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異世界への始まり

異世界チートモノを書きたくて、なろうに帰ってきましたよ!


お久しぶりです!!


チート、といいつつ、主人公は苦労しまくりですけど、いつか報われる時がくる……はず。

高校一年生の今夏いまなつ 嘉颶智かぐちは、気がついたら壁も床も、自身が座っている椅子も、目の前にある机も、真っ白な、広い円形状の部屋の、片隅にいた。


周囲を見渡すと、彼と同じようにブレザーの制服を着た、つまり彼と同じ学校に通う学生たちが数十名、階段状になっている椅子に腰をかけた状態で、彼と同じように周囲を見渡していた。


見渡しながら、自分たちがどこか異質な場所にいることがわかったのだろう。

ざわざわと、騒がしくなっていく。


困惑、混乱。教師の姿も数名見えたが、彼らも皆、生徒たちと同じように冷静さがない。


悲鳴のようなモノさえ聞こえてくる中、カグチは、息を飲んでいた。


困惑はあった。でも、混乱はしていない。

それよりも、彼は、興奮していた。

なぜなら、この状況は、彼が今ハマりにハマっている、ある創作物のジャンルに酷似していたからだ。


それは、『異世界モノ』

死亡した人間や、召喚された人間が、別の世界で生活するというモノだ。


今、自分たちに起きている出来事はそれだと、カグチはほとんど確信していた。


(……拉致から始まるデスゲームモノじゃない。拉致するにしても、全員座ったまま、放置する意味がないからな。それに、『異世界転移』でもない、な)


死んでいない人間が、別の世界にいく『異世界転移』というモノもあるが、それではないとカグチは断定する。


(……気絶する前に、目を開けられないほどの光があった。体を、何か電流みたいなモノが走っていく感覚があった。それに、何か、今の俺、薄い気がする)



確かめるように、カグチは自分の二の腕をさすり、手を広げる。


一見。何も変わらない。

でも、自分の手のはずなのに、まるで人形をみているような感覚に襲われるのだ。


定まっていない、肉体と魂。

自分は生きていない。

そのことを、はっきりと予見させる感覚だ。


おそらく、他の皆も本能的に感じているのだろう。

だからこそ混乱し、困惑していると思われる。


(……けど、余裕な奴らもいるな)


見渡しながら、カグチは自分と同じように、落ち着き、座ったままでいる者たちがいることに気がついた。


どちらかといえば、オタクっぽい者が多いだろう。

おそらく、カグチと同じ事を思っているに違いない。


自分たちは、『異世界モノ』の真っ最中であると。


(なら、今俺がすることはあわてることじゃない。落ち着くこと。そして把握すること。大切なのは、『アレ』が『ある』か『ない』か)


目の前の机を、カグチは調べる。


(……何も『ない』。じゃあ、どうなる? これから、どうするか……)


一部の生徒が、立ち上がり、なにやら騒いでいる。


出口を探そうとしているのだろう。

教師はその職務を真っ当出来ていない。

彼らを止めようとする者はいなかった。


彼らの判断は、おそらく正しい判断ではない。


なぜなら、カグチの予想が、これまで培ってきた『異世界モノ』の知識が正しければ、もうすぐ来るからだ。


そして、それは本当にすぐ現れた。


「おはようございます。神の子供達よ」


いつの間にか。円形状の部屋の中心に、女性がいた。


見た目は、カグチたちと同じくらいの、幼い感じの少女ではあるが、彼女はとにかく、美しかった。

この世の者とは思えぬほど。


でも、何よりも。

彼女の声に、カグチを含む、その部屋にいた全ての者が、それまでの喧噪をやめ、口を閉ざしていた。


彼女は、ヒトではない。


そう、部屋にいた者は瞬時に悟る。


「おそらく、困惑していることでしょう。理解が出来ぬ事態に、恐怖を覚えているでしょう。まずは落ち着いて、座ってください」


彼女の言葉に、今まで立ち上がり、部屋から出ようとしていた者も、大人しく自分が座っていた席に戻る。


それを見届けたあと、彼女は、口を開いた。


「ありがとう。では、まずは自己紹介を。といっても、私の名前を聞いても意味はないでしょう。なので、役割だけ。お伝えします。私は神の使い。アナタたちにわかりやすく伝えるなら、天使という役割を神から与えられている者です」


彼女……天使は、そう告げる。そのことに、カグチは驚きはしていなかった。むしろ、少し拍子抜けしている。


(……神様そのもの、じゃないのか。それか女神様か。だいたい、不手際で殺してしまって、神様土下座から、色々始まるんだけど……)


天使、ということは、もしかしたら、カグチが期待している『アレ』はないのかもしれない。

そうなると、拍子抜けというか、落胆ではある。


そんなカグチの心情を知ってはいないだろう。

天使は、話を続けていく。


「アナタたちは、今、魂の状態です。なぜそのような事になっているか。それをお話いたしましょう。これからアナタたちには、『地球』の代表として、今まであなた達が生活していた世界とは違う別の世界。『アスト』に行ってもらいたいからです」


天使が手をふると、小さなホログラムのような地球と、地球に似たもう一つ別の星が現れる。


あの星が、別の世界『アスト』なのだろう。


『アスト』のホログラムが、大きくなる。


「旧体制の技術が生き続け、ヒトよりも強靱な生き物が闊歩する世界。神秘が残る世界。全てがそのまま、停滞している世界。それが『アスト』です」


ホログラムが、光り始める。


「この世界は、見た目は似ていますが、根幹が貴方たちの世界とは大きく違います。神秘が残っていますから。なので、向こうの世界では、今の貴方たちの魂に合わせた肉体を用意しています。向こうではその肉体を使用して下さい。それが貴方たちを魂の状態にしている理由の一つです。」


そう、天使が言うと、ホログラムが消えた。


数秒、間をおいて、天使が続ける。


「……では、ここまでで、何か質問はありますか?」


動揺が、広がっている。

カグチも、自分の想定していた内容とのギャップに、少々戸惑っている。


(……神秘が残る世界……か。それよりも、気になるのは、強靱な生き物がいる世界って点と、肉体が用意されているって点。じゃあ、『アレ』はあるのか? 不手際とかじゃないにしても、協力を依頼されているわけだし)


そのことについて、質問しようか。カグチが手を挙げようとしたときだ。


カグチの遙か前方。天使の前の位置に座っていた男子生徒が手を挙げた。


真面目で、地味な外見の、メガネをかけた男子生徒だ。


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