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其の39「”俺の矢”VS"アタシの弓"」

本日二回目の投稿になります。


矢車砲攻略編(後編)。

そしてアレストツール第五の装備お披露目です。

「矢車砲を自爆させる、って……

 そんなコトして大丈夫なのか!?」


 相も変わらず走る足を止めないまま、皐月は弥生に尋ねる。


 質問の意図は、”銃撃手(ボス)を殺してしまわないか”という懸念。


「”そこも計算済みだ。3Dスキャンの構造解析で見れば、幸いなコトに砲台部分が中々頑丈みたいだからな。


 爆発という表現をしたが別に破片が派手に吹っ飛ぶような爆発は起きない。


 せいぜいひしゃげてヒビが入るのが関の山だ。”」


 弥生はその懸念に問題なしと返答。

 それを聞き届けた皐月の表情に心なしか安堵の色が浮かぶ。


「”さて、そう言ったワケで”(アロー)”を使ってもらうワケだが、皐月、もう一つ確認しておくぞ。”」


 ホッとした皐月の耳に、弥生の真面目な声が再び届く。


「” ”(アロー)”を使ってもらうが、それはあくまでもあの矢車砲を破壊するためだ。間違ってもそれであのボスは狙うなよ。”」


 そうだった、と皐月はハッと気づく。


「”あの男、今は興奮状態にあって痛みやダメージを忘れてるだけだろうが、本来はもうボロボロの身体だ。そこへ”(アロー)”の一撃は、とどめ技(エンドスキル)はおろか、通常攻撃でもキツいだろう。


 あの男への攻撃は絶対に”(ロッド)”で行なえ、いいな?”」


「了解!!!」


 皐月は了承し、行動を開始する。

 急ブレーキを掛け、その身を反転させると、皐月は今来た道を銛を避けて引き返し始めた。 


 

「”さあ! 確認したかったコトはこれで全部だ!!

 皐月! バシッと決めてくれよ!!!”」



「おう!!!!!」



 (ふた)コース分の銛の道が出来、謂わば銛の生垣がより厚くなった状態。皐月は生垣を盾に真っ直ぐ駆けるが、頭は見えている。


 皐月を狙うボスから見れば、後頭部を見せながら遠くへ去っていった的が、こちらに顔を向けながら近づいてくる構図だった。


 みすみす横切らせて、また去られるわけにはいかない。


 ”殺しはしない”と宣言したコトは頭から完全に消え失せており、ボスは発射ボタンが着いているハンドルを握る手により力を込め、皐月の頭を狙う。



 皐月は走りながらアレストチェンジャーを取りだす。


「……ふっ!!!」


 と、ここで皐月はほんの少し跳躍すると、なんとスライディングした。


「むっ!!!!???」


 ボスからすれば迫ってきていた標的の頭が突然視界から消えた形だった。


 が、銛の生垣の隙間から、動く皐月の姿はなんとか見え、その影目掛け銛を撃ち込んでいく。


 キンキンキン! という甲高い金属音が鳴り響く。銛の生垣に遮られ、矢車砲から発射される銛が皐月に届かずに止まってしまっていた。


「おいで!! ”(アロー)”!!!」


 スライディングしながら進む皐月が召喚のコールを行なう。


 チェンジャーの側面、起動レバーを親指の腹で倒す。ガシャン! という効果音ののち、音声ガイダンスが響き渡る。

 


     「――”Tool choice!!


       [Arrest Arrow],




      ……come on"!!!!」




 

「……ふっ!!!!」


 アレストチェンジャーから召喚のガイダンス音声が流れ始めたとき、皐月はアレストロッドを生垣の向こう側に放り投げた。


 

「……惑わされんぞ!! 小娘ええええ!!!」



 突然、銛の生垣の向こう側から何かが飛び出したワケだが、矢車砲を駆るボスはすぐにそれを囮と判断、アレストロッドに見向きもせずにその存在を無視し、微かに見える移動する皐月の影を追って生垣に銛を射ち続ける。



 尚、無視されたアレストロッドは空中で縦方向にクルクルと回りながらゆっくりと降下。やがて地面に突き刺さった。









 このとき、ボスがこのアレストロッドを僅かにでも気に掛けていたら、勝敗の行方に影響はあったのだろうか。










 

 スライディングで地を滑りながら進む皐月の左手にツールが実体を持って現れる。


 それは、円を半分に切って形作ったような半円状の弓。カーブを描く部分と、持ち手=グリップパーツを含んだ直線部分で構成された遠距離射撃装備。


 

    「”アレストアロー”!!!


     さあ行くよ!!!!」



 皐月は空いた右手でブレーキを掛けると、そのまま、より深くその場にしゃがみこむ。



「(………来る!!!)」



 銛の生垣の隙間を縫って辛うじて見えていた皐月の動く影が止まったのに気づいたボスは、皐月が勝負に打ってくると悟る。


 矢車砲の発射ボタンから指を離し、射撃を一旦止めるボス。


「丸見えだ小娘!!! どんな策を労そうとも、俺と矢車相手じゃ意味はない!!」


 

 ボスがそう叫んだ直後、銛の生垣の向こうから何かが飛び出してくる。



 高く跳躍した皐月だった。


 

 深夜の空を照らす丸い月を背に、皐月は天高く舞い上がる。


 

「その体勢じゃ避けられまい!! 蜂の巣だ!!」


  

 ガシャン!! と音をたてながら、ボスは矢車砲の砲頭をさらに上に傾ける。

 


「避ける必要なんかないさ……」



  

 皐月が空中で構えに入る。


 


 接近戦が得意な皐月は、以前アシスタントの卯月が指摘した通り遠距離からの射撃の命中率に自信は持っていない。


 まあ百発百中とまではいかなくとも、言うほど命中率は低くはないのだが、狙いに必ず当てるか、と言えばそうではない。


 動きながらの射撃となれば尚、皐月の射撃装備の攻撃での命中率は下がる。ましてや現状、空を舞いながら、矢車砲の発射口というさほど大きくない的を狙わなくてはならない。



「……必要なのは気合いと根性―――」



 皐月は左手に”(アロー)”のグリップを握り、右手は”(アロー)”の半円部両端から伸びる弦を引き絞り、矢を放つ姿勢で構えに入る。


 が、肝心の矢が見当たらない。



「俺の勝ちだあああああああ!!!!」



 ボスが雄叫びと共に発射ボタンに指を掛け、押す。


 ガガガガガガガ!!!! と甲高い音と共に無数の”()”が皐月目掛け放たれた。



 

 

 皐月はあえて先にボスに撃たせた。狙いをつけなければならないこの場面、皐月は確実に矢車砲の発射口を狙うために無謀とも言えるタイミングを狙った。


 それは自身を狙って一直線に銛の弾丸が迫ってくるこのタイミング。


 宙を飛び、皐月へ向かい一直線に向かってくる銛の矢たち。


 矢は一直線に皐月へ向かってくるのだ。

 というコトは、矢の先にあるのは……



「――あとはやる気で、なせばなる!!」



 



 ()が皐月目掛け迫る中、皐月は叫び、引き絞った弦を右手から解き放った。


 







    「シュートォ!!!!!」









 弦が戻ると同時に、左手にて保持するアレストアローの本体、半円状の部分に付いている筒状のパーツから、光が発射される。


 光学兵器、ビームである。


 ビームは皐月目掛け射出された銛を巻き込みつつ、その威力を衰えさせずに直進していく。


 


 そう、狙いを確実にするため、皐月は発射され皐月に迫る銛の雨の軌道そのままにまっすぐビームを放ったのである。


 自身の射撃命中率の低さを補い、確実に発射口(まと)にビームを当てるために。


 アレストアローのビームの威力を知っていて、自身に迫る無数の銛の矢を確実に打ち消せる、と解っていても、一歩間違えれば銛による串刺し、針ネズミの身になるところだ。


 皐月は自身の命中率の低さを度胸でカバーしたのであった。


 

「くっ!!?」



 やがてビームは矢車砲の発射口に到達、そのまま内部にも突き進み、そこで突き抜けるコトなく威力を留めた。


 矢車砲の横でハンドルを握るボスからすれば、ヒーローが何か叫んだと同時に、自身に眩しい光が迫ったような状態だ。


 とっさに空いた方の手で顔を被い、光から目を庇った。



 そしてボンッ!! という音ののちに矢車砲は膨張。砲口を形成していた細目の金属の筒の束は、煙を吹きながら、ヒビが入ったり、曲がったりして見るに耐えないスクラップと化した。


 

「……な………に?」



 光の放つ眩しさに眼を背けていたボスは、光が収まると、矢車砲に眼をやり、間抜けな声をあげた。



 あっという間の出来事である。

 ボスの方が先に撃ったのに、後から撃った皐月の一撃で戦局は逆転。


 たった一撃の()で無数の()の攻撃に討ち勝ち、さらに切り札の矢車砲を破壊したのだった。


 

 ボスの右手の中には爆破の衝撃で折れた発射ボタンのついたハンドルが残っていた。



 呆然とそのハンドルを見ていたボスだったが、やがてその手が震えだし、手の中からハンドルが地面に落ちる。


 カランカラン……と虚しい音をたてながら、ハンドルは転がっていった。



「バカな……」



 ボスは膝から崩れ落ち、その場で四つん這いの姿勢になり、項垂れたのだった。















「……矢車党はもうダメですね。

 やはり逃げるしかありません。逃げるしか……」










 戦局を見守っていた影が、矢車砲を駆るボスの敗北を見届けると、その眼鏡を光らせながらボソリと呟いた。






今回はここまで。

次回、決着です。

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