 幼女は大きな瞳を潤ませ懇願する。

 この森に立ち入った者達が、どの様な結末を迎えてしまうのか理解しているからだ。


「あぁ……。お嬢様、そのような悲しいお顔をするのはお止め下さいませ。この者達は、禁を破った咎人なのです。相応の償いを受けさせなければアルディオスの面目が立ちません」


「う〜〜。そこを何とか……。わたちが出来る事なら何でもするでち……」


「なん……でも……で御座いますか?」


 アイカは、食い下がる幼女を舐る様な瞳で見据えると、美しい所作でお辞儀をした。


「では、今晩の"お嬢様との添い寝権"を頂きたく」


 幼女はたじろぐ。


「こ、今晩はワフゥちゃんの番でち……」


「お嬢様! 今からこの場に居る屈強な戦士全員を、一瞬で灰塵にしてご覧にみせましょうか!?」


 瞳孔を此れでもかと見開き、やや脅し気味に迫るアイカに幼女は焦ったように了承を告げる。


「わ、分かったでち! 何とかするでち!! だから灰塵にするとか怖い事言わないで欲しいでち!!」


「ふふっ。其れは重畳。貴方達、良かったですね。お優しいお嬢様に免じて、この地に踏み入った事は不問と致します!」


 幼女とアイカのやり取りに、唖然と立ち尽くす五十人程のハンター達の頭部に黒い煙が燻り始めた。

 冷淡な声が、男達に恐怖心を植え付ける。


「ただし……。お前等如き虫けらが、お嬢様のお情けを頂くなんて許せる訳がない……羨まけしからん!!」


 アイカの瞳に魔力が篭ると、五十人のハンター達の頭部が一斉に燃え上がった。


「「「ぎゃあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」


 絶叫を上げ、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑い、のたうち回る男達に幼女もガクブルと震え絶叫を上げた。


「ぎゃばーーーーーーっ!!? 人間ロウソクでち!? いとも容易く行われるエゲツない行為でち!? アイカちゃん、魔眼を使うのをやめるでち!! は、話が違うでち!!」


「違いません。私は、この地に踏み入った事を不問にすると申したのです。あんなクズ共が、お嬢様のお慈悲を頂くなど、神が許しても私は許しません!」


「酷いでち……。純情な幼女の心を弄んだでち……」


 アイカは幼女の小さな手を握り、妖しく微笑む。


「ふふっ。不貞腐れたお顔も愛らしい。さぁ、お屋敷で皆がお嬢様の心配をしております。帰りましょう」


 手を引かれ後ろを振り向く幼女は、アイカに気付かれぬように小さく呟く。

 頭部を燃やされピクリとも動かなくなった五十人の亡骸に向けた"再生の言葉"を――






 "アルディオスの森"、其処は決っして立ち入ってはならぬ禁断の森。

 禁を破り、その地に足を踏み入る者あらば死神達が嬉々として命を刈り取っていくだろう。


 だが、そんな無慈悲な死を受ける侵入者達を救うべく、小さな幼女が立ち上がる。

 心優しき幼女の名はマルゴレッタ=アルディオス。

 世界中の国家、勢力から付け狙われる最強最悪のアルディオス家が生んだ最後の良心。


 いかな理由があったとしても一片の慈悲も無く容易く人を殺してしまう、いろんな意味で頭のネジが緩んだ愛すべき家族達から、侵入者を守るべく奮闘する献身幼女の物語――

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