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02 ライバル令嬢なうえに設定が違うかも

目を瞑ったまま動かない私を心配した声が頭上から聞こえる。


「…フィー、ソフィィイー!」

必死になりながら、泣き出しそうな声で私を呼びかけるのは弟のエドマンドだ。


前世の記憶を思い出しついでに、私は気づいてしまったのだ。

ここが前世にプレイしたことのある乙女ゲーム世界だということに。


そして、私がヒロインのライバル令嬢であることに。


この弟も、王太子殿下もヒロインちゃん派になるのか……。

まじかー、つら。


っていい加減起きないと、エドマンドが可哀そうだな。

体がつらいが、骨をやってしまった気配はないし、婆や達がやってきたらお説教待ったなしだ。


ゆっくりと瞼を開けながら声をかける。

「エド、エドマンド。私は大丈夫だから」

「お姉さま! よかった! お姉さまが目を閉じたまま動かないからぼく…、ぼく」


私に泣きつくエドマンドを宥めながら立ち上がる。

うう、流石に身体が痛むな。


頭、身体よし。ひとまず流血していない。

ドレス、よし。どこも破れていない。


その場で屈伸してみる。

骨も折れていないみたいだ。

打撲だけかな。

その場でぴょんぴょんとんでみるが、捻挫もセーフみたいだ。


どうやらこのフワフワなドレスが、クッションの役割をしてくれたようだ。

さすが公爵家令嬢のドレスは高級なだけある。

庶民のペラいドレスだったら危なかったよね。


そんなことを考えつつ、

「エドマンド、お姉さまはお部屋に戻ります。階段から落ちたことは誰にも内緒よ!」

ビシッと指差し命じる私の勢いに呑まれたエドマンドを尻目に、一先ず自室を目指したのだった。



※※※



ボフッ!


自室のベッドにダイブした私は、改めて自分ことゲームのソフィーのことを考える。


ソフィ―・ボアルネは、乙女ゲーム「ロイヤル☆パティシエール」で、主人公のライバルキャラとして登場する。

メインヒーローである王太子の婚約者だ。


15歳になった年に、この国の子どもたちは上級王立学園に入学する。


学園には三つのクラスが存在する。

貴族科、騎士科、スイーツ科だ。


スイーツ科に入学した平民のゲームのヒロインは、そこでお菓子作りの腕を磨きながら、貴族のイケメンや細マッチョな騎士様たちと交流を深めていく。


平民といえども、この国のパティシエール職の地位は高い。

ノーマルエンドなら、誰ともくっつかずパティシエールとして成功した未来。

イケメンたちとの恋愛ルートでも、それぞれの奥様におさまりつつも、伝説のパティシエールとして名を残すのだ。


案外、手に職系なヒロインだ。


私ことソフィーももちろん学園に入学するものの、貴族科に所属。

同じく貴族科に所属する王太子殿下に釣り合う淑女になるため、頑張っていた。


けれど、ヒロインちゃんの登場から王太子ルートの場合は婚約破棄。

ソフィーはヒロインのパティシエールとしての腕前を認めていたため、身をひくのだった。


ライバル令嬢といっても、所詮はモブ。

ヒロイン以外の未来はゲームで描かれていなかったから、その後は詳しくは分からない。


だけど、婚約破棄された令嬢として世間で話題になったことだろうな……。


って、ソフィーいい子すぎるやろ!


とはいえ婚約者がいるにも拘わらず、他の女を選ぶ王太子殿下もどうかと思うが。


今、私は10歳。

学園入学まであと5年ーー。


とりあえず本当にゲーム通りになってしまうのか。

どこまでゲーム通りに進み始めているのか。


ゲームの完璧な淑女といった彼女と、おてんばな私とじゃ残念ながら似ても似つかないし。


前世の記憶と現在の『ソフィー』の記憶が混じりあって少し混乱していた私は、そんなことを考えながらそのまま意識を失ってしまったのだった。

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