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疾風堂々!ダイアレスター ~オエドタウン岡っ引き小町捕物帖~  作者: 発素勇気
第1幕「オエドタウンの守り神」の巻
15/88

其の13「オエドタウンの守り神」

ヒーロー作品の見せ場のひとつ、

「名乗り」です。


これ書きたかったんです!


ちょっと長いですが、お付き合い願います。

 オエドタウン町人街。

 人々が住む住居エリアと、店が立ち並ぶ商店エリア。


 この二つのエリアは近接してはいるが、若干の距離がある。



 突然の砲撃から始まった騒動は、商店エリアのど真ん中。

 買い物や食事で人々が溢れかえる、そのまさに中心で起こる。



 突如として現れた、大きな”トカゲ”の化け物。

 両腕は翼になっており、口から火を吹く三メートル越えのトカゲ。

 大の男の、約 倍はあろう巨体は、人々にプレッシャーを与える。





 最初の砲撃で、数軒の店が破壊され、瓦礫が散らばる。

 火の手が方々に上がり、火の見櫓からは半鐘の音が激しく鳴り響く。



 行き交う悲鳴の数々。


 

 見たことのない怪物に、人々は叫喚し、

 あるものは立ちすくみ、あるものは腰を抜かし、

 またあるものはパニックを起こし、逃げ惑う……




 町は現在(いま)、混乱の真っ只中だった。




「聞けーーーい!! オエドタウンに住まう町人どもよーーー!!!」



 そんな混乱のさなか、大声を上げる存在がいた。


 逃げ惑う町人たちが、声に気づき、次々と振り返る。

 すると、大トカゲの脇に、何者かいた。


「これは天からの罰、天罰である!


 天は、神はお怒りだ!!

 現在(いま)の幕府の在り方に、天は激怒しておいでなのだ!!!



 天は幕府に鉄槌を下すべく、使者を遣わした!!!

 それがこの竜、ドラゴンだ!!!」





 声を上げるのは黒影衆の忍び、唐丸(からまる)

 トカゲもとい、ドラゴンのメカ”西龍(せいりゅう)1号を操り、無差別な破壊行動に出る。


 その唐丸の言動に、町人たちから怒りと不安の声が次々と上がる。



 ”なんで幕府への天罰で、俺たちの町が壊される?”

 


 その疑問に、唐丸は笑顔で応える。



「これは見せしめだ!!

 財前幕府、将軍 財前(ざいぜん) 須左上(すさのかみ) 四季(しき)への罰だ!!!


 他の列強国への対武力政策も怠り、あまつさえ”ミヅホ国の誇り”、自国らしさを忘れ、他の国々の文化を受け入れる甘さ!!

 鎖国を解き、ミヅホ独自の文化を捨て去り、堕落していくこの国の有り様に、天は怒っておいでなのだ!!!!


 だがな! このドラゴンを、天を恨むのはお門違いだぞ貴様ら!

 恨むべきは、こんな天罰を買った、財前四季だ!!!

 将軍四季公が原因なのだ!!!!


 恨むなら現幕府を恨め!!!!

 憎むべきは将軍四季公だ!!!!

 こんな理不尽な目に遭うのは全部四季のせいだ!!!!



 自分達はなんにも悪くないのに、こんな辛い目に遭う――

 なんでだよ、と恨むのなら、四季を恨め!!!!!!」



 完全な暴論であるのだが、パニックを起こし、

 怒りや恐怖で冷静さを欠いた人々には、正常な判断がつかない。



 ”将軍さまのせいで、俺たちがこんなひどい目に遭ってるのか?”


 疑心暗鬼に陥ってしまう人々。そこへ唐丸が追い打ちを駆ける。



「そうだ!!! 将軍を恨め!!! 幕府を憎め!!!!

 その証拠にみろ!!! 誰もお前たちを助けに現れない!!!!

 将軍四季は、お前たちのコトなんか、どうでもいいんだ!!!!


 こんな自分勝手な将軍を許すな!!!

 将軍を怒れ!!!! 町人どもよ!!!!」




 そう、これが唐丸の、

 いや、ひいては左近守の作戦、狙いであった。


 民衆の意識操作。

 現幕府へ怒りと不満を持たせ、現将軍の失脚を目論むコト。

 そのための破壊工作だったのである。


 唐丸は西龍1号に命じ、さらに破壊行動を続ける。


 建物の塀を壊し、店先の商品を薙ぎ払い、踏みつけ壊し、

 方々に向けて火をふかせる。


 きゃあ、という悲鳴や、止めろ、という怒号、えーん、と泣き叫ぶ子供の声………

 辺り一面、混乱の絵図と化していた。




 そんな中、ドラゴン、西龍1号の傍に、一匹の猫が駆け寄ってくる。


 ()()()()のその猫は、西龍1号を見上げると、

  シャアアア!!!

 と威嚇するのであった。


()()()()!! ダメ!!!」


 幼い少女が猫を追いかけ、現れる。

 春菜と仔猫、トラマルだった。



 春菜はお美代の指示のもと、香里や他の宿泊客らと共に避難(いどう)していたのだが、抱えていたトラマルが春菜の腕から飛び出したのだった。



「なんだガキんちょ。猫のしつけがなってないな。

 ちょうどいい。幕府への見せしめ、生け贄第一号になってもらおうか。」



 唐丸は西龍1号に命じ、トラマルを抱えた春菜を踏み潰すように差し向ける。

 右足をたかがかと上げ、ドラゴンは、幼い少女を、今まさに踏み潰さんとする。






「春菜さん!!!!」






 そこへ何者かが春菜に飛び付き、その場から転がり避ける。

 西龍1号は体重を掛け、右足を地面に叩き下ろしたが、その下には地面しかなかった。


 唐丸は、不満そうに舌打ちし、逃げた先に視線を向ける。


 そこには、春菜を抱き締め、唐丸を睨み付ける一人の少女の姿。 




「おんなぁ。

 お前も痛い目に遭いたいのか?」


 不機嫌そうに質問の言葉を投げ掛ける唐丸。

 少女―香里は春菜を抱き締めながら、唐丸に語り掛ける。


「あなた、最低です。」

「なんだと?」


 唐丸は眉をひそめる。


「俺を恨むのは筋違いだ。

 恨むなら……」

「そこの大トカゲにでもしますか。」


 香里は唐丸の発言を遮って挑発する。


「貴様………」


 唐丸の表情に、怒りの感情が表れる。



「誰がどう見たって、この瞬間(いま)、酷いことをしているのは貴方です。

 仮にありえませんが、あなたと、その大トカゲが、あなたの言うように、天からの使者としましょう。

 ですが、それでも、なんの罪もない いたいけな子供を傷つけていい理由にはなりません。


 子供は国の宝です。

 未来を作ってくれる、希望です。


 もし、現在(いま)の国の現状が腐敗しているという、あなたの暴論を鵜呑みにしたって、

 子供の命を奪い取るのは最悪です。

 良い未来に作り変えてくれるかもしれない、可能性の芽を、摘み取ってしまう、愚かで最低な行為です!!!」


 香里は決して怯まず、唐丸に強い視線を向け、射抜く。


「だから私は、あなたの言葉に惑わされません!!

 私は、あなたに怒りをぶつけます!!!!」


 香里の宣言に、唐丸は自身の感情を、苛立ちから激怒に変える。



「調子に乗るなよ!! おんなぁぁ!!!!」


 


 西龍一号が右腕を大きく横に振るう。

 幸い、香里と春菜は、このメカから距離を取っていたため、打撃を受けはしなかったが、

 この横薙ぎは突風を巻き起こし、香里たちを襲う。


 風の勢いに負け、香里は春菜を抱き締めたまま、地面を転がるはめになる。



「いい気になるなよ、おんなぁ。

 威勢が良くったって、そんな細腕じゃあ何も守れやしない。

 いや、守るどころか、早死にするだけだ。」


 結果として、唐丸からさらに距離を取るコトにはなった香里と春菜。


 が、唐丸はあるコトを思い付き、ほくそ笑む。


「誰も皆、自分が可愛いんだ。自分の身だけが可愛いんだ。

 そりゃそうだろ、お節介にもお前のように首を突っ込めば、お前のように自分が危険な目に遭ってしまうんだ。

 お前たちを助けてくれるヤツなんか、居やしないぞ。

 助けを待っているのなら無駄だ。」



 大半の人間は逃げ出したが、それでも現場にはまだ人影は残っていた。

 が、残った人々は遠巻きにその光景を眺めているだけ。

 巻き込まれるのを恐れ、近づかない。

 いや、中には飛び出そうとするものもいるのだが、回りに止められている。



「……やはり、生け贄第一号は貴様らだ!!!!!」



 唐丸は西龍1号に命じて、火炎弾を吐かせる。

 それは香里と春菜を狙ったものではなく………


 二人の上に反れ、二人の上後方、店の二階部分、飾ってある看板に命中した。



「我らが手を下すまでもない!!!

 これは()()()!!!


 ()()()()()()()だな、おんな!!!!


 ()()()瓦礫に押し潰されて死ねぇ!!!!」


「香里さん!!! 春菜ちゃん!!!!」


 お美代の声が響く。

 避難誘導を終え、二人を捜したお美代は、現場に駆けつけていた。

 が、回りの人間に身体を捕まれ、止められていた。


 叫ぶことしかできず、焦りの交じったその声は、辺りを緊迫の空気に変える。




 瓦礫が降り注ぎ、それはトラマルを抱き締める春菜と、それを身体全体で庇う香里に迫る。



「おねーちゃん………!」



 春菜は香里に身体をより、寄せる。

 

 絶体絶命。




 

 ”せめて春菜(このこ)の命だけでも……!!!”





 春菜を強く抱き締め、身構える香里。

 頭にふと、皐月の言葉が過る。

 






 ”けど信じて欲しい。

  この町は決して悪には屈服しないって。


  例え騒ぎが起こっても、”大丈夫”って思えるものが、

  この町にはあるんだ、って。”








 

 眼を閉じる香里。

 心の中で、信じた少女の名を叫ぶ。








      ”皐月さん…………!!!!”

 
















「ていりゃあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」













 何かがぶつかる音がした。

 覚悟していた衝撃が、待てどくらせど、一向に訪れる気配がない。


 香里は恐る恐る、眼を開く。


 まず眼に入ったのは、抱き締めている春菜の旋毛。

 周りを見渡すと、自分達の周りを避けるように瓦礫が散乱していた。



 そして気づく。

 少し離れたところに、それまでなかった背中がいることに。





ーーーーーーーーーーーーーーーーー




 本当にギリギリのタイミングだった。


 逃げ惑う人の邪魔にならないよう、建物の屋根を飛び飛び、全力で走ってきた少女。

 遠目に大トカゲの姿を見つけ、地表に降り立つと、壁になってしまっている人々を飛び越え、

現場に到着。

 眼に入ったのは、大トカゲが口から火炎弾を発射したところだった。



 急ぎ駆け出し、素早く大トカゲの脇を横切ると、火炎弾は両替商の看板に着弾。

 瓦礫が下にいる、見知った顔に降り注ぐ寸前だった。



「ていりゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



 腹の底から声を出し、彼女は飛び上がると、瓦礫目掛け飛び蹴りを放つ。

 怪我を負わせそうな瓦礫を蹴り飛ばし、彼女はそのまま地面に着地する。



 間に合って良かった。

 助けるコトが出来て、本当に良かった。



 彼女は心の中で呟く。

 これで助けるのは二度目だ。



 でも、今度はちゃんと、()()()()()()()()、って意識して助けたよ。






 この言葉は直接口には出さない。



 例え伝わらなくても良い、これは自身の自己満足だ。

 岡っ引きとしての自分が犯した後悔を取り戻せた、ささやかな誇り。


 彼女は……ヒーローは少し振り返り、

 淡く微笑みながら、ゴーグル越しに彼女を―――


 


 香里を見るのであった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 突如現れた謎の人物に、唐丸は困惑する。



「貴様……何者だ。」



 唐丸に、真正面に相対する、謎の人物。

 香里の方から顔を戻し、唐丸を見る。



「アンタら悪党の宿敵。

 この町を泣かせる、愚かな輩の天敵さ!」




 綺麗な通る声で、唐丸の問いに答える女。


 そのやりとりの最中、脱力した香里の腕から顔を出し、二人を見る(まなこ)があった。

 春菜だ。

 春菜はその姿を捉えると、すぐにその人物のコトに思い当たり、良い笑顔で手を振る。


「ヒーローさん……

 ヒーローさんだよね!!!

 ヒーローさーーーん!!!!!」


「ヒーロー………

 あの方が!!!」


 春菜の発言に、香里はようやく、自分達を助けてくれた人物を思い当たる。

 春菜を始め、皐月やお美代が口にしていた人物だ。


 一人分かっていないのが、この男。


「ヒーローだと?

 貴様いったい………」


 眉をひそめる唐丸。

 ヒーローは……皐月は唐丸を指差し、ドヤ顔でこう応えた。





「問われて名乗るもおこがましいが、

 知らずに送るも偲びなし!


 教えてやる!

 その胸にしかと刻んでおきな!!」



 

 風が吹く。

 悪を許さぬ、一陣の風が。


 人々を守る、強くも、優しい一陣の風。

 風は声をのせ、辺りに決意を響かせる。





疾風迅雷(しっぷうじんらい)疾風(はやて)の如く!


 威風堂々(いふうどうどう)大樹(たいじゅ)の如く!



 現せ、見せるは、一筋の――

 悪を怯ます、伊達姿(だてすがた)!!



 (たぎ)る血潮は民のため!! 熱き心は人のため!!


 

 持てる(ちから)のすべてを惜しまず!


 弱きを助け! 邪悪を砕く!!



  

 オエドタウンの守り神!!!!」






  

  それは現在(いま)、悪を射抜くヒーローの名―――







  「聞け! 悪人ども!!!



   アタシはヒーロー、ダイアレスター!



   この町のヒーロー! ダイ! アレスター!!







   疾風堂々(しっぷうどうどう)! ダイアレスターだぁぁぁぁ!!!!」








 〔さあさあさあ!!

  ようやく来ました! 参りました!!!


  ひと度事件が起これば、ハヤテの如く現場に駆けつけ姿を見せる!!!


  その堂々たる姿は大樹の如く、

  見る者には安心感を!

  悪党には畏怖の念を与え、ひるませる!!!


  その身の全てを捧げ! 正義に尽くす!!!


  弱気を助け! 邪悪を打ち砕く!


  我らのヒーロー、ここに見参!!!



  さあ! その活躍!!!


  この続きをしばし待て!!!!〕









と、講釈師が言うように、次に続きます。

出来れば今日中にもう一話上げたいです。


引き続き、宜しくお願いいたします。

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