sideA2)ほんとうのこと
「アナグマくん、そいつはヒドイやつだけど、それはあまりに可哀想だよ。」
コマドリが仲裁に入ります。
「ふん。可哀想なものか。……そうだコマドリ、おまえも付いて来い。」
アナグマはジタバタもがくリスの首根っこをつかむと、森を歩いてゆきます。
コマドリは「ヘビも困るが、ケンカも困る!」と、大騒動で2匹の前後ろを飛んで回ります。
「ああ! こまった、こまった!」
アナグマたちがやって来たのは、「根っこ広場」という不気味な場所です。
十畳敷とも呼ばれる大きな洞を開けた巨大な楠が立っていて、大蛇のような太い根っこが蛸の脚のように四方八方に伸びています。
「ひゃああ! 根っこ広場じゃないか! くわばら、くわばら……。」
おびえたコマドリが、少し離れた楓の木に止まって身を固くします。
なぜなら森の言い伝えでは、この広場でウソをつくと、楠の根っこに捕まって洞に引き摺り込まれてしまう、と言われているからです。
「どうしました?」
コマドリの悲鳴を耳にしたキツネが、おお急ぎで根っこ広場にやってきました。
キツネの後ろには、臆病者のクマも恐る恐る続いています。
「ふふん。キツネとクマも来たのか。」
アナグマが鼻で嗤います。「ちょうどいい。今からリスに、本当のことを話させてやる。そこで見ていろ。」
「アナグマさん、少し落ち着きなさいよ。」
キツネがアナグマを宥めます。「暴力や脅迫で得られた証言には、証拠能力が無いんだから。」
「ウソかホントかを判断するのは俺じゃないから、問題ない。そのために根っこ広場にまで来たんだから。」
アナグマは、大木を指差して宣言します。「裁判官は、あのお化け楠さ。」