08 スキだらけのおしおき
私は、指先から飛び出した透明な糸を消失させると同時に、それに囚われていた妖精サマを捕まえた。
「た、た、助けて~!!」
「……ちょっとお話を聞きましょうか、妖精サマ(にっこり)」
妖精サマを見つめながら微笑んだら、ものすごい怯えられた。狙ってやっているのだけれど、少し傷つくなぁ。
私はカバンの中に常備していた、小さなポーチの中に妖精サマをポイッ。そのまま残りの授業を受け、放課後に帰宅した。
家に着いて、昔飼っていたインコを入れていた鳥籠を、物置から引っ張りだし、軽く水洗いして布で拭き取ったあと、ポーチから妖精サマを出して、鳥籠の中にリバースした。
「ちょっ、カナ! 妖精虐待ですわ!! なんてことをするんですの!? このわたくしに――ひっ……!」
私は鳥籠の檻の金属を掴んでガタガタ揺らす妖精サマを静かな笑みを浮かべながら睨み付ける。
「まーいつかは我慢出来なくなって約束を破られるとは思っていましたけれどね。……まさか数時間で破られるとは思ってもいませんでしたよ」
「うっ、あのっ、そのっ……ごめんさないぃ!!」
「黙りなさい!」
「ひうっ!?」
「反省するまでおしおきです。しばらくその鳥籠の中で過ごしなさい」
「な、なんで私がっ……!!」
「……約束を守ることも知らない、世間知らずのお姫様に教育です」
完全に恐怖と反省で震えている妖精サマを睨むふりを続けながら、辛辣な言葉を投げつける。
(これくらいしないと、また次に何かあるだろうし)
目の端に大粒の涙を浮かべ、必死に許しを乞う妖精サマ。……正直、ものすごく可愛くて、今すぐ取り出してほっぺすりすりをかましたいところだけれど、グッと堪えて我慢する。
そのまま頑張って机に向かい、妖精サマのせいで上の空だった授業の復習をする。
……ガタガタガタガタ。許してぇ。ガタガタガタガタ。お願いします、私が悪かったの! ガタガタガタガタ。ガタガタガタガタ。ガタガタガタガ――――
「あ”ーもう五月蝿い!! 捨てるぞ!!」
――――シンッ。……………………ぐすっ、ひっく、ぐすっ。ふえぇぇ……。
あっ、ヤバい。やり過ぎたかも?