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名も無き将軍の物語り  作者: 縞栗鼠
14/22

黄金騎士の前に逃げ去る長老騎士団。

『神の、ご意思だぁーーー!!』


『神の、ご意思だぁーーー!!』


黄金騎士の一行から(たもと)を分かった長老騎士団が街道を進み声高に叫ぶ。


大河の河沿いにある商業の中心地として名高いコミニュティーは騒然としていた。


長旅で腹を空かせた長老騎士団はコミニュティーの広場に馬を止めて市場で食料を物色し始めた。


果物屋の店先で、騎士団の長老の一人が真っ赤なリンゴを、両手に持ちムシャムシャと、ほほ張り仲間の騎士団にも投げ与えていた。


『それ、受けとれ!』


『ここには、食物が山とある!』


あらかたリンゴを食べ終えた長老騎士に

果物屋の親父は笑顔で手を差し伸べた。


『神にお仕えしておられる長老騎士様。』


『お代を……』


長老騎士は果物屋の親父の前で剣を抜いて凄んだ


『神への貢ぎ物とせよーー!!』


果物屋の親父は腰を抜かせて、その場にヘナヘナと座り込んだ。


その時、コミニュティーでも評判の美しい果物屋の親父の娘が水汲みから戻った。


彼女は、とても気が強く剣を抜き凄む長老騎士にも臆することなく言った。


『あなた方は、神と教皇様にお仕えしている騎士団なのに、どうして、こんなことをするの!!』


『困っている人々を助け守るの事が騎士団の使命なのに、これでは悪党の集団と何も変わらないわ!!』


長老騎士は果物屋の美しい娘を見て剣を収めポケットから金貨を3枚、果物屋の親父の手に渡した。


『親父!』


『この娘は、ワシが都へ連れて行き十分、可愛いがつてやるから心配はいらん!』


長老騎士は仲間の騎士に馬を用意させて果物屋の美しい娘の手を引いた。


果物屋の親父は、慌てて金貨を返そうとして長老騎士のマントの裾を掴んだ。


長旅で擦り切れていたせいもありビリビリとマントが割けた。


尻餅をついた反動で果物屋の親父は手に持った金貨を落としてしまい金貨はコロコロと転がって行った。


それを見ていた貧しい少年たちが金貨を拾い人混みに姿を消した。


長老騎士は、不気味に薄笑いを浮かべて剣を抜いた。


『このマントは、誇り高き長老騎士団の証し!』


『汝の血を持って(あがな)うがよい!』


長老騎士は剣を振り上げて、震える果物屋の親父に凄んだ。


果物屋の美しい娘は剣を振り上げる長老騎士と彼女の父親の間に入り懇願した。


『貴方と、ともに都へ連れて行ってくださいませ!』


長老騎士は剣を再び収めてニコリと笑顔を浮かべ美しい娘を自分の栗毛の馬に乗せた。


コミニュティーは長老騎士団により、ことごとく荒らされた。


少年や少女が、くわえているパンさえも奪われ娘たちや幼子に乳を与えている婦人さえも連れ去られた。


男たちは抵抗しょうものなら、即座に剣により粛清された。


父や兄弟を殺され、母や姉妹を連れ去られた少年少女、そして幼子の泣き声がコミニュティーに響く。


『神のご意思だぁーーー!!』


『神のご意思だぁーーー!!』


長老騎士団は何事もなかったかのように都へと進んで行く。


果物屋の美しい娘と婚約していた狩人の青年がコミニュティーに戻った。


腰を抜かせて店先で大声で泣く親父に、今まで経緯(いきさつ)を聞いた彼。


狩人の青年の弓の腕は周辺の街々にも知らない人がいないほど有名だった。


遠ざかる長老騎士団を視界に捉えた彼は黒馬に股がり婚約者を救うため走りだした。


パカッパカッパカッ………………


最後尾の騎士たちが、馬で駆け寄り弓矢を構える狩人の青年に気付き盾を掲げた。


ビュー~~~~っ》》》》》》》》


放たれた矢は騎士が構える二枚の盾の間をすり抜け長老騎士の背中に刺さった。


グワキーーーーーン))))))


厚い銀の鎧に阻まれて矢は弾かれた。


長老騎士は矢を放った狩人の青年を捕らえるよう騎士団に命じた。


『神の僕に矢を射る暴漢を捕らえよ!!』


『見せしめとして、磔にしてくれん!!』


狩人の青年を捕らえようと(きびす)を返して走り出す五頭の騎士団。


流石(さすが)の狩人の名手である彼も多勢に無勢であり、しかも銀鎧に矢は弾かれてしまった。


『くっ!!』


『これまでか!!』


矢が尽きた狩人の青年は死を覚悟で腰の短剣(タガー)を抜いて騎士団と対峙した。


狩人の青年は周りを騎士団に取り囲まれ絶対絶命のピンチに陥った。


天を仰ぎ狩人の青年は叫んだ。


『我、命、尽きようとも正義は死せず!!』


騎士団は何かにビクッとしたように、慌てた様子で馬に(ムチ)を入れ 狩人の青年を残し蜘蛛の子を散らすように本隊へ走り去った。


狩人の青年は何が起きたのか理解できずに茫然としていた。


命が長らえた奇跡を今だ彼自身も信じることができずにいた………………




その時、遠くから竪琴の音が微かに聴こえて来た。



風に運ばれて吟遊詩人の歌声が響く。




『黄金騎士の行くところ戦いは止み悪は去り花が咲く~♪』







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