約束の預言者により希望の路は開かれる。
ガラガラガラ………………
ドドドドド……………………
チャリオット(2頭の馬が牽引する二輪の小型戦車)が断崖絶壁の細い道を猛スピードで進む。
後ろから黒馬で着いて行く大男が吟遊詩人の乙女に声を掛けた。
『歌姫!』
『ちょつと、飛ばし過ぎじゃねーか?!』
吟遊詩人が思うように操馬できず難儀している姿を見て開眼老人が手綱を彼女から受け取った。
緩やかなカーブで遠心力の影響によりチャリオットは海側へと大きく振られた。
ガガガガガガ……………
『それーーー!!』
あわや高い崖の上から脱輪して転落しそうになるチャリオットを見事な手捌きで本道へ戻す開眼老人。
振り落とされないように吟遊詩人の乙女は農村少女を懐にしっかりと包んだ。
『ドウドウドウ!!』
チャリオットを牽引する二頭のみ馬は落ち着きを取り戻し山道を駆け上がって行く。
黒馬で並んで伴走する狩人の青年に大男が訪ねた。
『お前の親父さんは何者だ?』
『あの手捌き只者じゃねぇ!』
大男の方をチラリと見て狩人の青年が答えた。
『親父の話に寄ると若い頃とある国の騎馬隊を指揮していた将軍だったらしい。』
『俺が、物心ついた頃には既に眼の見えない、ただの語り部、説教師だったがなぜか人望はあったんだ』
大男は頷いてチャリオットを操る開眼老人の方を見た。
『なるほど、そういうことか……道理で馬の扱いが手馴れているのも、ふに落ちたぜ!』
チャリオットを操る開眼老人が自分に渇を入れるように語った。
『悪に手を染めた長老騎士団が街道を通り鍛冶村へ到着する前に何としても先回りをして彼らの危機を救わねばならん!』
『しかし、迂回路は、あの山を越えねばならぬのう……』
吟遊詩人の懐の中で落ち着きを取り戻した農村少女がポッリと彼女に呟いた。
『左の道を行き滝を目指して……希望の路』
吟遊詩人は農村少女の瞳が片方が紺碧の空のようで、もう片方は燃える太陽のようであることに気付いた。
『あなたは、もしかしたら約束の預言者……』
吟遊詩人と農村少女の会話のやり取りを耳にした開眼老人。
『ワシらに約束の預言者が与えられるとは、何と幸いかな!』
開眼老人は約束の預言者の少女の言葉に従い左の道を行き希望の路があるという滝を目指した。
急に方向転換したチャリオットに驚いた大男が叫んだ。
『じいさーーーん!!』
『道が違うぞ!
『どこへ、行く気だ!』
吟遊詩人が、大男の、その声に答えて言った。
『約束の預言者の言葉に従い希望の路がある滝を目指します!!』
五人は暫く山裾を走りに抜け滝の前まで来た。
ゴウゴウと流れ落ちる滝を目の前にして約束の預言者である少女がチャリオットを降りて石を拾い滝に向けて投げた。
滝は石が、あたった、ところから二つに割けた。
鍛冶村へと続く長い遂道が、そこにはあった。
約束の預言者である少女が指を差した。
吟遊詩人の乙女は預言者の少女をチャリオットに乗せ竪琴を奏でた。
ポロロロン~♪
たちまち遂道の行き先を一筋の光が照らした。
『我らを導く希望の路へ』