集合離散、大河の如し、敵味方の思惑。
城塞都市の壁の上で黄金騎士の一行を見下ろす黒魔術師と彼女の操り人形である巨人オーグの群れ。
手に手に大岩を持ち門前に迫る騎士団の軍を待ち構え大きな怒号で威嚇し叫ぶ。
((((((グオォォォオオ)))))))
辺りに響き渡る巨人オーグの咆哮に身をすくめ後退りする長老が率いる騎士団。
それとは対称的に大男は微塵も恐れることなく城門へと近付く。
大男は大きな棍棒で門を叩き割ろうとするがい如何せん鉄城門の前には無力だった。
巨人オーグは大男目掛けて大岩を何度となく投げ付けた。
ドドーーーーーン)))))
ドドーーーーーン)))))
ドドーーーーーン)))))
彼は右に左にと身を交わしながら、大岩が届かない近衛騎士団の背後へと撤退した。
黒魔術師が城壁の上に現れ、大男の逃げる様に高笑いを浴びせかけた。
『ホホホホホ………………』
『力ばかりの能無しどもよ!
『尻尾を巻いて逃げるがよい!』
大男は吟遊詩人の横に近付き語りかけた。
『歌姫ちゃんよ!、言われた通りにやってきたせ!』
吟遊詩人は城壁の上で柏ノ木の杖を持つ黒魔術師を視界に捉えて頷いた。
『やはり、兄上様の言われた通り黒魔術師が野蛮王に付いているようですね。』
黄金騎士の親衛隊長となった兄からの情報に確信を得た彼女は馬に乗り竪琴を持ち城門へとと向かった。
その様子を見て黄金騎士の乗る白馬が彼女に寄り添った。
黄金騎士と吟遊詩人を取り囲み護衛するように円陣を組む近衛騎士団。
(((((グオォォォオオ))))))
城門に近付く黄金騎士と吟遊詩人の一行に威嚇の声を上げる巨人オーグの群れ。
ボロロローーーーン)))))
吟遊詩人の竪琴の音が城門の周辺に、こだまし鳴り響く。
美しい旋律に巨人オーグの動きは止まり、その場に座り込む。
黒魔術師は柏ノ木の杖を頻りに振りかざすが巨人オーグは眠り込んでしまった。
黒魔術師は城壁の下で竪琴を響かせる吟遊詩人に視線を移した。
『白魔術師がいたとは、わたくしとしたことが不覚!!』
黒魔術師を威嚇するように近衛騎士団の矢の嵐が城壁の上に注がれた。
ビューーーーーッ》》》》》
ビューーーーーッ》》》》》
ビューーーーーッ》》》》》
『黒魔術師を狙ってならない。』
『彼女が姿を消してくれればそれでよいのです。』
『彼女もまた、悪に心を苛まれた私の家族なのです。』
黄金騎士の言葉に、矢の的を外す近衛騎士団たち。
黒魔術師は黄金騎士と白魔術師の出現に、とても敵わぬと思い野蛮王の元へと撤退した。
巨人オーグは魔法陣に吸い込まれるようにして城壁の上から姿を消していった。
巨人オーグが消えた城壁に梯子を掛ける近衛騎士団。
次々と城壁の上へとたどり着き、中庭へと降り立ち内側から城門を開け放ち黄金騎士の一行を入城させた。
大男が後ろを振り向いて、跳ね橋を上げる長老団の率いる騎士団に目を止めた。
『どういうことだ?』
大男は跳ね橋の向こうで離反し遠ざかる長老騎士団に叫んだ。
『おまえらーーー!!』
『黄金騎士様と別れて何処へ行く気だーーー!!』
離反した騎士団の長老がこれに答えた。
『もう、わしらは、これ以上、お主らと行動と共にはできん!!』
『誇り高き騎士団は、賊や暗殺団、放浪の詩人などとは袂を一つにはできぬのだ!!』
大きな声でやり取りをする騎士団の長老と大男の問答に足を止める黄金騎士の一行。
『自ら去るものを引き留めてはなりません。』
『彼らにとって学びの時が訪れたのです。』
『やがて自らの行いにより招くものが彼らを正しい道へと導くでしょう。』
『大河は別れ、後に一つとなり、さらに大きな流れを創るのです。』
その様子を建物の影から覗き見る黒魔術師が薄笑いを浮かべた。
『離反の策が上手く行ったようだ。』
『やはり、金を積めば、こちらへ靡くと言われた野蛮王の言葉は真実だったようだわ。』