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1話 壊れる日常と招かれる絶望

   「あー!だるかったー!」


 俺、濱崎遊斗(はまざきゆうと)は学校が終わった帰り道にそうこぼした。


 「だよなー。田辺の日本史の授業とか、マジ眠かったわー」


 俺の愚痴に狩屋竜流(かりやたつる)は同意する。


 「田辺、あいつ絶対、ラリホー使ってるだろ」

 「「わかるー!!」」


 俺と竜流は会話に参加してきた目つきの鋭く、低身長の男、前口の言葉に同意する。


 「てか、かっちゃん、授業中寝てただろ?」


 俺は森本勝平(もりもとかっぺい)——かっちゃんにそう言う。だが、かっちゃんはニヤリと笑い言う。


「違うって。俺は睡眠学習してたの」


「それは居眠りじゃろうが」


 後ろから田口翔平(たぐちしょうへい)ことグッチーが言う。グッチーは中学生の頃、柔道部の主将をしていたらしく、体格が良い。まさに頼れる兄貴ってやつだ。


「そういうグッチーも田辺の授業中、早弁してなかったか?おにぎり喰ってただろ」


 竜流がグッチーの方を振り返り、ニヤニヤしながら言う。


「腹が減ったからしょうがないじゃろう」


 グッチーはけろりとして言う。どいつもこいつもまともに授業受けてねえ。…俺も寝てたけど。


「みんな、適当すぎじゃない?来年は大学受験なのに大丈夫なの?」


 俺たち、馬鹿グループの中で唯一のまともな奴、前野京子(まえのきょうこ)が言う。艶のある紫色の髪をしたポニーテールの少女だ。


「大学受験か…。お前ら、もう志望校とか考えてる?」


 俺は、京子以外のやつらに向かって聞く。


「「「全く考えてない」」」


 3人は声をそろえて言う。こいつら…。


「そういう遊斗は考えてたりする?」


 京子が後ろから俺の顔を覗き込むように言う。


「俺か?んー…家から通える大学がいいなあ。できれば地元の大学に行きたい」

「じゃあ…私も地元の大学に通おうかな…?」

「え?何で?京子は成績いいんだから違うとこ行った方がいいよ」


 俺がそう言うと京子は何故かショックを受けたような表情をして、頬を膨らませる。そして軽くこちらをにらんでくる。なんでだろう?

ここらの大学はあまり偏差値高くないから、もっと上を目指した方が京子のためになるのに。わからん。俺は助けを求めるように竜流達の方を向くと、「わかってねえなあ、こいつは」とでも言いたそうに天を仰いでいた。なんでだ。意味が分からん。


「まあ、大学の話は置いといてさ。今日もみんなでゲーセンに行かね?」


 しばらくして、かっちゃんが助け舟を出す。ナイス、かっちゃん。やるじゃねえか。


「そうだな。行こうか。京子も行くだろ?」

「…うん。行くよ」


 俺が京子に聞くと京子は睨むのをやめ、あきらめたようにため息をつく。…結局、なんで機嫌が悪くなったのかはよくわからん。


「よし!じゃあ、行こうぜ!」


 竜流が言い、俺達は帰り道の途中にあるゲーセンに向かおうと足を進めようとする。


 その時だった。突然、空間がゆがみだす。


「な、何だ!?」


 目の前の電柱がぐにゃりと曲がり、空を仰ぐとどこからともなく闇が広がりだす。そして、足元が光りだす。


「どうなってるの!?これ!」


 京子が叫ぶように言う。周りのやつらを見るとみんな同じように訳が分からないといった表情をしている。完全にパニック状態だ。


「落ち着けい!お前ら!」


 グッチーが大声でそう叫ぶ。だが、その表情はほかのみんなと同じものだった。そして、まぶしい光に包まれ———目の前が真っ暗になる。


 やがて、暗闇は消え、風景が見えてくる。だが、元居た場所じゃない。何というか…廃村?壊れた家がいくつか視界に入る。しかも、その家のどれもが木造やら藁?…大昔にありそうな家。そのどれもが壊れかけである。辺りは暗いが、まだ十分周りを確認できる明るさではある。


「…どこなの?…ここ?」


 隣を見ると京子がいた。よかった。周りを見渡すと他にも知った顔が呆然として周りの光景を見ている。どうやら、全員いるようだ。ここがどこだかわからないが、とりあえず3人とも無事でよかった。


 …3人?俺ははっとして、みんなの顔を見る。グッチー、かっちゃん、京子。…竜流がいない。


「竜流はどこだよ?」


 俺は震える声で言う。他の3人がはっとした風に周りを見渡す。


「そういえば、いない…!」

「さっきまで一緒にいたはずだろ?どこに行ったんだ!?」

「それに、ここはどこなんだよ!?」


 再び、パニックになる。俺たちが途方に暮れていると、突如足音が聞こえてくる。すぐに足音は止まり、俺は振り向く。

そこにいたのは竜流ではなく、一人の少女だった。


 華奢な身体をした少女だった。とても細い腕。雪のように白い肌。ガラスのように透き通った赤い瞳をし、とてもきれいな長い銀髪の少女だった。少女は笑顔を浮かべている。けれど、目は笑っていない。冷たい目、というわけでもない。

ただ、何も感情を映していない。そんな目だった。けれど、どこか無垢な子供を感じさせる、そんな不思議な目だった。俺は思わず、少女に見とれてしまった。少女と目が合う。俺は慌てて目をそらす。

そして、少女は俺たち一人一人の顔を見渡し、まっすぐこちらを見て、告げる。


「みなさんには今からこのゲームのキャラクターを演じてもらいます。拒否権はありません」
















 

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