8/48
戦技の授業(1)
【3】
その視線に映る自分がいる。
合わさる視線の中に立つ私はどのように映されているのか。
愛か。友情か。驕りか。哀れみか。それともただ無関心なのか。
それはわからない。
その瞳は何も語らない。
それでも孤高に立つ強き者が見る景色の中に私がいるのは不快ではなかった。
.
どこか見透かすような瞳の輝きは、禍近くある時こそ強く輝く。
災厄に身を置くことへの歓喜ではない。
今迫る危機から護るため、どのように手を差し伸べるかを考えている。
畏れている。
それこそが彼女への好意の本質。
手探るような不器用さ。その安心感を私は信じることができるからだ。
.
当たり前のように近くにいることで、私はゆっくりとそれを忘れていく。
そして私は。
別れの時に、改めてそのことに気付くのだった。
2020/11/08【修正】誤字修正。原稿用紙設定変更。
2017/06/20【投稿】当時は投稿ログを残していなかったのでログ追加。