06 スキだらけの授業
「叶奈、おはよう」
「おはよう、みこっち」
「よっ、叶奈っち」
「よっ、ちーちゃん」
私はクラスメイトと挨拶をしながら教室へ向かう。
私のクラスは2年5組。一学年に6クラスあるうちの高校の4階の、角から2番目の教室だ。
5階が3年、3階が1年、2階と1階に他の教室が集まった作りになっている。
教室の中の私の席は、廊下側の一番後ろ。
結構気に入っている席だ。
教室に座って、ショートホームルームの先生の話が始まる頃には、妖精サマの事はすっかり頭の隅においやって、学校のことを第一に考えるようにしていた。
さすがに1日目にして取り決めを破るなんて事はない。
――――そう思っていた時期が私にもありました。
時間は2時限目。面倒な古文の時間。ボーッと授業を聞きながらチラッと廊下を見た時。それは私に向かって手を振っていた。
ガタッ!?
私は驚いて思いっきり立ち上がってしまった。
全員の視線を一同に浴びる。
「どしたー?」
「すみません、消しゴムを落としました」
「拾ったら座れよ?」
「は~い」
先生の質問に誤魔化しを入れる。まぁ、驚いた拍子に消しゴムが落ちたから嘘ではないんだけれども。
消しゴムを拾ってくれた隣の席の子にお礼を言いながら座り直す。
(後でじっくり話を聞かせて貰うからね)
と目で睨み付けると、怯えたように慌てて飛び去って行った。
もうっ、探すの面倒なのに。