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其の15「ナンバー3」

お待たせ致しました!

今回ちょっと長いです、まさかの六千字オーバー(汗)


分割するコトも考えたんですが、何処も上手く切れなかったため、このままいくコトにしました。


お付き合い下さいませm(_ _)m

 皐月が晴れ晴れとした表情で待っていると、そこにひとつの影が現れる。


「早いじゃん、霜月。」

「おうよ、俺さまに掛かればあんなの女口説き落とすよりも楽勝よ。」

 

 笑顔で答える男、霜月だった。


「で、あいつらどうした?」

「ああ。全員ノした後ふん縛って、この女の敵の家にまとめて放り込んどいたぜ。」


 皐月の問いに霜月は女の敵=真蔵()()()()()を足で差しながら答えた。


「お疲れさま。

 で? 首尾は?」


 皐月が霜月に真面目な表情で問う。

 肝心の組織のアジト、行方不明の女性たちの居場所だ。



「俺さまが抜かるかよ。

 ミスったらこのクズ、なんとか再生させる方向でいかなきゃなんないところだろ?


 俺もお前もそんなのごめんだろ?」



 涼しげな表情で答える霜月。

 どうやらそれも上手くやってくれたようだ。


 それにしても……


「流石だな、霜月。

 この短時間であの四人ノしただけじゃなく、締め上げてアジトの在処まで吐かせるなんてな。」


 皐月は感心して、素直に霜月を褒める。



「まあな」と霜月は自慢げな表情で緩めていたネクタイを締め直す。



「ただの女たらし、じゃなかったワケだ。」

 うんうん、と皐月は唸りながら頷いた。



 それを聞き、霜月はネクタイを締める手に力が入り過ぎて、首を締めてしまった。

 ゲホゲホ、と咳き込みながら、慌ててネクタイを緩め、発言する。


「お前、忘れてるかもしれないけど、これでも俺さま”暦衆”の中でナンバー3の実力者よ?

 情報収集や作戦のお手並みは鈍ってねえし、生身同士なら大抵のヤツは勿論のコト、お前にも負けねー、っての!」


 暦衆……皐月たちが所属している組織の名だ。

 正式名称は「十二月(じゅうにつき)暦衆(こよみしゅう)」。

 メンバー全員が月の名を冠した名を有する、幕府配下の裏組織である。


 皐月は五の月を、霜月は十一の月を冠する構成員である。


「……ここでもナンバー3なんだな。」


 皐月が愉快な口調で霜月に言う。


「茶化すな。」


 嫌味ではなく、冗談で言ってるのをきちんと理解している霜月。

 皐月の発言にきちんと突っ込む。


 と、真面目な表情で話を続ける。


「言っても真面目な話、ウチの二強には勝てねーだろ、段違いの実力だ。」


 霜月が皐月に告げる。

 皐月もメンバーの中で、誰が戦ったら最強なのかは無論把握してはいる。


「普段あんなでも睦月の実力は飛び抜けてナンバー1だしな。」


 そう、実は一番最強なのは()()悪趣味男なのである。

 まことに遺憾ながら普段はあんなでも。


 ちなみにそれ(=まことに遺憾に思っているコト)はメンバー全員一致の見解である。



 まあともかく、霜月の発言に頷く皐月。

 だが、以前から疑問に思っていたコトがあり、この機会に皐月は霜月に訊ねてみるコトにした。


「ナンバー1が睦月、ってのは分かる。

 睦月が強いのは知ってるからね。


 けどさ、常々みんなが言うナンバー2が”葉月”ってのはホントなのかい?

 アタシ、イマイチ ピンと来ないんだけど。」


 それを受け、あり得ない物を見た、と言う表情で霜月は皐月を見た。


「お前マジで言ってんの?」


 霜月の表情に皐月は焦って弁明する。


「いやさ! だってアタシ、葉月が戦ってるの一度も見たコトないんだもん!」


 その発言に霜月は眼を見開く。


「マジで? そうだったっけか?」


 うんうん! と皐月は何度も頷く。


「そっか……

 そういやそうかもな。

 お前が前線出るようになった頃には姐さん引っ込んでたかも……


 少なくともその頃には俺は勿論のコト、長月もお前も、()()()もいたからな。


 戦闘要員たくさんいたから、姐さんも……」


 と、ここで霜月が皐月を見る。

 心なしか皐月の表情に陰りが浮かんでいた。


「あ。」と霜月が何かに気づき、皐月に謝罪の言葉を口にする。



「すまん。()()()の話はNGだった。」


「あ、いや、別にNGってわけじゃ…!」


 皐月が慌てて手を振って否定する。


「ホントにすまん! うっかりだな!!」


「だから! 謝んないでおくれよ!!

 別に腫れ物じゃないんだからさ! ()()()のコトはさ!!」



 お互いがお互いを気遣って謝る、変な光景になってしまっていた。




「と、そうだよな。

 ()()()は別に腫れ物じゃねえんだ。こうして扱う方が()()()には失礼だよな、悪い。」


 霜月が後ろ頭を掻きながら、バツが悪そうにする。

 皐月たちのメンバー内で、話題に触れるコトが憚れるメンバーがいる、というコトだ。


 いや、正確には、そのメンバーの話題を「皐月の前で出す」コトが憚れる、と言った方が正解だろう。

 そして、そんな気遣いをしてくれている皆の優しさが、皐月には却って辛かった。




「(睦月のときといい今といい……

  なんか今日はやたらと()()()のコトを思い出すな。


  ……なんでだろうな?)」




 皐月もまたそんなコトを考えながら、バツが悪そうに後ろ頭を掻く。


 気まずい空気の中、空気を変えようと口を開いたのは霜月。



「あー……。で、なんだっけ?

 姐さんが強いか、って話だったっけか?」


 そうそう! と皐月はわざとらしく指まで差して頷く。



「葉月姐さんか。


 いや、強えよマジで。俺はまだ勝てる気がしねえな。」


 霜月は顎に手を添えて答える。


「……アタシ、葉月が戦ってるイメージ全然出来ないんだけど。

 こう言っちゃなんなんだけどさ、ホントに強いのかい?」


 まさか色気で男を惑わすとか、戦わずして勝つ、とか……

 そういったセンスも加味してナンバー2なのか。

 だったら分かる気がした。


 のだが、


「バカお前、伊達に睦月の相方やってねえよ。別格だな。

 むかーし一度手合わせしたコトがあるが、めっちゃ強かったわ。


 段違いの実力だぜ? お前。」


 霜月の話ではそうではないようだ。

 純粋な戦闘能力においても強いらしい。


 皐月の中では葉月と言えば、何考えてるのかイマイチ分からない笑顔で、皐月を子供扱いする、掴み所がない、けどまあ良いお姉さん。といったところだ。


「まあその手合わせのあと、興奮冷めやらず、そのまま二人でベッドになだれ込んだのは良い思い出だな!」


「なんの話だ。」


 やっぱり葉月と言えば色気の(こんな)エピソードなのか。

 と目の前の色情魔(霜月)を半眼で見つめ、呆れながら突っ込む皐月。


「いや、流石姐さんだよな。ベッドの上でも別格だったぜ?

 お相手したのは後にも先にもそれ一度っきりだったけどな?

 忘れられない良い思い出だよ。」


 ()()思い出してるのやら、霜月は恍惚とした表情を浮かべながら、そんな発言を口にする。



 ……葉月が強い、という話は何処にいった。



「そういやお前、()()()の経験は?

 まだなら教えてやろうか。

 俺さまが女の喜び、ってヤツを教え込んでやるぜ?」


 結構真剣な表情でとんでもないコトを口走る色情魔。

 口だけとはいえ、妹分といい、親戚だと口走った相手に何を提案しているのやら。


「おう是非に、とでも言うとでも思ったか。お断りだね。」


「分かってねーな。普通なら女の方から俺さまに頼み込みに来るもんなんだぜ?

 それなのに順番待ちなしで即相手して貰える、ってのは妹分の特権じゃねーか。」


「ごめんだね。愛のない相手には身体は預けられん。」


「ほう、言うじゃねえか。

 じゃあ愛ってのはなんなんだい?」



 愛? と皐月は首を捻る。

 自分で口にしておきながら、皐月はよく分かってはいなかった。


 が、少なくとも誰でもいいから構わず快楽目的のためだけに誰かに抱かれるつもりは毛頭ない。

 それだけは断言出来た。


「根性がある男が好みだ」とアヤメには告げたが、それはあくまで好みのタイプに留まるワケで、「根性がある男」にならすぐ身体を許す、というコトにはならない。



 では、「身体を預けてもいい」と言える相手が、自分にとって「愛ある人物」と言えるのだろう。



 ならば「愛」とはなんなのか。

 皐月(じぶん)が相手に持ち合わせていて欲しい、と、

 こいつには「身体を預けられる」と思わせられる人物に持っていて欲しいと思う物。

 逆を言えば、それを持ち合わせていなければ、皐月は到底、身体を許す気は起こらない。


 それは一体なんなのか。


 思考を巡らせていたとき、皐月の脳裏に浮かぶ言葉があった。

 


「ほらな? まだお子ちゃまなお前には大人のなんたるかは分かんないだろ?

 分かったようなコト口走ったところで……」

「"愛とは貫くコト"……」


 黙った皐月をバカにして霜月が語る。

 が、その言葉を皐月は遮って発言した。


 

「……ん?」

  

「"周りになんと言われようと、どう思われようと、自らの思うコトを貫き通すコト"。


 "他の全てをなげうってでも、相手のコトを守りたいと思えるような、

 自分よりも、相手の存在を尊重し、ときには自分を捨ててでも、自分が例え破滅してでも、


 ……場合によっては、誰かからの憎悪を一身に受けてでも、相手を守ろうとするほどのモノ"」






 ―――"私が知る、一番近い形は、自分の子供を守ろうとする母親の愛、ですが、

 それは血の繋がりもあるから出来るコト。


 元は他人である、血の繋がりすら全くない相手のためにそこまでのことが出来るのであれば……"






「……"おいそれと真似の出来ない、素晴らしく情熱的なモノ"。

 アタシが美しい、と感じた感情。

 ひとつの形……」





「それが愛……」と、皐月は締めた。



 霜月は眼を見開いて皐月を見る。

 小バカにしていた表情は成りを潜め、その顔には驚愕が浮かんでいた。


「皐月……お前……?」

 霜月はそれだけの言葉を絞り出した。


 

 

 まだまだ子供、と思っていた相手がたどたどしくも「愛」とはどういう物か、という問いにひとつの答えを提示したのだ。


 しかも的外れとは決して言えない。

 さまざまな形があるであろう「愛」というものに、正解の形はひとつではないであろう。


 けれども皐月が口にしたのも、ひとつの愛の形だ。


 そして何よりも……



「(()()皐月が、だぞ?)」



 同じ組織、暦衆の同輩である霜月もまた、皐月の過去は知っている。


 過去を知っているからこそ、余計に動揺した。


「恋愛の"れ"の字」も分かっていないのは勿論のコト、かつては「人の心」すら全く知らなかった皐月が今、自分相手に「愛」を語った。



 どうせ分からないだろう、とタカをくくり、茶化そうと考えていた霜月の目論見は物の見事に崩され、逆に自分がショックを与えられる形を取ったのであった。





「(……果たして、これが本当に"自分が相手に求める(モノ)"なのか、まではまだ分からないけどね。)」


 口には出さないが、皐月は苦笑した表情を浮かべながら内心呟やく。


 言って見れば今現在の自分が「いいな」と思えるモノに過ぎない。

 果たして、そこまで情熱的に自分に惚れてくれた存在が現れてくれたとき、皐月は同様に接するコトが出来るものなのか。

 それはまだ想像出来ないものだ。


 けれど思う。

 笹野が自分に見せ、香里が口にしてくれたこの愛の形。


 自分もそうなりたいかはさておき、何故か美しいと思えたその理由……


「(そうだ。アタシ()()()()()()

 もっと以前からこの形を見たコトがあったよ。


 ()()()もそうやって、アタシに接してくれてたよね。)」


 かつて、自分に本気の愛を示してくれた存在がいた。


 香里が言う"他人がおいそれと真似の出来ない"、"自分を捨ててでも相手を守ろう"という"情熱的な愛"を自分なんかに示してくれた存在が。


 当時の皐月は、"心"というものが全く分からなかったから、彼のその行動がいつも理解出来ていなかった。


 彼が自分に本気で惚れていた、というのも、周りが言う意見であり、今となっては窺い知れないコトだった。


 だが、こうして思うと、彼の行動の全ては「自分に対する愛」だったのだろう。

 改めて皐月はそう認識した。



「(()()()がかつて見せてくれた物だったから、

 心を知った今のアタシが、"いいな"と思えるようになったんだな。)」



 皐月は苦笑した表情のまま、空を仰ぐ。


 空には月が顔を覗かせていた。

 が、皐月の瞳には別の物が映っているのだろう。


 何故今日に限ってこんなに()()()の話が出るのか。

 もしかしたら()()()も気づいて欲しかったのかもな、なんて考えていたのだった。





「……悪かったな茶化して。

 正直見くびってたよ、皐月。


 どうせまだまだ何も知らない子供だろう、ってな。

 お前も大人になってるんだな。」


 霜月が後ろ頭を掻きながらそんなコトを口にする。



「お前、成長してる。」

 皐月を真っ直ぐ、真剣な表情で見ながら霜月が断言した。


 それを受けて、皐月は穏やかな笑顔を浮かべながら、首をゆっくりと左右に振る。


「褒めて貰って恐縮なんだけどさ、ごめん霜月。


 今のはアタシの言葉じゃない。

 教えて貰った受け売りさ。


 アタシはただ、アタシも今の言葉が”いいな”と思ったから使わせてもらっただけなんだ。」


 困ったような表情で、けれどうっすら笑みを浮かべながら、皐月は続きを口にする。


「偉そうに言ったけどさ。

 アタシ自身は、まだ”愛”のなんたるかを全く分かってない、ただのガキのままさ……」


 成長なんかしてないよ、と結んだ。



 が、それを聞き届けても、霜月は「なあんだ」と言うわけでもなく、真面目な表情のままだった。


「”知るってコトは大事だ。”

 ”例えまだ真に理解出来なくても、本物を眼にし、そういう物がある、と知り、覚えておけば、いつの日か「あのときのコトはこういうコトだったのか」と理解出来る日が来る”。」


 その顔のまま、霜月がそんなコトを口にする。


「俺様のコレも受け売りだぜ?

 俺たちのナンバー2からの、な。」


 フッ、と霜月が笑みを浮かべる。


「さっき言った手合わせの後、ベッドの上で姐さんに言われた言葉だ。


 上の実力が知りたいから手合わせしてくれ、って俺の無茶な願いに答えてくれて戦った後な、手も足も出ずに負けた俺にそう言ってくれたんだよな。


 実力が違いすぎて、何がどう及ばないのか、丸っきり検討もつかねえ、って溢した俺にさ。」




”今はまだ解らなくても、知っておけばそれはいつか自分の中で繋がる瞬間が必ず来るわ。


 自分が大きく成長したとき、身体や心が経験を積んで成長したとき、見本とすべき本物を眼に焼き付けておけば、自ずとその記憶と身体が結び付いてくれる瞬間が来る。


 霜月、未来の自分のために、

 今は解らなくても、知っておきなさい。


 知っておくコトと知らずにいるコトは全然違うの。


 自分を大きくさせるために、知るコトは大事なコト。

 覚えておきなさいね……。”




「……忘れられねえ、ベッドの思い出だよ。」


 肩を大袈裟にすくめながら、霜月はそう口にする。


「今は受け売りでもいいさ。

 けどお前は”そういう考えがある”って知った。

 お前の中でいつかそれが何かに結び付く瞬間(とき)がきっと来る。


 恋愛観なんか全然変わっちまうかもしれないけど、知っとくコトは無駄にはならないだろうさ。」


 ましてや、と霜月は続ける。


「ましてや、お前はこの町のヒーローだ。

 いろんな人間を目の当たりにしていくだろうぜ。

 もし誰かを救うときにいつか知ってるコトがその誰かを助けるコトに繋がるかもしれないだろ?


 愛もそうだし、いっぱいいろんなコトを知っていけ、皐月。





 この町のヒーロー、”ダイアレスター”さんよ。」






 霜月なりの激励だった。


 皐月は真面目な霜月の激励に、眼を丸くする。




「……こう見えても、俺さまも結構期待してんだぜ? ヒーロー。

 人々の希望で、この町の守り神なんだろ?」



 霜月が皐月に近づき、右拳を突き出してくる。



「女の敵は俺さまの敵だ。

 皐月、思い知らせてやるんだぜ?」 



 月明かりに照らされた色男の顔には笑顔が浮かぶ。

 


「………おう!!」


 皐月も笑顔を浮かべ、右拳を突き出す。





  

 二つの()を照らす月明かり。

 今宵、二人を見つめ空に浮かぶ月は、満面の満月だった。









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