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紅き月の下で  作者: ユウキ
激突編
7/7

二人が求めたモノ

 永遠に続くとも感じられる二人の戦い。長時間に及ぶ戦いの為にお互いの疲労は限界をとうに超えていた。

 それに加えお互いの必殺の一撃を二人して、まともに食らっているのだ。お互い気力だけで、両の足を地に付けていた。

 そして太陽が山から顔を出し一筋の光が漏れ出した頃、この激戦は唐突に終局を迎える。

 それも第三者の介入によって……。



「隊長っ!」


 剣士の部下の声が聞こえて来た。

 唐突に現れたのは、別の賞金稼ぎを倒し、王子を追い掛けて行った傭兵だ。


「ハァハァハァハァ……」

「はぁはぁはぁはぁ……」


 二人の息は切れ切れ。声をする方に振り返らない。相手から眼を反らそうとしない。

 声が聞こえなかったわけではない。肉体的にも精神的にもボロボロの状態で即座に反応する余裕すら残っていないのだ。

 部下の剣士も、その状況を見てゴクリと周りにも聞こえるのではないかと思う程、大きな音で唾を飲み込み冷や汗を流す。

 緊迫した空気を読み取ったのだ。この二人はあれからずっと(・・・・・・・)戦っていたのかと感じ、二人を見て唖然とした。


「……どうした?」


 今まで止まっていた時間が流れるかのように剣士が口を開く。部下の剣士が現れてから数分が流れた後だ。


「は……はっ!」


 部下の剣士が我に帰る。


「第一王子の確保に成功。第二王子の賞金首が取り下げになりました」


 簡素に報告。


「……だってよ。どうする? まだ続けるか? ……つまんねぇ幕引きだな」


 剣士が賞金稼ぎにそう声を掛けた。

 賞金稼ぎは無言で、剣を鞘に収め、剣士に背を向けて歩き始めた。

 もう戦う意思はない……理由がなくなったからだ。


「俺はホリン! ……お前さんの名を聞かせて貰おう」


 剣士が初めて名を名乗る。相手の実力を認める敬意の表れなのだ。

 彼は敵に向かって自ら名を名乗る事は今まで無かった。そして、これからもないだろう。勿論、名前を聞くなんてもっての外。

 最初で最後の言葉なのだ。生涯でただ一人の“ライバル”と言える存在に――。


 そんな彼の背中に日が昇る。完全に山から飛び出て来たのだ。夜明けを迎えた光景。

 戦いに戦い抜いた戦士達を象徴するかのように眩しく輝く。

 傍にいた部下はこう感じた。この人と互角に殺り合う者等いないだろう……この目の前の背を向けてる男を除いて……と。

 そう目の前で死闘を繰り広げたのに何も無かったように悠然と歩く後ろ姿を見て、心からそう感じた。


「……セフィロス。俺の名はゼフィロスだ」


 振り返りもせず、歩も止めず名を名乗った賞金稼ぎ。だが賞金稼ぎも同じく相手への敬意を表して力強く口にしていた。


「また会おうな。絶対に会おう」


 剣士にそう言われ、賞金稼ぎは、ただ一度だけ振り返る。その口元は笑みの形を作ってる。口元が緩んだ程度ではなく完全に笑ていた。


「……ああ」


 再会の期待を込めて、ただ一言だけ呟いて遠くの彼方に消えた。

 剣士はその姿をいつまでもいつまでも眺めていた……。








 ―――――


 この三年後、後に第二次暗黒魔王戦争と呼ばれる戦が勃発した。

 その直後、ホリンはその当時の敵の罠に(はま)り、タルミッタ王に助けられる。

 その恩を返す為にしばらくタルミッタ王家に仕えていたが、それが“彼”と出逢うきっかけになった。

 更に三年後、この戦は終局を迎えた……。


 そして、終局の半年前にホリンとゼフィロスは再会を果たす。



 戦争……それは果てる事なく欲望が作り出す哀しき因果……。

 この再会は、哀しき因果の中に零れた一滴の奇跡だったのかもしれない―――。



 大陸中に名を轟かせる二人が再会し、また共に剣を取り合う等、誰が予想していたであろう……。

 二人は“彼”を君主と認め、“彼”に剣を捧げる事になったのだ。



 そう考えると“彼”の存在は大きなものと言えよう。

 二人が求めるモノ(・・)こそ、後に星々の解放者スターライト・リベレイターと呼ばれる“彼”だった。

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