01 スキだらけの妖精サマ
私は毎朝、ジョギングで家の裏にある山――――というより、小高い丘のハイキングコースを走る事が日課だった。
この日は夜に雨が降ったためか、朝露が太陽の光を反射して、キラキラと光る綺麗な朝だった。
いつも通りハイキングコースの入口の看板を横目に駆け出し、いつも通り広場にある遊具を背にして走る。いつも通りこのハイキングコースの名物である吊り橋を抜け、いつも通り山頂直前の急な坂に差し掛かる手前にある泉を横目に、山頂へラストスパートをかける――――はずが、目の端に映った今までに無かったものを見つけ、驚いて足がもつれて転びそうになった。
だって、ありえないほど大きな、昨日まで絶対に無かったものがあるんだもの。驚くに決まってる。
「なに、あの花」
そう。1枚の長さが30cmはあろうかと思わせる巨大な花びらをもつ花が泉の畔に咲いていたのだ。決してアニメの題名ではない。
気になったら正解が分かるまで気が済まない私は、ハイキングコースを逸れ、泉の畔に咲くおかしな花へと近づいた。
「……なにこれ」
近くで見ても、大きいだけの普通の花に見えた。ただ、こんな種類の花、見たこともないし聞いたこともない。
「絶対昨日まで無かったよね……?」
軽く花びらに触れてみる。
「うん。普通の花だ」
どこにも変な所は無――――ん?
「……~♪」
なんか歌声が聞こえてきたような気がした。……この花の中から。
ちょっと気になったのでぴらっと1枚、花びらを捲ってみた。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………えっ?」
私は、中にいた、朝露で体を清めている最中の全裸の小さな妖精と目があい、文字通り固まった。
丁度背中側を開いたようで、妖精も始めは気付かずに体を清めていたが、差し込む太陽の光に後ろを振り向いたとき、バッチリ目があった。
「きゃあぁぁぁぁっ!? 無礼者~!!」
「えっ、えっ……?」
「さっさと、閉めなさいっ、変質者!!」
「あっ、ハイ…………」
えっ、何事?
なんでこんなところに妖精がいるの?
毎週月曜日の20時に投稿します。