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The/O  作者: 数美
0.月と太陽のプロローグ
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交差と乖離(2)


   ◆


   

 選ばれた。選ばれてしまった。選ばれたくはなかった。無関係でいたかった。

 手に入れたものは全てを犠牲と名付け、それを足場としてより高きへと昇ることの出来る権利。

 だが望んで手にしたのではなく、選ばれてしまったというのならば。

 不意の運命によって祀り上げられたその先に何があるというのか。何を望めというのか。

 最上となる頂は求めるものなく、ただ琥珀の過去へなり行くのみ。

 渇望する欲求は満たされてはならぬのだ。

 それでは何も意味がない。

 故にその選別は呪いに等しかった。

.

 

   ◆

.

 

 ただの魔物がそこにはいた。

 その魔物は目の前で現れた。確かに元は人だった。

 目の前に立っていたのは彼女の肉親だった。


「あ、ああ、あああ、あああああああ――!!」


 複雑な問題だ。だが時間はない。結果取るべき解は単純な二択となった。

 鍵はいつものようにこの手にある。それが再び彼女に権利を与える。

 殺すのか。殺されるのか。

 その二つを選ぶことのできるという権利。

 いつものように歪な答えしか与えないそれを、だが今回ばかりは許容できなかった。

 選ばなければならない。

 罪を課するか罰を受け入れるか。その選択肢はどちらにせよ何かを失ってしまう。


 選ばなければならない。


 けれども。両方を、全てを手に入れたくて。それを探す為の時間がなくて。


 選ばなければならない。


 魔術は奇跡ではない。起こせることと起こらないことは明確なのだ。いかに尊大な名で呼ばれようともその絶対は変わらない。


 そうして。

 届かない声を響かせる。もはや言語ですらない糸を遥かなる場所へと繋ぐように。

 自分以外という、決して知ることの適わぬものへ手を伸ばす。

 呼べ。叫べ。願え。思え。偲べ。謡え。祈れ。呪え。

 何を捧げれば奇跡は起こる。何でもいい。奇跡を起こせ。起こせる奇跡を創りだせ。

 その為に失おう。

 何を失ってもいい。どれだけ欠けてもいい。代償ならばすべてを差し出せ。

 だがそれなら。


「――救え!」


 その言葉の想いこそ魔法ではなかったか。

2020/08/13【修正】誤字修正。原稿用紙設定変更。ノートの矢印↓キーが壊れたので別キーボード使ってます。そしてマウスも壊れた。

2017/06/15【投稿】当時は投稿ログを残していなかったのでログ追加。

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