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孤独ではない日々

気が付けば、ここにいた。


広い草原の真ん中に、孤独。


ほかのみんなと離れた場所で、ぽつんと。


空から降り注ぐ太陽の光も、地面の下にあるおいしいお水も、たくさん、たくさん食べることが出来たけど。


孤独に、ずっと生きていた。


孤独は、つらい。


日があるうちは、いい。

太陽の光でおなかが一杯になるから。


でも、夜になると、つらい。


暗いは、怖い。


だから、光ることを覚えた。

自分が、光ることを。


光れば、暗くなくなった。


怖さが、少なくなった。


でも、変わらないものがあった。


孤独ということ、つらいということは、自分が光っても変わることはなかった。



ある時、ふと誰かに、いや、何かに、教えられた。


人間という生き物が来ること。


彼らを見送ることが、自分の使命だと気付かされた。


そして、人間という生き物が、本当に唐突に現れた。


どれだけいるか、数えたわけではないが、それでも少なくない数だった。


一人、人間が起きあがった。


その人間は、周囲を見渡し、他の人間がまだ眠っているのを見ると、うれしそうに顔をゆがめ、姿を消して、この場所を去っていった。


次に起きた人間は、周囲を見渡すと、心配そうに、気遣うように辺りを見渡し、他の人間が起きるのをただ待っていた。

それから、他の人間が起き上がり、何か言い合い、次々とこの場所を去っていった。


見送るようにと、気付かされてはいたのだが、人間たちは足早に去っていくモノだから、見送るなんてことは出来なかった。


だから、うれしかった。


最後に一人、ぽつんと残された人間が、おそらく彼らの別れを告げる動作と言葉を自分に向けてくれたことが。


見送る。


その使命を果たせたことが、うれしかった。


孤独に生きていた自分に、別れの言葉でも、かけてくれたことが、うれしかった。


人間が全て去り、感じたことは、使命が、役目が果たされたということだった。


また、これから、何事もない孤独な生活が始まるのだと、安堵と空しさを覚えていると、また唐突に何かが現れた。


それは、箱だった。


人間たちの、半分くらいの数だろうか。


なぜ、こんなモノが現れたのかわからないが、少しだけ、期待してしまった。


また、人間が現れるだろうか。


あの、別れを告げてくれた人間のような人間が、来てくれるのだろうか。


しばらく待ち、日が落ちて暗くなり始めた頃、いつものように、怖さを無くすために光っていると、何かがやってくる気配がした。


人間の、気配だ。


よく見えるように、少しだけ強く光ってみると、人間が、近づいてきた。


その人間は、あのとき、自分に別れを告げてくれた人間だった。


人間なんて、その日にはじめて見たのだが、しかし気のせいでなければ、その人間はとても疲れているようだった。


何か、とても悲しいことを、経験しているようだった。


だから、少しだけ、自分に何か出来ないだろうかと考えてしまった。


人間が自分の足下にあった箱を開けて中身を取り出し、川で水浴びをし始めた。


水浴びを終えた人間は、寒そうにふるえながら木の所までやってくると、何かを探し始めた。


森を見て、自分の、枝を欲しそうにじっと眺め。


あきらめたように森へ進もうとする。


枝が欲しいのか。


そう思ったから、不要な枝をいくつか、人間に与えてみた。


枝を拾った人間は、とてもうれしそうにしていた。


すこし、気を使うように、人間は自分から距離を置くと、枝に火をつけた。


暖まりたかったのだろう。


しばらくして、人間は川で汲んでいた水を飲み始めた。


おいしそうに、ごくりごくりと飲み終えると、人間は少し悲しげな顔を見せていた。

足りなかったのかもしれない。


なので、自分の実をいくつか、人間に与えてみることにした。

すると、人間はまたうれしそうに自分の実を食べ始めた。


どうやら、自分の実は人間にとっておいしいモノであるようだ。


そう気付くと、なぜか、自分も、太陽の光を沢山浴びたときのような、おいしい気持ちになっていた。



自分の実を食べ終えた人間は、またなにやら悲しげな顔を浮かべた。


孤独な顔だ。

そして、怖いと思っている顔だった。


何を怖いと思っているのか。


自分と同じように、暗いことを、怖いと思っているのか。


しかし、これ以上自分が光るのは、さすがに疲れてしまう。


人間も、光ることが出来ればいいのに。


そう思っていると、人間は、自分の手から光を出した。


それは、とても綺麗な光だった。


空から、自分に恵みを与えてくれる、あの太陽のような、綺麗で、生命力にあふれている、光だ。


その光を、人間は自分の枝で燃やしている火と混ぜていく、何度も、何度も、それから、空にも光を放っていく。


これほどに、綺麗なモノを見たことがなかった。


放心し、見取れていると、人間はいつのまにか光と火を消していた。


もう少し、見ていたかったのだが。


不満に思っていると、人間が、光が混ざった粉を指さして自分になにやら聞いていた。


どうも、必要かと聞かれている気がしたので、全力で、肯定の意志が伝わるように体を動かし、光って見た。


すると、人間がその粉を自分の周りに蒔いてくれた。


体が、洗われたようだった。

内側から、生まれ変わったような気持ちになった。


これほどまでに、清浄な生命力を、与えられたことはなかった。


次の日、人間が旅立つ様子だったので、礼をしなくてはならないと思った。

自分に出せる、すべての枝と実を、人間の前に落とした。


これでも、昨日与えられた粉で得たモノに比べると、微々たるモノではあったのだが、それを自分がまだ使いこなせていなかったのだ。


そんな、些細なモノでも人間は喜んでくれ、それはそれで嬉しかったのだが、それよりも嬉しかったのが、人間がまた戻って来てくれるということだった。


それから、人間と過ごした数日間は、とても幸せだった。


自分の実を喜び、自分の光を喜び、綺麗な光を見せ、清浄な生命力を与えてくれて、それに、なにより、毎日自分の元へと帰ってきてくれる。


人間との、孤独ではない日々は、本当に、とても幸せだったのだ。


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