10 スキだらけの寝顔
すすり泣きを聞きながらの勉強は、全く手に着かなかった。
言い過ぎたかなぁ。……こんな異郷の地にたった一人で来て。普通の人間には妖精が見えないから、助けを求めようにも誰にも気づいてもらえず。
痛いほど気持ちは分かる。
言い過ぎたなぁ……。
感情に流されすぎた。
はぁ。仕方ない。
私は席を立って、泣きつかれて寝てしまったのか、静かになった鳥籠の方へ歩く。
中を見ると、案の定、涙も乾かぬうちに寝てしまっていた。
それに、耳をすませると、小さく寝言で、
「ごめんさない、カナ、ごめんさない……」
と言っているようにも聞こえた。
「まったく、どこから私の名前を聞き付けたのだか……」
私は、起こさないように静かに鳥籠の扉を開け、そっと妖精サマをつまんで手のひらに乗せた。
そして、ベッドの枕元に毛布で小さな盛り上りと、ぬいぐるみ用の小さな枕を置いて、即席の妖精サマようのベッドを作ってそこに寝かせた。
そして私もベッドに、うつ伏せになって妖精サマを正面に見るように寝転がった。
妖精サマをよく見ると、長くて綺麗な睫毛、サラサラなライトグリーンの髪の毛、特徴的な、先の尖った耳。可愛くて、なんだかいとおしかった。
そっと指で妖精サマの髪をそっと撫でる。
……思った通り、サラサラできもちいい髪。
しばらく撫でていると、強ばっていた表情が、だんだんやわらかいそれになっていって、辛そうだった寝息も、穏やかになっていった。
「……おやすみ♪」
わたしはそっと妖精サマの小さな手を取ると、その甲にそっと口づけをした。
かわいい、いとしい、お姫様。やすらかにお眠り♪