04 どうしてこうなった
どうして、どうしてこうなった…!
ダークマターことカルメを前に、絶望の二文字しか頭に浮かばない。
「うぅ……」
思わず零れたうめき声と共に眉根を寄せる。
ワクワクとベッドから下りたものの、テーブルの前で立ちすくんでしまった私を、ミリアが心配そうに覗き込んでくる。
「お嬢様、やっぱりどこか打ち所が!? 大変、奥様に相談しなくては!」
バタバタと慌てて部屋を後にするミリアを止める余裕もない。
それほどまでに私の頭の中は、悲しみでいっぱいだった。
だって、だって。
ゲーム世界なのに、ゲーム通りじゃない。
前世で大好きだったお菓子が食べられない。
ライバル令嬢に転生したことよりも、こっちのほうが大ショックだ。
恋愛?
どうでもいいよ。
食文化のほうが大切でしょ。
一生付き合っていくんだよ!?
わかってる、本当はこのダークマターだって公爵家の令嬢だから食べられるんだって。
今までは喜んでお茶を楽しみにしていた。
でも前世を思い出してしまった今、私にはこの現状は耐えられないんや…!
視界がだんだんと滲んでくる。
前世ではアラサーでも、今は10歳。
子どもなのだ。
だからだろうか。
大人の私ならば「ちょっとはい落ち着こうか―」と思えた場面だろうが、今の私には死亡宣告のように思える。
わぁわぁと泣きじゃくってしまいそうだ。
そんな私の思考を途切れさせたのは、
「ソフィ―! あなた具合はどう!?」というお母さまの心配そうな叫び声だった。
いつもは淑女の見本のようなお母さまが、息を切らしながら部屋に入ってくる。
その後ろには顔色を悪くさせたミリアも一緒だ。
思わず二人を眺めると、目尻で留まっていた涙がぽろりと零れ落ちた。
一度零れてしまうと止まらない。
「エドから聞きましたよ。だけど今はそのお話は後、お医者様を呼びましょう」
「お嬢様、先ずはベッドでお休みください」
おろおろしながら、しゃくりあげる私を心配する二人を見て思わずコクンと頷いてしまう。
そして再び自分のベッドに戻ったのだった。