査定
「これとこれは道沿いにも普通に生えているから、買い取り不可。季節的にちょっと珍しいけど。でも、他のモノは買い取れるよ。詳しい値段は私もちょっと詳しくないけど」
メディから草や木の実、キノコの名前を聞き、木の板にメモをしていた職員が、また棚に踵をかえしていく。
値段を調べにいったのだろう。
「それにしても、よくこれだけ集めたわね。植物専門の冒険者を目指しているの?」
「いえ、そんな。そんな人いるんですか?」
「いるわよ。お抱えの冒険者だけど。目指していないの?」
「ええ、あんまり」
(というか、そういえばこの世界でどんな仕事で生きていくか考えていなかったな)
最初は『火の力』を持っているから狩人だろうと思っていたが、それは断念している。
となると、次は冒険者だろうか。
冒険者は、今回のように植物をなどの採取をすれば、別に魔物を退治しなくてもいい。
「お抱えの冒険者を目指していないなら、本当に自由にやるつもり?世界樹を見つけたいとか?」
「世界樹?」
カグチは、メディが発した言葉に反応する。世界樹とは、あの、世界樹だろうか。
「うん。森羅万象。この世のあらゆる木の実を、この世以外の世界の木の実まで、実らせることができる木、なんだそうよ。世界のどこかに生えているんだって」
「……へー」
それは、もう、どう考えてもあの白い木のことではないだろうか。
(珍しい木だろうとは思っていたけどいきなり世界樹か。ちょっと俺が知っている世界樹とは違うけど、アレがねぇ)
昨日一晩で懐いてくれた木が、あらゆるファンタジーで最高峰の木だとは、まさかである。
(じゃあ、やっぱり、あの白い木がくれた木の実とか、枝とかは見せないで正解だったわけか)
今回、カグチは白い木が落としてくれたモノを全て見せていない。
白い木が世界樹だとは思わなかったが、百パーセント珍しいものであることはわかっていたのだ。
「へーって、そんなことも知らないのに、なんでこんな植物を……」
そんな会話をしていると、緑髪の職員が戻ってくる。
「おまたせ。査定が出たよ」
緑の髪の職員が、買い取ってくることになった、『カルラウネ』を抜けた七種類の植物達の値段を一つ一つ教えてくれる。
「……以上、合計で3640ロラだ」
「おお」
半日で日本円で3万円以上の稼ぎだ。
しかも、『カルラウネ』が別である。
これは良い稼ぎではないかとカグチが思っていると、メディは不服そうな顔をしている。
「……どうしたんですか?」
「いや……わかってはいるんだけど……やっぱりね」
どうやら、メディは、この買い取り価格を相当安いと思っているようだ。
「あまり総合組合で買い取るモノでもないからね。薬草なんかの天然モノの植物を買い取りたがるのは、調薬士とか錬金術師くらいだ。そういった人は基本的にお抱えの商人か、冒険者を雇っているモノなんだよ」
緑髪の職員さんも、申し訳なさそうだ。
「……だから、さっきも言ったけど、商人に直接売ったほうが高く売れるとは思う。質もいいしね。組合だと、質はあまり考慮されないから」
「大丈夫です。けど、さっき言った情報はもらえますか?」
「ああ、組合で買い取っているモノと今高値のモノだね。ロットがまとめてくれたモノがあるよ。そういえば、字は読めるかい?」
職員が木の板を渡してくれる。
それに、カグチは目を通す。
「……大丈夫です。旬は『プロズリー』。一つ100ロラ。あとこれからは『ワッサメローナ』と『ゾネンブルーマ』がおすすめ……ありがとうございます。特徴まで書いてくれて」
特徴をみて、『桃』と『スイカ』と『ヒマワリ』が高いと頭にメモする。
カグチがお礼を言うと職員はいやいやと手を振った。
「情報を与えるのも仕事の一部だから、気にしなくていいよ。だから……正直、前もって知っていたらもう少し高値で買い取れたかもしれないけどね」
「え?そうなんですか?」
緑髪の職員さんが困ったようにメガネの位置を戻す。
「ああ、僕たちも結局買い取ったモノを売らないといけない。魔物の素材は、国から補助金もでるし、毎日冒険者や狩人が狩ってきてくれるから、価格も安定する。けど植物とかの採取物に関しては、今回は商人に買い取りの情報を流していないから、あまり高くも売れないだろうから、買い取り価格も抑えないといけないんだよ。ここは王都からちょっと離れすぎているし」
「なるほど……だから、前もって知っていたら高く買い取れた、と」
「ウィッスンさんがいるから、これでも近くの他の村より高いはずだけどね。けど、王都に比べるとやっぱり安いよ。だから、君がこれからも植物なんかと採取してきてくれるなら、前もって連絡が欲しいかな。別に明日なら明日でもいいから。そうすれば、こちらからも商人たちに連絡がしやすい」
「じゃあ、明日もう一度売りに来てもいいですか? 今日売ったモノと、他に教えてくれたモノたちを売りに来るので」
「本当かい? もちろん、大丈夫だよ。買い取りの準備をしておくよ」
職員さんがうれしそうにニコニコとカグチの申し出を受け入れてくれた。




