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其の28「結論、どっちも悪い」

お待たせしました。

七つのツール、四つ目が登場します。

 天狗岳の麓、現在は廃れたとある神社。

 祀られた神の名も、もはや忘れられたこの神社の敷地内において、とある神の名を冠する者の大殺陣が行なわれていた。



 オエドタウンの守り神。

 ヒーロー、ダイアレスターの戦いである。



 ヒーロー=皐月の開始宣言をきっかけに、この場は大乱戦の様を体していた。


「相手は一人だ!!

 俺たちに喧嘩を売った小娘に、目に物見せてやれ!!!」


 大声で檄を飛ばすのはちょんまげ風に後ろ髪をちょこん、と結わえた髪型が特徴の矢車党のボス。


 ボスの檄が発破を掛けたのか、矢車党の構成員たちは、雄叫びを上げながら次々と皐月に襲いかかる。


 槍を持つもの、刀を持つもの……

 先の逃走劇で更科リンたちに得物を奪われた者は素手で皐月に向かって行く。


 数で勝る矢車党。

 ざっと二十人近い男たちが、ヒーローを討ち取ろうと彼女を囲い込み、次々と攻撃を仕掛ける。



 その状況下で徐々に焦りの色を見せ始める者がいた。





 矢車党のボスである。







「(どうなってやがる? なんであんな小娘一人討ち取れない!)」


 そう、皐月は人数の差を物ともしない立ち振舞いで、次々と自らに襲いかかる雑魚たちを蹴散らして行く。


 皐月に襲いかかる矢車党員たちは、得物を手にしてはいるが、鎧の類いを一切身に付けていない、ほぼほぼ生身の格好だ。


 変身した状態の、腕力も脚力もスーツの性能によって上昇した皐月にとっては敵ではない。


 真剣で襲いかかる者に対峙した際は、左腕部のテクター部で刀の刃を受け、動きを止めてしまった相手の腹にパンチを叩き込む。


 槍を振り回して特攻して来た者の素早い棍捌きは、素早さが増したスーツの性能でなんなくかわしきり、かわした足取りのまま、敵の背後に眼にも止まらぬ早さで回り込むと、相手のうなじに手刀を叩き込み、気絶させる。


 短剣を両手に携えて突っ込んできた両刀使いには、振るってきた相手の手首を正確に手刀で叩き、左右の手の得物を手離してしまい痛さで顔をしかめたその顔面に遠慮なくパンチを叩き込んで吹っ飛ばす……


 


 身体機能が向上しているため、生身の雑魚が皐月に一撃を貰えばひとたまりもなく、相手取った者は間違いなく気絶していた。




「……ったく、キリがないね。」


 そうぼやく皐月ではあったが、息もあがっておらず、眉を潜めはしているが、表情に余裕を見せていた。


 ふと足元で身を縮こませて固まっているアヤメを見る皐月。

 アヤメはしゃがみこみ、頭に両手を付け、顔を強張らせながら辺りの様子を伺っていた。


「アヤメ! 大丈夫かい!?」

「な! なんとか!!」


 皐月の問い掛けに、アヤメは声を上げ答える。

 戦場の空気は慣れない者には重く感じさせ、息苦しさを感じさせる。まして何人もの男が自分達を狙い攻撃を仕掛けてきているのだ。当然のコトながら戦闘経験など一切ないアヤメには自身に向かってくる殺気も相まって、この空気がしんどい物のはずだ。気絶しないだけ褒めたいものである。


「とはいえラチがあかないねえ。」


 アヤメに気を配りつつ、皐月は自分達を囲む男たちに眼をやる。


 八人ほどをノしたが、まだ同じくらいの人数が残っていた。半数近くを相手取りまだ余裕を見せる皐月の実力を警戒して、残りの半数は機を窺い、勢いで襲ってこなくなったのだ。


「(……このまま膠着状態を続けて、笹野さんが来るまで時間稼ぎしてもいいんだが……)」


 多くの時間を費やすのは皐月にとっては好都合、むしろ望むところなのだが……


「(あまり長引かせると、アヤメが危ういかもな。)」


 あまり緊張状態が続くとアヤメが気絶する恐れがある。

 殺陣の最中に倒れられると、守りながら戦うハードルがより高くなる。




 アヤメの体調も気遣い、皐月は雑魚たちを一気に殲滅する短期決戦に切り替えるコトにした。



 ふと皐月の頭にアヤメの言葉がよぎる。



  

”運命の出会い、などと言うものは待っているだけでは決して訪れないのです!!

 自らの手で掴みとらなければ!!!


 まずはたった一人を捕まえ手に入れるためにも!

 

 多くの男を手元に引き寄せ!!

 その中から選ぶのです!!!”



”なるほど、チャンスは待っているだけでは舞い込まず、まずは手元に集める努力から、か。”



 月見亭の食堂で、香里を交え三人で話したときのアヤメの言葉だ。


「……多くを手元に引き寄せ、か。」


 皐月は一言呟き、思わず笑みをこぼす。



「アヤメがせっかく見てるんだ。

 ……アヤメの理論で行ってみようか!!」


 皐月は叫ぶと、アレストチェンジャーを取りだす。


 ツールの召喚だ。




「おいで! ”(クロウ)”!!」




 選んだのはアレストクロウ。

 アンカーロープで雑魚どもをまとめて縛り上げ、一網打尽にする戦略だ。

 

 右手親指の腹で、側面のスイッチを倒す。


 ガシャン! という効果音が鳴り響き、続いて音声ガイダンスが響き渡った。













       「”Error”!!」













が、期待に反して、音声ガイダンスはいつもと違う声を上げ、それで終わってしまった。


「!? あれ!???」


 アレストクロウの出現を構えていた皐月。左腕を前に突きだし、クロウの召喚を待っていたが、それが不発に終わり、焦りの表情を浮かべる。


「なんだ! どうした!?」


 皐月は慌ててアレストチェンジャーをまじまじと見つめる。まさかの故障か、と疑ったとき、


「”バカ!! 皐月!!!”」


 イヤーパーツに声が響いた。研究所からモニタリングしている弥生の声だ。


「”アレストクロウは修理に預けただろう!!

 研究所(ここ)にあるんだから召喚出来るわけがないだろうが!!!”」


「げ!!!」


 そう、前回の戦いの折に刀身にダメージを受け、メンテナンスに出されていたアレストクロウ。弥生が昼間、爆睡していた理由である。


 修理自体は終えていたが、皐月が受け取りに行ってないし、誰も届けていないのだから、それは研究室の机の上に鎮座していた。


 アレストツールは勿論のコト、ダイアレスターの装備はジャケットからテクターまで、普段は粒子分解され、アレストチェンジャーの中に圧縮保存しているのだ。

 それを適宜、解凍、再構成して展開させているのである。


 早い話が”転送”しているわけじゃないので、研究所に置きっぱなしにしたままのアレストクロウが、アレストチェンジャー内に回収されてないまま戦闘に突入した現在(いま)、呼べないの道理なのである。



 結果、アレストチェンジャー内にはないアレストクロウを呼び出しても、エラーが出たにとどまった、という結論である。



「なんだ弥生!! 修理が終わっててもそれじゃ意味ないだろ!!

 睦月が来たときに一緒に持たせてくれればいいじゃないか!!」


 それは一理あった。睦月は二度研究所の弥生の元に顔を出していた。そのどちらかに彼にクロウを託すコトは出来たはずだ。


 が、一度目の訪問時は睦月への愚痴でそれを忘れ、二度目の折には睦月が足早に(というか気づけばいつのまにか)逃げ去ってしまっており、弥生も完全に失念してしまっていたのだった。


 

「”うっ!

 ……仕方ないだろ!! タイミングが合わなかったんだ!!

 それを言ったら、皐月が回収しにここに来るのを忘れたのだって問題だろ!!!”」


 痛いところを突かれ、弥生もたじろいだが、こちらもまあ正論だ。


「捜査で一刻を争う事態だったんだぞ!!

 そんな余裕なかっただろ!!!」


 まあ皐月のこの言い分は間違ってない。

 が、アレストクロウのコトを完璧に忘れていた皐月だ。昼にアレストチェンジャーで弥生に呼び掛けた後、思い出して自ら研究所に顔を出すコトも、あるいはその後睦月と話したあの場面で皐月が睦月に回収を願うことも可能ではあった。






 結論。失念していたどっちも悪い。







 さらに質が悪いのは、これが戦闘中であるという事実。



「隙だらけだぞ小娘え!!!!」



 ずっと余裕を見せ、優位に立っていたはずのヒーローが、突然勝手に動揺し始めたのだ。これは好機、と、回りで様子を窺っていた雑魚の何人かが、皐月に襲いかかり始めた。



「げ!!」



 通信機の向こうの弥生に気を取られていた皐月は、慌てて男が振るってきたナタをかわし、勢い余って皐月を通りすぎてしまった男の、晒された背中を思いっきり蹴飛ばす。



「どうすんだよ!! この振り上げた手は!!」

「”ボクが知るか!! 何をしたかったか知らないけど、別の手を考えろ!!!”」



 危うくナタを振るってきた男を撃退した皐月だったが、言い争いは収まらず、まだ続けていた。


 意気揚々と”一網打尽作戦でいこう”としていたのに出鼻を挫かれ格好がつかない、と嘆いた皐月に、弥生は別の手でいけと怒鳴り付ける。


 ふとアヤメに目をやったとき、その視界にアヤメを狙う雑魚の姿が入る。隙を窺い、アヤメを捕らえてしまおうという魂胆だろう。手に縄を持ったままにやつく顔が癪に障った。


「(ったく!! あんだけたくさんの女たちを縛り上げておいてまだ懲りずにアヤメ(おんな)を縛ろう、ってのかい! 腹立つね!!)」


 女を縛り上げたその縄で、縛られる側の気持ちを思い知らせてやりたい、と皐月は考える。




 と、そのときだった。


「小町さん!! 後ろ!!!」


 アヤメが必死の形相で皐月に叫んだ。



 振り返るとこちらに向け矢をつがえる者がいた。それも三人。

 遠距離からの攻撃。しかも射線上にはアヤメがいる。 


「”皐月!! とりあえずはその子を守れ!!

 ”(カッター)”だ!!!”」


「おう!!!」


 言い争いは一時休戦。皐月は弥生(サポーター)の指示を受け入れ、別のツールの召喚に入る。


 持ったままだったアレストチェンジャー。顔の横に持ってくると、再び側面のスイッチを右手親指の腹で倒し、コールする皐月。


「おいで!! ”(カッター)!!!”」


 ガシャン!という効果音が鳴り、続いて音声ガイダンスが響く。




      「”Tool choice!


       [Arrest cutter],


       Come on”!!」



 今度はいつも通りの声だ、と皐月は顔には出さなかったが、内心ホッとしつつ、アレストチェンジャーをしまい空いた右手を広げ、光の粒子が集まるのを見届ける。


 矢が一斉に放たれ、こちらに向かってくる刹那、ツールの出現が間に合った。


 現れたツールを振るいながら、次々と放たれる矢を()()で凪ぎ払う。



 何もないところから武器が現れたコトに動揺したのだろう。三人の射手は矢をつがえる手を止めた。


 その様子を見た皐月は、()()を前に突きだし、見せつけるようにしながら叫んだ。


 ()()は、刃渡りが一刃五十センチに渡る四枚の刃で構成された巨大な十字手裏剣。直径にすると一メートルになる鋼鉄の十字の盾。

 

 攻防一体型のそのツール。名を――――






   「アレストカッター!!!!!!」







 七つのツール、第四の装備、お披露目である。






これで爪、棍、拳、刃が登場。

名前だけですが弓と銃も一幕で出ましたね。

あと一つはまだ内緒♪


次回はとりあえず、(カッター)が大活躍です。

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