光と火の舞
「……さてと、腹も膨れたし、そろそろアレをするか」
そして、楽しい時間は、もう一つある。
カグチが立ち上がると、
『お、イイね、イイね』と白い木が拍手をするように枝を揺らす。
食事の後の、リクリエーション。
カグチの両手から、炎が上がる。
両手から燃え上がる炎は、球体状に姿を変えた。
それらを、カグチは器用に回して見せる。
『火の玉』を使った、ジャグリング。
毎晩、白い木が『火の力』見せて欲しいとせがむので、しかたなくカグチは『火の力』の炎を出していた。
最初は、ただ『火の粉』を出したり、『火の玉』を打ち上げるだけだったが、それだけだとカグチ本人が飽きてしまったのだ。
だから、『火の力』を扱う練習もかねて、色々な形に炎をだして、遊び始めたのだ。
結果として、カグチは『火の力』を自由自在に扱えるようになった。
(……形だけだけど)
『火の玉』を、カグチは『ボーリングのピン』のような形に変える。
くるくると回るボーリングのピンは、本当にジャグリングをしているようである。
そのボーリングのピンを、次は星の形に変えた。
次はハート。
形を変えながら、カグチは回していく『火』の数を増やしていく。
踊るように、回りながら。
『うぉぉぉぉおおおおお!』
と、興奮するように、白い木が発光し、ユサユサとゆれる。
白銀の枝が、幹が、キラキラと煌めき、神秘的な光の粉が宙を舞う。
その粉の中を、少年が、メラメラと揺らめく、荘厳な炎を操り、舞う。
白い木と、カグチの、光と炎の競演は、互いの精神を高揚させ、それに合わせるように、光が、炎が、高められ、一つの芸術を生み出していく。
光と火の舞。
疲れ、動けなくなるまで、白い木とカグチは、この演目を楽しんだ。
「……はぁはぁはぁ」
カグチは息を切らしながら、草原に倒れるように寝ころんだ。
白い木も、ピカピカと息切れのように、発光を繰り返している。
「…………楽しかったな」
『うん』
白い木がバサリと揺れた。
「……ダンスとか、そういうの向こうだと楽しくなかったけど、良いもんだ」
……友達と、するのなら。
それは、口には出さなかったけど。
カグチは、照れくさくなって、思わず笑う。
「……明日、ここを発つ。世話になったな」
『うん』
白い木が、力なく、パサリと揺れる。
「弟と、その友達。見つけて、会えたら、ここに連れてくるよ。紹介したいんだ、お前のこと。いいかな?」
『…………うん!』
白い木が、力強く、バサバサと揺れる。
「……良かった」
カグチが、嬉しそうに笑うと、白い木も嬉しそうにユラユラと揺れる。
そして、急に、動きを止めた。
「うん? どうしたんだ?」
『……ううん、なんでもない』
と言っているように、白い木が横に揺れる。
「……そうか。そういえば、明日、お願いがあるんだけど、いいかな?」
『なに?』
「お弁当が欲しいんだ。しばらく会えないだろうからさ。ちょっといつもより多めに。いいかな?」
『もちろん!!』
カグチの申し出に、白い木は嬉しそうに答える。
そして、バサバサと激しく揺れ出した。
ボトボトと大量の木の実と枝を落としていく。
「ちょっ!? 明日、明日だから。今じゃなくてだな……」
『うひょーう! ハリキるぜーーー!』
白い木は、ノリノリで木の実や枝を落としていく。
「……はぁ」
しょうがない、とカグチは、白い木の枝と木の実のように分けている『虚無の箱』を取り出す。
それぞれ、別々に分けて入れているが、大量に落とされた白い木の枝と木の実を見て、全て入るか不安になる量だ。
「……まぁ、入らなきゃ、また別の箱を使えばいいか」
容量を使い切っていない箱は、まだあるのだ。
ヒョイヒョイと拾い上げていくと、何とかそれぞれが満タンになる量を拾うことができた。
でも、まだまだ地面には白い木の枝と実が落ちていた。
「どんだけ落としたんだよ」
『ムフー』とばかりに、白い木が自慢げに胸を張っている。
落ちている枝と実の量と、白い木の様子に吹き出すのをこらえながら、別の『虚無の箱』を持ってくるために、建てていたテントに置いている荷物を取りに行こうとした、その時だった。
カグチは、誰かがテントの前に立っているのに気が付いた。
カグチと同じくらいの年齢の少年。
「やぁ、久しぶり。元気だった?」
馴れ馴れしく挨拶をしたのは、『アスト』に到着した瞬間、姿を消していた、『軟体の力』を持っている、サンジョウだった。




