その街の風と土
【2】
昔々から始まる、とある時代。
良き王が統べる、笑顔ある善き地のお伽話――
突如として封印されていた古の魔王が復活しました。
魔王は絶望の軍勢を率いて、人間の国に進攻を開始。
これにより長く続いた平穏は破られました。
襲い来る魔の僕に対し、人間たちの王はそれを迎え撃ちます。
長く苦しい戦いでした。
かつての豊かな日々は見る影もなく、終わりの見えない戦いに誰もが疲れ果てていました。
そんな世界を巻き込む騒乱の中を、何時からか小さな噂が流れるようになりました。
――救世主が現れた、と。
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それは小さな希望でした。
けれど人々は待ちました。いつしか強大なる魔王を倒す英雄が現れることを。
暫時。そして戦の神から与えられたという剣を携え、勇者は現れたのです。
やがて。精霊たちの加護と誓いを同じくした仲間たちと共に、ついには魔王討伐は果たされました。
勝利を手にした戦士たちは傷ついたその身を癒すため、何処かへと旅立ちました。
魔王討伐の報せを受けた王は、遠き彼方へ去った英雄を〈聖剣の勇者〉として称えました。
こうして最初の聖剣の担い手によって世界は平和を取り戻したのです。
めでたしめでたし。
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史実。
改星歴一七年。魔王事変。大国エィンナレアより。
それが最初の勇者が降り立った誉れ高い街ブルツ・アリスに伝わる聖剣伝説。
世界に危機迫る時。剣は人類史の守護者を供に選ぶこととなる。
それは夢想が紡ぐお伽噺ではない。
聖剣という武具が作り出す歴史に繋がる真実だった。
例えば。
いつか、どこかで。
突如降りかかった危機に。悪鬼を討ち払うことができる力をその手にしたのなら――
2020/08/08【修正】全体的な構成調整の為、タイトル変更。『その街の風と土(1)』が『その街の風と土』になります。(2)の内容は別の個所へ挿入予定です。
2020/07/17【修正】誤字修正。
2018/04/07【修正】原稿用紙の仕様変更。あとあんまり重要ではない部分をバッサリ切りました。
2017/06/05【投稿】当時は投稿ログを残していなかったので追加。